[警察小説メモ] 警備部

いわゆる公安警察として公安事件の捜査・情報収集を行うとともに、治安維持として雑踏警備・災害対策、警衛・警護を担当しているセクションです。

  • 主な業務
    • 公安事件の捜査・情報収集
      • 極左暴力団や右翼団体、カルト集団(旧オウム真理教等)による、無差別テロ・ゲリラ事件の発生防止や捜査
    • 雑踏警備
      • 大規模なイベントやデモの警備
    • 災害対策
      • 地震や台風発生時における行方不明者の捜索、救助活動、避難誘導、交通規制や被災地の警戒・犯罪予防活動等1

機動隊やSAT(特殊急襲部隊)やSP(要人警護)が所属しています。

警視庁の警備部における組織構成は以下の通りです。

  • 警備第一課
  • 警備第二課
  • 災害対策課
  • 警護課
  • 警衛課
  • 機動隊
  • 特科車両隊

警備第一課

特殊急襲部隊(SAT)

SATはSpecial Assault Teamの略で、ハイジャックや立てこもり等のテロ行為が発生した場合に事件解決の最後の砦として存在している組織となります。

SATは実行部隊であるため捜査等は行わなず、状況によっては犯人を狙撃しての射殺も厭いません。そのため狙撃用ライフルや短機関銃を手に防弾ヘルメットや防弾ベストを装備して事件に臨みます。

全国の各警察にSATがいるわけではなく、警視庁には3隊、大阪府警察に2隊、北海道・千葉・神奈川・愛知・福岡・沖縄警察にそれぞれ1隊ずつ配備されています。

  • 主な構成
    • 指揮班
      • 部隊の統括、本部との連絡調整
      • 突入作戦の立案
    • 技術支援班
      • 無線・偵察研究
      • 近距離狙撃支援や爆発物の取り扱い
    • スナイパー班
      • 突入部隊を後方から支援
      • 遠距離からの狙撃と偵察
    • 制圧班
      • 指揮班が立てた作戦を元に突入
      • スナイパー班等の後方支援を受けながら確実に制圧します

SATに配属されるのは機動隊員の中から選抜された精鋭となり、人並み以上の運動能力・知力を備えた警察官が上司の推薦を得た上でSATへの試験入隊訓練をクリアした人のみが配属されます。

  • 試験入隊訓練は6ヶ月に及びます
    • 懸垂・腹筋・腕立て伏せをX回やるのではなく「極限までやれ」という体力テストがあったらしいです
    • 他にも土嚢運搬、100m走、1500m走等
    • 名物は都内の山中で行われる2泊3日の合宿訓練で、早朝から深夜まで寝ないまま多摩川沿いを100km下るものがあったそうです
    • 試験入隊訓練をクリアできるのは入隊志望者の8割程度だそうです
  • 入隊してからは訓練の日々
    • 戦闘降下訓練
      • 機動隊の敷地内にある訓練施設や自衛隊基地で8階建てのビルの屋上から降りる訓練
    • スキューバ訓練
      • 着岸した船で事件が発生している場合は海上保安庁ではなく警視庁/道府県警察が対応することになります
      • 船の下から潜り込んで犯人を制圧することを想定し、スナイパー班がライフルを持ったまま潜水したりシュノーケルを着けて潜水したりするそうです
    • レンジャー訓練
      • ライフル銃や土嚢を担いだまま10kmを走ったり、腕立て伏せやスクワットを組み入れたサーキット訓練を10周繰り返したり
    • ハイジャック訓練
      • 航空会社スタッフに指導を受けながら深夜の羽田空港を使い、本物の飛行機やモックアップ(模型)を使用して訓練しています
      • SAT設立のきっかけがダッカ日航機ハイジャック事件であったため、特に力を入れているそうです

ダッカ日航機ハイジャック事件がSAT設立のきっかけであったため、ハイジャック訓練については特に力を入れているそうです。

  • ダッカ日航機ハイジャック事件
    • 1977年9月28日、フランス/シャルル・ド・ゴール空港発~日本/東京国際空港(羽田空港)行きの日本航空472便が、日本赤軍グループ5名によりハイジャックされた事件
      • 日本赤軍とは1970年代の安保闘争から生まれた日本の革命を目的とする政治グループで、数々の事件(銃乱射による民間人100人以上の殺傷、ハイジャックしての身代金要求、日本大使館占拠)を起こしてきた国際テロ組織です
    • ハイジャックにより同機は進路変更してバングラデシュ/ダッカにあるジア国際空港に着陸しました
    • 日本赤軍は乗客の命と引換えに、当時日本で服役/拘留されていた日本赤軍メンバーの解放+身代金600万ドルを要求
      • 乗客には当時のアメリカ大統領の友人も乗っていることを知った上で、日本赤軍は「アメリカ人から先に殺す」と揺さぶりをかけていました
    • 日本政府は「一人の命は地球より重い」と超法規的措置として日本赤軍の要求を呑みました

警備第二課

組織構成は以下の通りです。

  • 警備調査第一~二係
  • 警備訓練第一~三係
  • 警備装備第一~三係
  • 爆発物対策係

警護課

SP

SP(Security Policeの略)は警視庁警備部警備課に所属する警察官を指していて、他の道府県警察では「警備隊員」「身辺警戒員(PO)」等と呼ばれています。(女性は全体の5%程)

設立のきっかけとなったのは1975年に発生した三木武夫首相襲撃事件で、それまでは目立たないように要人を警護していたのをその存在を明らかにして襲撃の抑止を図るものになりました。

  • 三木武夫首相襲撃事件
    • 1975年6月16日、日本武道館で行われていた佐藤栄作元首相の国民葬において、大日本愛国党のメンバーが総理大臣・三木武夫を襲撃した事件
      • 大日本愛国党は日本国内の極右団体
    • 当時も警視庁の警察官が護衛として配置されていたものの、少し離れた場所にいたため犯行への対応が遅れてしまったそうです

警護対象は総理大臣・衆議院/参議院の議長・国務大臣・都道府県知事・各政党の代表(共産党は警視庁の警護要請打診を固辞しています)・国賓となります

警護活動には、身辺警護・車列警護・行き先地警護・沿道警護等がある。身辺警護の1つである同行警護では警護対象者が自宅を出てから戻るまでつきっきりで警護するため、場合によっては24時間体勢になります。

  • 警護管理係
    • 警護第一~四係の統括
  • 警護第一係
    • 総理大臣を警護
  • 警護第二係
    • 衆議院・参議院の両議長、最高裁判所長、国務大臣の警護
  • 警護第三係
    • 来日した国賓の警護
  • 警護第四係
    • 上記以外の要人
  • 総理大臣官邸警備隊
    • その名の通り首相官邸を警備しています
    • そのため SP とは呼ばれないようです

どんな状況で襲撃されるか分からないため、トップレベルのスキルが求められます。柔道・県道・合気道が3段以上、拳銃射撃は上級、英会話も必須。候補者となった場合は3ヶ月間の特殊訓練で逮捕術・格闘術を学びます。

  • 鍛えられた肉体、格闘技に長けていて射撃の腕はオリンピック級、冷静沈着に状況判断ができる警察官

防弾チョッキ・防刃ベストは動きやすさ重視のため普段は装着せず、拳銃や警棒を素早く抜くために基本的に上着のボタンを留めていません。

要人襲撃が発生した場合は応戦よりも警護を最優先させ、要人に防弾コートをかけて姿を隠させ自らが盾となって守りながら要人を逃がします。

  • SPが応戦していたら要人を守れないためです
    • 応戦は周辺を警備している機動隊やSATに任せることになります

機動隊

「隊」とあるものの課の位置づけであるため、機動隊長は捜査一課長と同じ所属長となります。主な業務は捜査ではなく治安警備の実施であり、騒乱の鎮圧や雑踏警備、重要施設の警戒警備、災害警備等の業務もあります。警察が担う「治安」という業務においては最後の砦となっていて、機動隊でも手に負えない事案になると自衛隊の出番になります。

  • 特色
    • 捜査一課等と違って拠点が警視庁になく、部隊運用・訓練・車両保管等の観点から近郊に独自の施設(道府県警察によっては警察学校に併設されているケースもある)を持っています
    • そういう環境が他の課と異なるため治外法権的な雰囲気があり、超体育会系だそうです
    • 何もなければ基本的には訓練だけであり様々な手当が付いて給料がいいため、昇任試験の勉強をするには抜群の環境と言われています
  • 活動例
    • 1950年代の学生運動の鎮圧
    • オウム真理教の教団施設立ち入り
  • 全国で約8,000人の機動隊員がいます
    • 有事や大規模警備時に前もって任命されている機動隊員がいます(自衛隊における予備役のような立場)
      • 第二機動隊と呼ばれています
      • ナンバリングされた第二機動隊とは別です
    • 上記第二機動隊とは別に広域の部隊である管区機動隊も存在します
      • こちらは全国で4,000人
  • エピソード
    • リーゼント刑事は機動隊時代に以下のような体験をしたそうです
      • デモ隊等との対峙時は怒号が飛び交い指揮者からの声が届かないため、後ろの隊員が前の隊員のヘルメットを2回叩いて「退避」の合図を送るルールがありました
      • そうして実際にデモ隊の鎮圧へ向かったさい、後ろの隊員がリーゼント刑事のヘルメットをたたき忘れてしまい、彼は殺気立ったデモ隊100人に囲まれて取り残されました
      • 命の危険を感じた彼は「殺さないでくれ!」と土下座をし、それに驚いたデモ隊の動きが一瞬止まったタイミングを見計らって逃げたそうです

外見

新型のヘルメット、盾


Wikipedia「機動隊」より引用、URL、2023年9月11日閲覧

黒の出動服を着用し、黒いヘルメットにプロテクター、透明なポリカーボネート製の盾を装備しています。(2018年に一新2)この出動服に着替えることを完装(かんそう)と呼んでいるそうです。

組織

以下は警視庁の機動隊が持つ隊の概要です。

近衛の一機

警視庁Webサイト「第一機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第一機動隊
    • 爆発物処理班、儀仗隊
    • 通称「近衛の一機」「警視庁近衛連隊」「直参旗本」(警視庁本部庁舎の警備をしていたことから)
    • シンボルマークは第一機動隊の「1」と機動隊の「桜」、十個隊を表わす「10枚の翼」、それらを合わせて「鵬」としてデザインされました
    • 毎年の本参賀(年初の一般参賀?)に出動し、天皇皇后両陛下の身辺と参加する一般人の警備を行っています
    • 卓球クラブとハンドボール部があるようです

カッパの二機

警視庁Webサイト「第二機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第二機動隊
    • 爆発物処理班、水難救助隊
    • ニックネームは「カッパの二機」
    • シンボルマークはカタカナの「ニキ」でマルをつくり、その中に警察の旭日と機動隊の桜を支えて限りない前進を願っています
    • 江戸川花火大会の警備や荒川・江戸川流域の水害では救難活動等を行っています
    • 警視庁ボートクラブがあり、全日本選手権・全日本社会人選手権等で活躍しています

ほこりの三機

警視庁Webサイト「第三機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第三機動隊
    • 爆発物処理班
    • ニックネームは「ほこりの三機」
    • シンボルマークは、太陽と和を表わす円と、誠実・融和・奉仕という隊訓と光に、両手をたかだかと上げて力強く躍進する人を表わしています
    • 関東社会人一部リーグに所属するラグビー部があり、上位リーグ昇格決定戦に進出したこともあるそうです

鬼の四機

警視庁Webサイト「第四機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第四機動隊
    • 空手小隊、治安警備部隊
    • ニックネームは「鬼の四機」
    • シンボルマークはアラビア数字の4を隊のカラーであるグリーンで形象化したもの、中心の三角形は鬼の角を示し、それを支える弧は強さを支える両腕、左側は隊訓の「誠実」を、右側は「機敏」を、円周全体は融和団結と秩序、安全を願望するもの
    • 近代五種部(フェンシング・水泳・馬術・レーザーラン(射撃・ラン))がありリオデジャネイロオリンピックに4名の代表選手3を、フェンシング部からはシドニーオリンピック・東京オリンピック4に代表選手を輩出しています
    • 関東クラブ連盟選手権大会で準優勝した野球部もあって、現在は元プロ野球選手3名を含む部員30名で活動しています

学の五機

警視庁Webサイト「第五機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第五機動隊
    • 防衛省隣接
    • ニックネームは「学の五機」「精強五機」
    • シンボルマークは、勝利(Victory)のVとローマ数字のVに、学問の神様「湯島天神」のシンボルの梅の花と、5枚の花びらに「智・仁・勇・信・美」の意味を込めています
    • 東京都社会人サッカー1部リーグ所属のサッカー部があったものの、降格し2部リーグになってしまったそうです
    • 空手道部もあり、東日本実業団空手道選手権大会で優勝を果たした、全国警察・東日本実業団・全日本実業団空手道選手権大会の3大会制覇を目指しています

若鹿の六機

警視庁Webサイト「第六機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第六機動隊
    • 爆発物処理班、銃器対策部隊
    • ニックネームは「若鹿の六機」「潮」「若鹿」
    • シンボルマークは、左右3対の曲線が第六機動隊の「6」を、同音の「鹿」から鹿の角をデザインし、円は和と団結を、中心の直線は中立公正な態度、不偏・毅然たる姿勢、力強さ、進み行く方向を表わしています
    • オリンピック候補選手9名を含む29名が活動しているレスリングクラブがあり、これまで7名のオリンピック選手を輩出、シドニーオリンピックで銀メダル5、アテネオリンピックで胴メダルを獲得しています
      • シドニーオリンピックの銀メダリスト・永田克彦はプロレスラー永田裕志の実弟で、彼の敬礼ポーズは弟が元ネタだそうです

若獅子の七機

警視庁Webサイト「第七機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第七機動隊
    • 銃器レンジャー隊
      • レンジャー隊は第七機動隊にのみ編成されており、銃器レンジャーは銃器等を使用した事件・人質籠城事件等の犯人逮捕、人質救出を担当しています
    • 山岳レンジャー隊
      • 山岳遭難者の捜索、救助を担当
    • ニックネームは「若獅子の七機」「若獅子」
    • シンボルマークはライオンのLと七機の7を組み合わせて、稲妻を連想させる鋭角は疾風迅雷の警備、優美な曲線は人の痛みが分かる警備を表わしています
    • バスケットボール部があり、全国官公庁選手権大会で準優勝しています

蜂の八機

警視庁Webサイト「第八機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第八機動隊
    • 銃器対策部隊、化学防護隊
    • ニックネームは「蜂の八機」「忍び」「蜂」
    • シンボルマークは、日輪をモチーフに、隊訓の融和・積極・錬成を3本の線として、これを和を意味する輪にさせたものとなっています
    • 相撲クラブがあり、ウエイトリフティングクラブではリオデジャネイロオリンピックでは62kg級で4位に入賞しました

疾風の九機

警視庁Webサイト「第九機動隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 第九機動隊
    • 水難救助隊
    • ニックネームは「疾風」「若鷲」
      • シンボルマークは大空を高く羽ばたく若鷲の「疾風迅雷」の如く突き進む姿と、月桂樹は「勝利を念ずる心」を表わしています
    • アメフト部があります

技術の特車

警視庁Webサイト「特科車両隊」より引用、URL、2020年5月28日閲覧
  • 特科車両隊
    • 爆発物処理班、化学防護隊、災害重機隊
      • 災害重機隊は特科車両隊にのみ配置されている部隊で、震災や風水害等の大規模災害発生時に災害重機車両で支援活動を行っています
    • ニックネームは「技術の特車」「技術」「支援」
    • シンボルマークは特科車両隊の主力車両たる放水警備車と、虹色は放水の威力を示しています
    • バレーボール部があってVリーグの2部リーグに当たる「V.LEAGUE DIVISION2」に在籍しています

爆発物処理班

爆発物処理班が対応するのは事件性の高い爆発物です。第二次世界大戦等で使われた不発弾の処理は自衛隊の役割となります。

爆発物処理班は警視庁/道府県警察の機動隊に配置されていて、警視庁では特科車両隊を含めた5隊の中に配置されています。当番制で事案に対応し、それぞれの隊に担当区域はなく出動命令が下ればどこへでも向かいます。

爆発物処理筒車

イカロス出版/Jウイング別冊編集部「警察警備最前線!!」より引用、URL、2020年3月24日閲覧

不審物発見時には所轄の警察官等がまず周辺の住民を避難させ、その後に爆発物処理班が駆けつけます。防爆防護服を着用しマジックハンドを装備した特殊車両や爆発物処理用ロボットを使って爆発物を回収します。回収した爆発物は爆発物処理筒車に積まれて処理場へ移送し、爆発させて処理します。

  • 爆発物処理筒車に積んだ爆発物は移送時に液体窒素で冷凍されます

  1. 警察庁Webサイト/災害時における警察活動、URL、2023年9月11日閲覧 ↩︎
  2. 朝日新聞/背中に「POLICE」機動隊の出動服、62年ぶり一新、URL、2020年6月14日閲覧 ↩︎
  3. テレビ朝日/リオ五輪出場の“警察官選手” 壮行会でメダル誓う、URL、2023年9月11日閲覧 ↩︎
  4. Wikipedia/吉田健人、URL、2023年9月11日閲覧 ↩︎
  5. Wikipedia/永田克彦、URL、2023年9月11日閲覧 ↩︎