[警察小説メモ] 警察官

私は警察小説や刑事ドラマが好きです。そこにある人間ドラマやミステリーはもちろん、警察官という仕事とその職務にある光と闇の面、さらには職業に縛られた苦悩/葛藤なども好みです。その好きが高じて警察小説を書くようになりました。

登場人物はもちろん警察官です。しかし私は警察官ではないのでリアリティにかけている部分が多々あると感じました。

そこで警察官や彼らの仕事について本やネットで調べた内容をメモしたのが「警察小説メモ」になります。警察の業務や技術、仕組みは日進月歩なので中には古い内容/データに基づく記述もあると思いますが、見つけ次第更新していきます。

目次

警察官とは

警察庁や警視庁/道府県警察に勤務する公務員のうち、実際の警察活動を行う職員のことを指して「警察官」と呼びます。交番にいる制服の警察官や事件の捜査をする刑事、街中で見かける白バイ隊員、事件現場で証拠品の採取活動をする鑑識の人たちも含めてすべてが警察官となります。

身分としては公務員ですが、警察庁に勤める警察官は国家公務員となり、警視庁・道府県警察に勤める警察官は地方公務員となっています。(ただし階級が警視正以上になると、警視庁・道府県警察に所属していても国家公務員となるようです)

警察法によって、警察官には職務遂行のために様々な権限が与えられています。

  • 事件の捜査を行う
  • 犯罪に関係している人物の取調べを行う
  • 犯罪に関係していそうな人物に職務質問する
  • 被疑者を逮捕し身柄拘束する(現行犯逮捕であれば一般人でも身柄拘束は可能)
  • 武器が使用できる

一方で、警察には警察官以外にも事務処理に携わる職員(警察職員)や、捜査に関する技術を持った技官、引退した警察官を再雇用して交番での業務(一部に限定)を行う交番相談員などもいます。

心得

警察官なら誰もが暗記している法律が警察法第二条第一項です。

(警察の責務)

第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。

e-Gov法令検索「警察法」より引用、URL、2023年10月14日閲覧

志望動機

様々な理由から警察官を志して採用試験を受けられています。

動機としての大まかなカテゴリーとしては以下があるようです。

  • 正義感
    • 「犯罪者を捕まえて矯正させたい、この世から犯罪をなくしたい、犯罪を抑止したい」という気持ちから志すパターンです
    • 犯罪の被害を受けた、事件を目の当たりにした、事件に巻き込まれた、ニュースを見て義憤を覚えた等がきっかけになると思います
  • 奉仕
    • 「市民に頼られたい、市民のための人間でありたい」という気持ちから志すパターンです
    • 警察法にも「誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。」とあるように、市民のための警察官というものをドラマや小説、もしくは地域課のお巡りさんの活動を通じて感じ取って志す方もいるようです
  • 人が好き
    • 人とのコミュニケーションが好きで、それを通じて自分を成長させたいという気持ちから志すパターンです
  • 活発
    • 何かしていないと落ち着かない、常に動いていたい、どうせならそれを仕事に役立てたいという気持ちから志すパターンです
  • 身内に警察官がいる
    • 肉親に警察官がいると(特に両親)、彼らの仕事や私生活という等身大の警察官を見ながら育つため、憧れのような気持ちから「自分も警察官になる」と志すパターンです
  • その土地に(東京に)憧れて
    • 東京や大阪等の大都市での暮らしに憧れてそこの警察に応募して勤めるという人もいるようです
  • でもしか警察官
    • 「でもしか」は昭和中期ぐらいに使われていた言葉で、「でもしか警察官」とは、就職する先が見つからないから「警察官でもやろう」や、体力しかないから「警察官しかできない」のように、他に選択肢がないからという後ろ向きな理由で警察官を志望した人をさします(警察官はいつでも募集しているため)
    • 昭和中期~後期ぐらいの言葉なので、平成以降は使われていない言葉のようです

警察官を志す場合、いずれのパターンにしても外向的な性格があるのが特徴的です(でもしか警察官も、警察官を選ぶという時点で外向的な性格があるとも言えます)。気持ちが外に向いていて、常に人と接触することが嫌いではない人が向いているのではないでしょうか。

警察官になるためには

大まかには以下の流れとなるようです。

  • 警察官採用試験を受験し合格すること
  • 受験した警視庁/道府県警察の警察学校に入校し、一定期間の初任科研修を受ける
  • 警察学校を卒業し警察署に「巡査」として配属され3ヶ月程度の職場実習を受ける
  • 再び警察学校に戻って初任補修を受ける
  • 再び配属先の警察署に戻って本格的な実践実習が始まる

採用試験の申込み

採用試験を受験したい警視庁/都道府県警察のWebサイトから資料請求したり、直接警察署へ出向いてその旨を話したり、または警察官の先輩から誘われて受験したりするケースもあるそうです。

受験資格

受験する都道府県によって多少の違いはあるようですが、学歴による「類別」があり、それぞれに年齢などの条件が定められています。また、身体能力もある程度の基準があるようでした。

学歴の類別

その人が高卒なのか短大卒/大卒なのかで受験資格が異なります。下記の類別は試験の難易度を示すものでもあるようで、高卒の人がI類を受験することも可能に思えました。

  • I類(大卒程度)
    • 35歳未満で大学を卒業/卒業見込みがある
    • 21~35歳未満で大学卒業程度の学力を持っている
    • 2014年度での倍率は男性6.8倍/女性6.5倍
  • II類(短大卒程度)
    • 現在ではIII類と同じ受験資格となっているようです
    • 2014年度での倍率は男性7.5倍/女性4.6倍
  • III類(高卒程度)
    • 35歳未満で高校を卒業/卒業見込みがある
    • 17~35歳未満で高校卒業程度の学力がある

身体能力の基準

身長・体重以外は男性・女性ともに同じ基準が適用されているようです。

  • 視力
    • 裸眼視力0.6以上(矯正視力1.0以上)
    • パトカー等を運転する関係もあるようです
  • 身長
    • 男性:概ね160cm以上
    • 女性:概ね154cm以上
  • 体重
    • 男性:概ね48kg以上
    • 女性:概ね45kg以上
  • 色覚・聴覚
    • 警察官としての職務遂行に支障がないこと
    • 軽度の色弱であれば合格できるようです
  • 疾患
    • 警察官としての職務遂行に支障がないこと
    • 脳や心臓、呼吸器などの疾患や障害が残っているほどの怪我、精神疾患等は難しい
  • その他身体の運動機能
    • 警察官としての職務遂行に支障がないこと

採用試験

採用試験には1次・2次とあって、その両方ともに合格する必要があります。

1次試験

  • 教養試験
    • 50題(120分)、5択
    • 文章理解、判断推理、数的処理、資料解釈、図形判断、人文科学、社会科学、自然科学、一般科目(国語・英語・数学)等から
  • 論文試験
    • 1題(80分)
  • 国語試験
    • 記述試験等
  • 身体検査
    • 身長
    • 体重
    • 視力
    • 色覚・聴覚・疾患
  • 適性検査

2次試験

  • 面接
    • 試験官が注目するのは「積極性」「責任感」「社会的能力」「表現力」の4点だそうです
    • 警察官の仕事は人間が相手であるため、まず共通の社会的能力がないとコミュニケーションもとれませんし、相手からの信頼感を得られるために責任感がなくてはなりません
    • 仕事は自分から探す、相手と関わっていく積極性も大事です
    • 表現力は人間関係のスムーズな展開のみならず、業務遂行時には簡潔な言葉で相手にやりたいことを伝える能力も必要です
  • 2次適性検査
  • 2次身体検査
  • 体力検査
    • 腕立て伏せ・反復横跳びなどの基本的な体力を見られるそうです
    • 目的としては明らかに「鍛えてもダメ」そうな人を落とすためだとか

採用条件

採用試験に合格したとしても、地方公務員法に規定されている採用条件に合致しなければお断りされてしまうこともあります。

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
三 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

e-GOV法令検索「地方公務員法」より引用、URL、2023年8月31日閲覧
  • よく聞く「3親等の中に前科前歴者がいるとアウト」という話は都市伝説のようです
    • 前科前歴を問われるのは本人のみ

中途採用

受験資格があれば社会人として働いていた経歴があったとしても採用試験に申し込むことができます。そのさいは巡査からスタートとなるようです。

キャリア

2023年10月、警察庁は幹部候補となる総合職で社会人経験者の中途採用を募集することにしたそうです。1

受験資格は大卒以上で係長補佐は7年以上、係長は2年以上の経験者であり、募集は若干名(数名程度?)で、10月から募集を開始し合格者は翌年4月に入庁して警察官/技官になるそうです。

採用後の階級は以下のようになるようです。

  • 2年以上の経験者:警部
  • 7年以上の経験者:警視

初任科

採用された人は全寮制の警察学校に入校して初任教養という研修を受けます。警察学校の卒業とともに地域の警察署に配属されて交番・刑事・生活安全等の部署で業務を覚えます。再び警察学校に戻って初任補修という研修を受け、それが終わると地域の警察署に配属となって最低でも1~2年間の交番勤務に就いて警察官のキャリアをスタートさせます。

職種初任教養職場実習初任補修実践実習
警察官(大卒)6ヶ月2ヶ月2ヶ月3.5ヶ月
警察官(高卒)10ヶ月3.5ヶ月3ヶ月4.5ヶ月
警察職員1ヶ月
初任科の期間

その後は本人が希望したりその働きを認めた他部署からの推薦を受けて地域課(交番勤務)以外の刑事課や生活安全課等の部署へ異動してキャリアを積んでいきます。

  • 配属されたばかりの警察官の階級は巡査です
  • 巡査から昇任試験を受けて合格し巡査部長になると再び警察学校へと入校して教養を受けて、他の警察署に異動した後にまた交番勤務からスタートします
    • そこでまた本人の希望や他部署からの推薦があると異動したり、その実力が認められた人は都道府県警察の本部へ異動となることもあるそうです
  • 最初に交番勤務を任されるのは、警察活動全般について浅く広く体験させるためだそうです
    • その体験の中から自分に向いた分野を見つけて適した部署への異動を希望し専門性を高めていくそうです

キャリア・ノンキャリア

警察官は大きく2種類に分かれ、1つは警察行政の計画と管理のために働く警察官(国家公務員)と、警視庁/道府県警察で治安維持のために現場で働く警察官(地方公務員)が存在します。前者がいわゆるキャリア(警察官僚)、後者をノンキャリアと呼んでいます。

刑事ドラマ等ではキャリアとノンキャリアがいがみあうシーンがよく見られますし、私もそういうイメージが強かったです。しかし実際はキャリアが警察庁から警視庁/道府県警察に管理職として出向するという人事交流が多く、その際に現場がキャリアに様々なことをレクチャーすることもあっていがみあうようなことはほとんどないと言います。(上層部では違うかもしれませんが)

キャリア

大学を卒業して国家公務員採用総合職試験(旧I種)に合格した人が、警察庁での面接試験に合格して初めて採用されます。毎年10~15名程度しか採用されず、そのほとんどが東京大学法学部の卒業者という狭き門となっているようです。(京都大学ですら「珍しい」と言われるそうです)

警察学校で幹部教養を受けたのちに警部補の階級からスタートとなります。入庁1年目に警視庁/道府県警察の所轄署でおよそ9ヶ月の配属研修を受けて現場経験を積むと、警察大学校での補修を受けて警部となり、警察庁へ戻ってキャリアを積んでいきます。

その後は関係省庁等への出向をこなしながら出世(キャリアは昇任試験がなく、自動的に昇進する)していきます。以下は平均的なキャリアの動きです。

  • 平均的なキャリアの動きです
    • 20代、入庁後は警部補として警察庁の係長に着任します
    • 警部に自動昇任し、地方の警察に課長等の待遇で着任し捜査の現場経験を積みます
    • 20~30代前半に警視として警察庁へ戻ります
    • 30代半ばに警視正として地方の警察で警察署長や本部の部長等を経験
    • 50歳前後で警視長として小規模な県の本部長や警察庁の課長等を経験
    • 警視監として大きな県の本部長や管区局長等を経験
    • 警察庁に戻って部長・審議官・局長を経験
    • (選ばれた人のみ)警視庁の警視総監や警察庁長官に着任

以下はキャリアあるあるです。

  • 中小規模の県警察だとキャリアは3名程度
    • そのうちの2名は県警本部長と県警副本部長であるため、一般の警察官は退任まで彼らと顔を合わせることもなく名前すら覚えていないことも多いそうです(そもそもキャリアは2年程度で異動先を去っていきます)
    • 大規模県警察でも5~6名程度(警視庁は例外)
  • (前述の通り)警部補の階級からスタートし昇任試験がないため自動的に警視正まで昇進
    • 同期はほぼ同時期に昇任するため階級的な格差は生まれませんが、その代わりに「どのようなポストを経験してきたか」「そのポストの序列はどこか」「重大事件に遭遇したか」で優劣が生まれます
  • (キャリアに限らないと思いますが)幹部として反社会的組織の壊滅を指示したりしている関係上、妙な電話がかかってきたり脅迫を受けたり、家族を脅されたりということは普通にあることだそうです
  • キャリアは大阪府警察・神奈川県警察への出向を嫌っているそうです
    • 双方とも不祥事のデパートと呼ばれるぐらい不祥事が多いため「鬼門」とされています
    • キャリアは行政官であり不祥事を起こした執行官である部下の責任を連座して負う立場だからです
      • 2015年に大阪府警察の現職警察官が不倫相手を絞殺した事件では、将来の警察庁長官・警視総監と目されていたキャリアの本部長が警察庁に戻ることなくそのまま退官しました
      • 1996年に神奈川県警察が本部長の指示で組織ぐるみで行った現職警察官の覚醒剤使用事件(神奈川県警覚醒剤使用警官隠蔽事件)では県警本部長が起訴されるという史上初の事件であり、警察庁から出向していた警務部長のキャリアも史上初の懲戒免職処分を受けました
  • キャリア(上司としての)心構え
    • 特に部下の名前・経歴・人柄・仕事能力を把握することが何より必須
      • 部下の名前を間違えたりすれば「あいつは腰掛だ」と舐められる要因になりかねず、その後ガン無視されることもあるそうです
    • 先輩・後輩の名前と経歴も把握が必須
      • 自部門では手に負えない場合に誰がどこで何をしているのかを把握していないと、適切な協力を仰げない
  • 退官後の仕事
    • 民間企業の顧問等に天下りすることが多いものの、経験したポストによって政府の仕事に就くこともあります
    • 警視総監であれば、首都東京の治安維持のスペシャリストとしての経験を元に内閣危機管理監(国防を除く国の危機管理の統括をするポジション)
    • 大規模県の本部長や警察庁の局長であれば、内閣情報官(国の重要政策に関する情報収集と、国の情報機関の取りまとめ役として首相への週2回にわたる定例報告)

準キャリア

大学を卒業して国家公務員採用一般職試験(旧II種)に合格した人が警察庁に採用された場合、準キャリアと呼ばれます。準キャリアは巡査部長の階級からスタートとなり警視までは昇任試験なしで昇進していくものの、キャリアと違って警察庁次長や警察庁長官に登用された前例はないそうです。

ノンキャリア

警視庁/道府県警察の採用試験を受けて合格した人は巡査の階級からスタートして警察官人生を歩んでいきます。大学卒業者で毎年1,000名程度が警察官になっており、ノンキャリアの場合は激しく出世したとしても警視長までで退官を迎えます。

階級

警察庁長官を除く警察官は、警察法第62条で定められた以下の階級を持つことになっています。

  • 巡査
  • 巡査部長
  • 警部補
  • 警部
  • 警視
  • 警視正
  • 警視庁
  • 警視監
  • 警視総監

なお報道等で見聞きする「巡査長」という単語ですが、これは階級ではないそうです。階級が巡査の警察官が勤続10年で自動的になれる「職位」という位置づけなので、「○○巡査長」という警察官がいた場合でもその人の階級は巡査ということになります。

また警察庁長官は全ての警察官のうちたった1人の「階級のない警察官」となりますが、職位としては警視総監より上となっています。

階級が上がることを「昇任」と呼んでいて、警察官は巡査~警視長まではその昇任試験を受けて合格すれば次の階級に上がることができます。しかし警視正~警視総監は定員があるため空きがなければ昇任はできません。

  • 昇任はキャリア・ノンキャリアで異なります
    • 警視庁/道府県警察に入ったノンキャリアの警察官は前述の通り昇任試験を受けて昇任していきます
      • 巡査→巡査部長→警部補→警部は筆記試験
      • 警部→警視→警視正→警視長は選考
    • 警察庁に入ったキャリア警察官は入庁時にすでに警部補からスタートとなっており、その後は昇任試験を受けず自動的に昇任していきます

巡査

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用、URL、2020年1月13日閲覧

警視庁/道府県警察が採用した警察官は警察学校を卒業後にその警察の巡査として任命されます。巡査は立派な警察官ですが、警察活動におけるすべての行動が許されているわけではなく「司法巡査」という役職で扱える権限でしか業務が行えません。(通常逮捕令状や捜索差押え令状の請求ができない等)

  • 人数
    • 人数は全体の約30%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので8~9万人程度
  • 主なポスト
    • 警視庁:係員
    • 警察本部(大規模):係員
    • 警察本部(小規模):係員
    • 警察署(大規模):係員
    • 警察署(小規模):係員
  • 階級章
    • 地が銀色で葉も銀色、バーは1本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • 10代後半~
  • 平均年収
    • 約570万円

巡査長

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用、URL、2020年1月13日閲覧

前述にもあったように正式な階級ではなく内部的な職位として扱われている階級になります。巡査として勤続10年を超えて勤務成績が良く経験のある巡査が名誉的な階級として「巡査長」を与えられるそうです。

  • 人数
    • 人数は巡査の半数程度
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので4~5万人程度
  • 主なポスト
    • 巡査と同じ
  • 階級章
    • 地が銀色で葉も銀色、バーは2本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • 20代後半~
  • 平均年収
    • 約570万円

巡査部長

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用、URL、2020年1月13日閲覧

巡査が昇任試験を受けて合格すると初級幹部として位置づけられるこの「巡査部長」という階級になることができます。警視庁/道府県警察によって異なりますが、昇任試験の合格率は約10倍だそうです。

巡査の時に刑事課や生活安全課等で捜査員をしていたとしても、昇任試験に合格して巡査部長になると最低でも1年はまた地域課に配属されて交番業務に従事します。その後、捜査経験がある場合はまた刑事課や生活安全課等に配属されるそうですが、そのまま地域課に残るケースも多いようです。

司法警察員という役職になっており、逮捕令状や捜索差押令状、身体検査令状の請求が可能です。(なお逮捕令状のうち通常逮捕売令状の請求は他の令状に比べて請求権限者の要件が厳しく、警部以上の階級の警察官でなければできません)

  • 人数
    • 人数は全体の約26%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので8~9万人程度
  • 主なポスト
    • 警視庁:係員
    • 警察本部(大規模):主任
    • 警察本部(小規模):主任
    • 警察署(大規模):主任
    • 警察署(小規模):主任
  • 昇任試験の受験資格
    • 大卒者は2年以上の経験
    • 短大卒もしくはそれと同等の資格を有する場合は3年以上の経験
    • 高卒者は4年以上の経験
  • 階級章
    • 地が銀色で葉も銀色、バーは3本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • 20代後半~
  • 平均年収
    • 約630万円

警部補

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用、URL、2020年1月13日閲覧

ノンキャリアの警察官は巡査部長から昇任試験を受けて合格するとなれる階級ですが、キャリアの警察官は最初からこの警部補という階級で始まります。

警視庁であれば本部主任、警察署であれば課長代理や係長、交番署長等の実働レベルの長を務めることができる階級です。実働部隊を率いて現場指揮を執るポジションのため、警察の営業成績ともなる「検挙率」はこの警部補の働きに左右されると言われています。

警部補のまま現場の第一線を長く勤めている人は職人肌が色濃く出てきてしまい、その上の管理職からは「扱いづらい」と思われる人も少なくないそうです。しかし検挙率に大きく影響を与えるため宥めたりすかしたりして働いてもらっているケースが多いとか。

ノンキャリアの警察官はこの階級で定年を迎える人が多いです。

  • 人数
    • 人数は全体の約25%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので8~9万人程度
  • 主なポスト
    • 警視庁:主任
    • 警察本部(大規模):係長
    • 警察本部(小規模):係長
    • 警察署(大規模):係長
    • 警察署(小規模):係長
  • 昇任試験の受験資格
    • ノンキャリア
      • 大卒者は巡査部長としての実務経験が2年以上
      • 短大卒もしくはそれと同等の資格を有する場合は3年以上の経験
      • 高卒者の場合は4年以上の経験
    • キャリア
      • 任官時はこの階級からスタート
      • この後、警察大学校での研修を終えると一斉に警部へと昇任
      • 30歳前後でさらに警視へと自動的に昇任
  • 階級章
    • 地が銀色で葉は金色、バーは1本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • キャリアは22歳~
    • ノンキャリアは30代前半~
  • 平均年収
    • 約660万円

警部

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用、URL、2020年1月13日閲覧

ノンキャリアの警察官は警部補から昇任試験を受けて合格するとなれる階級です。キャリアの警察官は任官されて警察大学校での研修を終えるとすぐにこの警部へと昇任します。

警視庁であれば本部の係長、警察署であれば課長、機動隊なら中隊長等、警部補の率いる実働部隊を束ねて組織を運営する最初の管理職であり、上級幹部の位置づけとなっています。いわゆる中間管理職です。

逮捕令状のうち通常逮捕令状を請求できるのはこの警部以上の階級の警察官となります。

志願制だそうですが、大使館やその他の在外公館に出向することもあるそうです。

  • 人数
    • 人数は全体の約6%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので1.7万人程度
  • 主なポスト
    • 警察庁:係長
    • 警視庁:係長
    • 警察本部(大規模):課長補佐
    • 警察本部(小規模):課長補佐
    • 警察署(大規模):課長
    • 警察署(小規模):課長
  • 昇任試験の受験資格
    • ノンキャリア
      • 警部補としての実務経験が4年以上
      • 所属長からの推薦/登用によって受験が可能
      • 合格すると東京にある警察大学校に入校し(全寮制)3ヶ月の集中トレーニングを受ける
    • キャリア
      • 自動昇任
  • 階級章
    • 地が銀色で葉は金色、バーは2本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • キャリアは23歳~
    • ノンキャリアは30代半ば~
  • 平均年収
    • 約720万円

警視

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用URL、2020年1月13日閲覧

ノンキャリアの警察官は警部になってから一定条件をクリアした上で選考を受けて任免される階級です。キャリアの警察官は採用されてから7年目で自動的に昇任します。

警視庁や大規模な警察本部では管理官(課長の補佐)や、小規模な警察本部では課長、警察署の中では副署長(中小規模の警察署であれば署長)等を任されます。本部の課長や署長になった警視は「所属長警視」と呼ばれる組織のトップとなり、そうでない警視が任免されるのが「○○官」と呼ばれるセクションです。(管理官や指導官、企画官、対策官、監察官等)

警視までは地方公務員であり、警視正以上は国家公務員になります。

  • 人数
    • 人数は全体の約2.5%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので7千人程度
  • 主なポスト
    • 警察庁:課長補佐
    • 警視庁:課長、管理官
    • 警察本部(大規模):課長
    • 警察本部(小規模):課長
    • 警察署(大規模):副署長
    • 警察署(小規模):署長、副署長
  • 昇任試験の受験資格
    • ノンキャリア
      • 警部として実務経験が8年以上あり、かつ選考を受ける
    • キャリア
      • 採用後7年目で自動昇任
  • 階級章
    • 地が銀色で葉は金色、バーは3本で金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • キャリアは26~29歳ぐらい
    • ノンキャリアは40代半ば~
  • 平均年収
    • 約780万円

警視正

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用URL、2020年1月13日閲覧

ノンキャリアの警察官は警視になってから選考を受けて任免される階級です。キャリアの警察官は採用されてから15年以降にポスト次第で順次昇任します。警視庁であれば警視総監から、道府県警察では警察本部長がそれぞれ都道府県公安委員会の意見を得て任免します。

警視正以上は地方警務官と呼ばれる国家公務員となっていて、警察学校の校長や大規模警察署の署長、警視庁であれば主要な課の課長等に任免されます。

ノンキャリア警察官の出世組はこの上にある階級の警視長まで昇任できるものの、中小規模の県警察になると警察庁からの出向者で警視長のポストが埋まってしまうため、実質的にこの警視正が最高位の階級となっているそうです。

  • 人数
    • 人数は全体の約0.5%
    • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので700人程度
  • 主なポスト
    • 警察庁:理事官
    • 警視庁:参事官、課長
    • 警察本部(大規模):部長、警察学校長、参事官
    • 警察本部(小規模):部長
    • 警察署(大規模):署長
    • 警察署(小規模):-
  • 昇任試験の受験資格
    • ノンキャリア
      • 選考を受ける
    • キャリア
      • 採用後15年以降に順次昇任
  • 階級章
    • 地・葉・バー(1本)が金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • キャリアは33~38歳ぐらい
    • ノンキャリアは50代~
  • 平均年収
    • 約1,000万円

警視長

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用URL、2020年1月13日閲覧

ノンキャリアの警察官は警視正から選考を受けて任免される階級です。キャリアの警察官は採用されてから22年目前後で優秀な人から順次昇任します。

警察庁では内部部局の課長に、一部の県警察ではトップの本部長に任免されます。本部長の場合は国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て任免、それ以外のポストの場合は警視庁であれば警視総監が、道府県警察であれば本部長がそれぞれ都道府県公安委員会の意見を得て任免します。

ノンキャリア警察官は激しく出世したとしてもこの階級までとなります。また、女性警察官が昇任した階級としてはこの警視長が最高位だそうです。

  • 人数
    • 人数は警視正と合わせて全体の約0.5%
      • 平成25年度のデータでは警察官の総数が約29万人だったので700人程度
      • 他のサイトでは定員数が警視正を含めて589名との記述もあり
  • 主なポスト
    • 警察庁:課長、管区警察局部長
    • 警視庁:部長
    • 警察本部(大規模):部長
    • 警察本部(小規模):本部長
    • 警察署(大規模):-
    • 警察署(小規模):-
  • 昇任試験の受験資格
    • ノンキャリア
      • 選考を受ける
    • キャリア
      • 採用後22年目前後に優秀な人から順次昇任
  • 階級章
    • 地・葉・バー(2本)が金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • キャリアは41~48歳ぐらい
    • ノンキャリアは50代後半~
  • 平均年収
    • 約1,100万円

警視監

宮城県警察「警察官のバッジ」より引用URL、2020年1月13日閲覧

警視長に昇任したキャリアの警察官は、よほどのことがない限りこの警視監へと昇任します。この上には警視総監しかないため、ほとんどのキャリアがこの警視監という階級で警察官人生を終えることとなるそうです。

ポストとしては主要な道府県警察の本部長、警察庁では次長・官房長、警視庁であれば部長級に任免されます。

  • 人数
    • 定員数は約40名
  • 主なポスト
    • 警察庁:次長、管区警察局長、警察大学校校長
    • 警視庁:副総監、部長
    • 警察本部(大規模):本部長
    • 警察本部(小規模):-
    • 警察署(大規模):-
    • 警察署(小規模):-
  • 階級章
    • 地・葉・バー(3本)が金色、中央には金色の日章があしらわれています
  • 年齢
    • 49~52歳ぐらい
  • 平均年収
    • 約1,200万円

警視総監

警視庁のトップであり警察官の階級としては最高位となります。国家公安委員会が東京都公安委員会の同意を得て任免します。1都道府県のトップではあるものの、首都東京の治安を守るという職務からか序列的には警察庁長官、警察庁次長、官房長に次ぐ4位ぐらいの扱いだそうです。

日本では他の組織に「長官」は存在するものの、「総監」は警視庁にしか存在しない階級です。

  • 人数
    • 定員は1名
  • 階級章
    • 金色の日章が横に4つ並んでいる
  • 年齢
    • 56~50代後半
  • 平均年収
    • 約1,500万円

退官後は民間企業の顧問等に天下りすることが多いようですが、首都東京の治安維持のスペシャリストとしての経験を元に「内閣危機管理監」に就くことがあります。内閣危機管理監は内閣官房長官・内閣官房副長官の命を受けて内閣官房の事務のうち危機管理(国防に関する事態を除く)を統括する職務で、テロ・ハイジャック・大規模な災害・感染症蔓延の対処を行います。1998年~2022年までの間に内閣危機管理監となった9人のうち7人が元警視総監で、残り2人は元警察庁警備局長でした。

警察庁長官

警察庁のトップであり、国家公安委員会が総理大臣の承認を得て警察官の中から任免されますが、基本的には警視総監からは選ばれず、警察庁次長から選ばれます。(警察庁次長は官房長になった人から選ばれます、つまり官房長経験者のほとんどが次長→長官になります)

  • 警視総監と警察庁長官の分かれ目
    • 基本的には分からないものの、警視総監は「現場の親方」の最高位であるため、現場が好きだと思われたキャリアが選ばれるのではないかと言われています
    • 警視総監から警察庁長官にはなりませんが、初代警察庁長官の斉藤昇は例外として警視総監から警察庁長官になりました
      • 斉藤昇は戦前にあった警視庁(内務省)のトップとして警視総監を務めていた人物で、警察庁発足時に警察庁長官となりました
  • 民間企業に例えると警察庁というホールディングカンパニーのトップで、警視庁/道府県警察はホールディングカンパニー傘下の会社
  • 警察庁の次長は長官の下僚ではあるものの長官とまったく同じ情報が上げられており、長官に万が一があった場合は長官の代わりとして職務遂行する立場だそうです

警察庁長官は巡査長と同じく階級ではなく職位であり、事実上の最高位となります。他の省庁で言えば事務次官に相当するポジションです。

  • 人数
    • 定員は1名
  • 階級章
    • 金色の日章が横に5つ並んでいる
  • 年齢
    • 50代後半
  • 棒給
    • 1,175,000円

警察庁長官の1日は他の公務員と変わらず朝9時登庁~夕方6時頃に退庁で、その間は会議・打合せ・部下との会話/指示、資料確認等だそうです。土日はきっちり休んでいる人がいるものの、連絡は頻繁に入ってくるし考えることは山のようにあったそうです。

  • 関心を持つ事件
    • 広域/重大な事件
    • 国政・外交上の影響がある事件
  • 警察庁長官しかできない仕事
    • 想定外の事態が発生したときに事態を収拾させ、どうやって次を防ぐかを検討し、どう責任を取るか
    • 権力に囚われず正気を保つこと

昇任試験

受験資格のある警察官はもれなく昇任試験を受けるそうですが、その前に予備試験も行われるそうです。試験は択一式の筆記試験から始まり、その出題内容については受験する警察官の所属部署に関係なく統一されたものであるため、経験したことのない任務や業務の分野からも出題される問題があるようです。

とにかく勉強が必要であるため、合格のしやすさは勉強時間がいかに確保できるかにかかってきます。

刑事部門に配属された警察官は日々の捜査と業務に時間が取られてしまい、他の警察官と違って試験勉強の時間が確保できないといいます。勉強時間が確保しやすいのは機動隊の警察官で、大きな出来事がなければほぼ訓練漬けの日々で予定外の業務がないため、しっかり勉強できるメリットがあるということでした。(勉強をする体力も持っています)

服務規程

警察官にはその業務を遂行するため業務上守るべき服務規程というものがあります。それは一般企業で言うところの社則のようなものであり、これに違反すると懲戒処分に至ることもあります。

警察職員の職務倫理及び服務に関する規則
警察法施行令(昭和二十九年政令第百五十一号)第十三条第一項の規定に基づき、警察職員の職務倫理及び服務に関する規則を次のように定める。
(目的)
第一条 この規則は、警察職員が保持すべき職務に係る倫理(以下「職務倫理」という。)及び警察職員の服務の基準を定めることを目的とする。
(職務倫理)
第二条 警察職員は、警察の任務が国民から負託されたものであることを自覚し、国民の信頼にこたえることができるよう、高い倫理観の涵かん養に努め、職務倫理を保持しなければならない。
 前項の職務倫理の基本は、次に掲げる事項とする。
 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。
 人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること。
 規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること。
 人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。
 清廉にして、堅実な生活態度を保持すること。
(服務の根本基準)
第三条 警察職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、その職務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
(法令等の厳守)
第四条 警察職員は、その職務の遂行に当たっては、法令、条例、規則及び上司の職務上の命令を厳守し、その権限を濫用してはならない。
(信用失墜行為の禁止)
第五条 警察職員は、国民の信頼及び協力が警察の任務を遂行する上で不可欠であることを自覚し、その職の信用を傷つけ、又は警察の不名誉となるような行為をしてはならない。
(個人に関する情報の保護)
第六条 警察職員は、職務上個人に関する情報の取扱いが多いことを自覚し、正当な理由なく、職務上知り得た個人に関する情報を漏らしてはならない。
(職務の公正の保持)
第七条 警察職員は、職務に支障を及ぼすおそれがあると認められる金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待を受け、又は職務に利害関係を有する者と職務の公正が疑われるような方法で交際してはならない。

e-gov法令検索「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」より引用、URL、2023年9月3日閲覧

内規

服務規程として明記はされていないものの、警視庁/道府県警察や警察署の中で決められている内規というものも存在します。治安を守る公務員として服務規程に則った規律正しい行動・生活が求められるため、以下のような内規が存在します。

  • 交際相手ができた場合は、その交際相手の実名・住所を書類で届け出た上で、直属の上司に報告して決裁を受ける
    • 結婚相手であれば家族構成等も届け出る
    • 相手の親族に薬物使用の前科者や反社会的組織の構成員がいる場合は、交際・結婚が難しい
  • 友人・知人の交友関係の実名・住所の届け出が必要
  • 自家用車を購入しても届け出が必要
  • 電話番号・メールアドレスの届け出と強制的な調査の受け入れ

守秘義務

国家公務員法や地方公務員法によって「職務上知りえた秘密を漏らしてはならない、退職後も同様とする」という守秘義務が規定されており、違反した者は最高1年の懲役または最高50万円の罰金に処されます。(懲戒免職もされます)

そのため、行きつけの飲み屋で店員や常連客に担当している事件について話をすることはタブーとなっています。

異動

異動のタイミングは主に3月と10月の年2回ですが(他に4月・7月等のケースもあり)、人員不足等の諸事情によりそれ以外のタイミングでも異動が発生します。また、採用された警視庁/道府県警察以外の警察に異動することはありません。出向という扱いで他の警視庁/都道府県警察に勤務することはあるようです。

  • 警部補以下の階級では最短でも2年は異動しないそうです
    • 警部補で3~5年
    • 巡査部長で4~7年
    • 巡査・巡査長だと5年~8年
  • 署長・副署長、課長クラスだと1年で異動することもあるそうです
    • 定年間近の署長がいる警察署は検挙数が上がらないという噂があります
      • 次に来る若い署長のために前年の検挙数の数字が上がらないよう抑えておくという配慮がされているケース
      • そのため若い署長は検挙率に敏感で、署員はそのとばっちりを食うことが多々あるとか

異動は希望もできるようですが、そこは上司からの評価や組織における人員の配置状況や運にもよります。相手部署からのスカウトもよくある話だそうです。例えばその人が「業務上必要だから」と中国語を勉強して検定資格を取得していたりすると、外国人犯罪を扱う組織犯罪対策部からスカウトされたりすることもあるそうです。

  • メモ
    • 縁故地の問題(キャリアの場合)
      • 警察の場合はキャリアの異動に関して縁故地に気を付けているそうです
      • 異動者が警察署長や本部長といった組織を動かせるような立場での赴任の場合、そこで生まれ育っているため地元の人々と深い関係ができており、取り入ってくる人が出てくるため
      • 地元でなくとも過去にその土地で長く働いていた等の事情があれば、そこも縁故地として異動先からは外れる対象になるようです
      • そのため県警本部長は縁故地から外すというのが不文律になっているそうです
    • 北海道警察
      • 稲葉事件(やらせ捜査で覚醒剤を販売していた警察官の事件)の影響を受け、一つの職場に7年在籍/同じ地方で10年勤務をした者は、必ず他の職場/地方へ異動させるルールができているようです
    • 希望して上司の評価も高いものの、希望した異動先に欠員が出ないと配属はされません
      • どこも人手不足のため単なる増員はありえないということのようです

罰俸転勤

罰棒転勤(ばつぼうてんきん)とは、いわゆる嫌がらせの人事を指します。非違事案(いわゆる不祥事)を起こした警察官に対して懲戒処分等を下した上で上層部が「もう警察官として働いてほしくない」と判断すると、その人が到底通うことのできない遠隔地での勤務を命じて自主的に依願退職させるよう仕向ける異動のことです。

  • 東京都足立区在住の警察官が東京都あきる野市五日市警察署の地域課勤務を命じられたケース
    • 片道3時間の通勤
      • 日勤であれば勤務開始時刻の8時30分から1時間早い出勤が習わし
      • そのため7時30分に出勤するためには4時30分に家を出る必要があります
    • その警察官は自宅から通い続けることに絶望し退職願を提出、何の慰留もなく受理されたそうです
    • 依願退職扱いとなり退職金が支払われました

島流し

前述の罰棒転勤や左遷のイメージが持たれやすい「島嶼部を管轄とする警察署」への異動ですが、実際は栄転前のご褒美扱いになるといいます。エリートコースを歩む人材に対して「異動前のハードな部門で頑張ったご褒美」としてリゾート地特有ののんびりとした時間の流れる島の警察署でゆっくり英気を養ってほしいというものでした。

島嶼部の警察署で扱う事件は観光シーズンに男女間トラブルが発生する程度で、1年を通じて殺人や強盗等の大きな事件はほとんど発生しないため「リゾート警察署」として警察官の異動希望先ではトップクラスになっているそうです。

  • 警視庁であれば大島町の大島警察署、小笠原村の小笠原警察署、新島村の新島警察署、八丈町の八丈島警察署が該当します
    • 署員数が100名にも満たない小規模署で、管轄内の島には駐在員も置かれています
    • ごく稀に凶悪事件が発生するものの地元警察署の警察官が捜査に当たることはなく、警視庁で言えば捜査一課の1個班が捜査を引き受けます
      • 「ご褒美を受けている人に仕事はさせない」というわけではなく、人数が少なく濃密になってしまっている島特有の人間関係に警察署員も入り込んでしまっておりフラットな目線での捜査ができないため、ということが理由です
  • 島嶼部の警察署勤務になれば事件の捜査に追われることなく試験勉強に費やせる時間も増えるため、昇任に有利となることも人気の理由の1つだそうです

給与

警察官は公務員であり、公開されている給料表(俸給表とも言う)に基づいて基本給が決定されて支払われています。その給料表にはいくつか種類があり、警察官が適用されているのは「公安職」という給料表となります。

東京都人事委員会ホームページ「公安職給料表」より引用、URL、2020年5月2日閲覧
  • 表の見方
    • 行にあたる「号給」が勤務年数に応じて昇給していく給料
    • 列にあたる「級」が警察においては階級や役職に当たるもの
      • 警視庁なら号給は勤務評定(勤務成績や態度等)が普通なら、1年で4号ずつ上がるらしい)
  • 級と階級・役職の関係
    • 巡査が1級から始まり、巡査長、巡査部長、警部補、警部等、課長補佐等、警視等、課長・署長等となっているようです
  • この給与(本棒とも言う)が基本給となり、それに様々な手当がついて実際の給料(総支給額)となります

階級ごとの平均年収(おそらく手当等を含んだ金額)

  • 巡査:約570万円
  • 巡査部長:約630万円(45歳高卒の巡査部長で925万の例もあり)
  • 警部補:約660万円
  • 警部:約720万円
  • 警視:約780万円
  • 警視正:約1,000万円
  • 警視長:約1,100万円
  • 警視監:約1,200万円
  • 警視総監:約1,500万円

初任給

以下は警視庁の例です。

  • I類採用者(大卒)
    • 247,400円
  • II類採用者(短大卒相当)
    • 227,200円
  • III類採用者(高卒)
    • 208,600円

ボーナス

年2回で給料月額の3.95ヶ月分だそうです。

手当

以下は長野県警察の例です。

  • 刑事手当
    • 私服員として犯罪の予防、捜査、犯人を逮捕した警部以下の警察官
    • 560円/日
  • 留置業務手当
    • 被疑者の看守や護送などをした警察官
    • 340円/日
  • 警ら手当
    • 警ら作業を行った警察官
    • 340円/日
  • 航空業務手当
    • 航空機を操縦した警察職員
      • 5,100円/時
    • 航空機の整備作業を行った警察職員
      • 1,380円
    • 航空機に搭乗して捜索、救難などの作業をした警察職員
      • 2,200円/時
    • 航空機から投下して捜索作業にあたった警察職員
      • 870円/日
  • 術科手当
    • 柔道、剣道、逮捕術などの指導にあたった警察職員
    • 310円/日
  • 爆発物等取扱手当
    • 実験用爆発物の製造、解体などの作業をした警察職員
      • 620円/日
    • 特殊危険物質による被害の恐れがある区域で作業にあたった警察職員
      • 310円/日
  • 死体処理手当
    • 死体の処理作業にあたった警察職員
      • 3,100円/体
    • 東日本大震災の対処で死体を取り扱う作業にあたった警察職員
      • 2,000円/日
  • 銃器犯罪捜査手当
    • 銃器が使われる恐れがある現場で作業した警察官
    • 1,640円/日
  • 夜間特殊業務手当
    • 深夜(22時~5時の間)に特殊な業務を行った警察職員
    • 1,100円/回
  • 緊急呼出業務手当
    • 正規の勤務時間外に呼び出されて作業にあたった警察職員
    • 1,240円/回
  • 潜水手当
    • 潜水器具を着用して潜水作業をした警察職員
    • 1,500円/時間
  • 特殊現場作業手当
    • 福島第一原発周辺で作業にあたった警察職員
    • 20,000円/日

交通費

自宅から所属している警察署や警察本部への通勤に対しては支給されますが、それ以外の交通費については基本的に支給されないそうです。捜査で必要になった交通費を申請しても「捜査上で本当に必要かどうか」が厳しくチェックされてしまい、多くは認められないそうで諦めて実費にしているケースが多いとか。

  • 捜査上必要だと認められるのは被疑者尾行等、一部のみ

支出

警察学校で初任科を受けている時代は寮生活であり、卒業して配属された後もほとんどは独身寮での生活、寮費は食事付きで月に2~3万円程度(光熱費含む)のため、給料のほとんどは自分の好きなように使えます。

そのため貯金しようと思えばかなり貯められるらしく、中には20代で1,000万円貯金する人もいるそうです。(結婚を奨励される風習もあって自宅購入を目標に貯金する警察官も多いとか)

女性警察官

  • 以前は婦人警察官(略して婦警)と呼ばれていたものの、男女雇用機会均等法の影響で「女性警察官」と呼ぶようになった経緯があります(略称は女警)
  • 平成30年時点で全国の警察官に対して女性警察官の割合は9.4%
    • 平成30年の都道府県警察の定員数は288,800人なので27,147人程度が女性警察官
  • 平成29年度の新任巡査の女性の割合は17.8%
    • 警察官10人のうち2人程度は女性警察官となる
  • 年々、女性警察官の割合は増加傾向にあるそうです

暮らし/日常

独身寮

警察署まで徒歩で通える範囲にあるか、中には警察署の敷地内や同じ建物内というケースもあります。警察では独身寮のことを「待機所」や「待機宿舎」と呼ぶこともあります。

かつての独身寮は8畳間に3名が居住しトイレも浴室も共同という状況だったそうですが、最近は改善されてエアコン・バス・トイレ完備のワンルームタイプに1名で住むケースが増えてきました。

しかしながら警察署に近かったり警察署内にあったりしてプライベートの確保はほとんどできず、それに関係する以下のような悩みも多いそうです。

  • 先輩や上司が勝手に入ってきて酒を強要させられる
  • 夜勤明けなのに先輩に使い走りをさせられた
  • 休みなのに警察署の雑用を手伝わされた

良く行く飲み屋は独身寮近くの居酒屋で、同じ警察署の先輩後輩たちもいることと常連の素性もはっきりしていて安心して過ごせる場所になっているそうです。

官舎

結婚した警察官は独身寮を出る必要があり、次に住む場所として賃貸住宅やマイホーム以外にも官舎という選択肢があります。

基本的には抽選になるそうですが、都心の3DKで家賃が月3万円台という物件がザラという大きなメリットがある一方で、警察官同士の近所付き合いに家族も巻き込まれ共有スペースの掃除や草むしり等もしなくてはならないというデメリットも多いそうです。(特に男性警察官と結婚した一般人女性は、上司や同僚の妻に気を使って疲弊するとか)

警察官であればよほどのことがない限り住宅ローンが100%通るため、一般人と比べた場合にはマイホーム購入のハードルも低いそうです。

上司との関係

上司は部下の健康状態や家の問題、悩み、貯金等まで把握し、目配りしています。それは若い警察官たち(高卒や大卒)が社会経験を積んでいないため社会常識を身につけさせる意味合いと、彼らが道を間違えたり非違事案を起こさないようにという指導も兼ねているからです。

  • 一般人から見ると、相手がたとえ若い警察官であっても敬語を使ったり気を使って対応したり恐れたりするはずです
    • 若い警察官としてはそういった対応をされているうちに「自分は偉いのだ」「一般人とは違う」等と勘違いするケースが多いそうです
    • これが「制服に着られている」と揶揄される状態です

そういう若い部下を上司が飲みに連れていったりして一般社会での作法を教えたりしながら、親代わりとして接します。また、若い警察官(特に男性)は女性と知り合うチャンスが少ないため、上司が警察関係の医者や看護師、地元の保育士などを招待してボーリング大会等のイベントを開催して交際のチャンスを作らせていることもあるようです。

  • それは「結婚して家庭を持てば責任感のある大人になれる」という説が根付いているからです

ひと昔前であれば、そうして結婚した警察官は仕事優先で家庭を顧みずに離婚することも多かったようですが、時代の変化もあって昨今ではそうならないよう配慮してくれる上司も多いそうです。(子供の行事がある時はその数時間だけ「いいから行ってこい」と仕事を抜けさせてくれたりするそうです)

先輩との関係

体育会的な側面があるのか、たとえ自分のほうが年上/階級が上だったとしても先輩を敬う文化があるそうです。(相手が幹部の場合で、それが巡査長あたりのゴンゾウだとしたらまた別になるようです)

休日

原則として交代制の職場であれば4週間に8日間、日勤の場合は土日が休日となっています。他にも年末年始や有給、結婚や出産等の特別休暇等もあります。

しかしながら実体としては原則通りに休日が過ごせてはいないようで、勤務時間内に終わらなかった書類の作成作業等を休日を使って何とか職務を全うさせているのが現実です。

  • なお、旅行には様々な届け出が必要になってきます
    • 以下は警視庁警察職員服務規程と内規の例です
      • 37条、休日でも管轄外地域に出る時や日帰り旅行には届け出が必要
      • 38条、休日でも自宅以外に宿泊したり、2日以上の旅行の時は所属長の承認が必要
      • 内規、休日でも車で旅行する時は署長の承認が必要
  • 小話ですが、警察官はその性(さが)として休日中に被疑者を見つけた場合は追跡してしまうことが多いようです
    • 指名手配犯は休日の繁華街で偶然発見されることがあるため
    • 警察法第65条によって、警察官はいかなる地域においても刑事訴訟法第212条に規定されている現行犯の逮捕が可能となっている

恋愛事情

公務員であるためためかつては見合い結婚が多かったものの、現代においては一般人と同じで、結婚をすれば真面目になり仕事に勤しむはずという文化もあって全体的に早婚奨励の気風があります。

恋人や婚約者がいる場合は警察学校を卒業後にほどなくして結婚というパターンが多く、そうでない警察官は警察学校や職場で出会った女性警察官と結婚したり、配属先の先輩や同僚に紹介してもらったり合コンに出たりと、一般人と変わらない感覚で恋の相手を求めて活動しています。

そこには男性/女性問わず様々な悩みがあります。

  • 「勤務時間が不規則」というイメージがあるため、一般人の場合は警察官との交際を避けたがる風潮があります
    • そのため職場結婚が増えてきているようで、2016年の調査では警視庁所属の女性警察官の85%が同じ警視庁の男性警察官と結婚しているというデータが出たそうです
    • 警察官の男女比は圧倒的に男性が多く、全体の5%程度の女性を奪い合う熾烈な争いとなっています(女性が選べる立場)
  • 異性との交友関係は厳密にチェックされます
    • 内規として交際相手の実名・住所を届け出る義務があり、書類で直属の上司に報告して決裁を受ける必要があります(この記録は最終的に人事一課にまで決裁が回され人事記録に記載されて半永久的に残るそうです)
    • 若い男性警察官はアルコールと異性問題で失敗しやすく、敵対勢力の女性が言い寄ってくる、いわゆる「ハニートラップ」に引っかかりやすいそうです(組織に取り込んで捜査情報を提供させたり、都合よく使うため)
    • そういうトラブルを避けるため、若い男性警察官の交際相手を上司がチェックし問題ないと判断すると一刻も早い結婚を迫られるそうです(それが早婚奨励に繋がったのかもしれません)
  • ハニートラップを受けやすい代表的な部署
    • 組織犯罪対策部:相手が暴力団や反社会的な組織であるため
    • 公安部外事担当者:海外のスパイ等から

敬礼

敬礼や礼式は法令で定められたものがあります。その中でも敬礼は日常的に行われるもので、制帽着用時と無帽時で異なり、制帽着用時は右手指先が右目の近くに来る形をする挙手の敬礼をし、無帽時は体の上部を前に15度傾けた敬礼をします。

なお一般人が警察官に敬礼をした場合は、必ず答礼をする決まりとなっています。

Youtube「【警察官も敬礼】山形出身元警察官が伝授!意外と知らない本場の敬礼の方法」より引用、URL、2023年9月3日閲覧

殉職

平均すると年間10名程度が殉職しているそうです。警察制度ができた明治初頭~2010年末までの間では約5,500名が殉職しています。その最も多い理由としては被疑者追跡中の交通事故だそうです。

殉職時には二階級昇進します。退職金や弔慰金は二階級特進した階級で遺族に支払われることになります。

退職

退職の理由は一般人とそう変わりません。新人警察官の退職理由の1つが「理想と現実のギャップ」とされています。ドラマや小説に登場する刑事に憧れて警察官になったものの、警察学校を出て配属された地域課で一般人からの理不尽なクレームや悲惨な事件の対応、先輩・上司からの叱責等を受けて心身ともに疲弊してしまい退職してしまうというものです。

また借金も退職の引き金となります。寮生活で様々な手当もあることから自由にできるお金があることと、仕事のストレスからギャンブルにハマる警察官も少なくなく、歯止めが効かなくなった末に首が回らなくなりあちこちに借金を作ってそれが監察にバレて……というケースもあります。

  • Google等で検索すると山ほど出てきます
  • 広島中央署8572万円盗難事件の被疑者となった警部補は競馬にのめり込み、消費者金融や同僚から総額約9,300万円を借りていたそうです

退職金については年齢や階級で異なると思いますが、平均2,400万円程度だそうです。

呼称

古いマンガやドラマ等の作品では「本官」を使っているのを見かけましたが、現代において実際はどうなのか調べてみました。

  • 一人称
    • かしこまった場や相応の相手に対しては「本職」を使用します
      • 「本官」はもう使われていない一人称のようです
      • 少し自分を卑下するなら「小職」が使われます
    • 仲間内での会話ならその個人が使っている一人称が使われます
  • 二人称
    • かしこまった場であれば相手を「貴職」と呼びます
    • 例「貴職にあっては旺盛な注意力をもって不審者への職務質問を徹底するとともに、受傷事故の防止に万全を期されたい」

教養

警察の業務において、例えば職務質問や事件捜査、交通指導に取締り等、それらの仕事がうまくいくか否かはその警察官の知識と経験に大きく影響されます。また警察官は街頭における法令の執行者であり、その業務は個人の権利や義務を変動させるためその取扱いに誤りがあってはならない仕事でもあります。

そのためにも関連する知識を教養として頭に叩き込んでおき、様々なケースに遭遇しても適切に対処できる力を養うことが大事だです。そういった警察業務における技術・技能を体得させて実践力として身に着け活躍してもらう意図として警察組織の中で「教養」が行われています。

教養には様々な種類があるようですが、ここでは以下の3つについて調べた内容を記載しています。

  • 初任教養
    • 採用試験に合格して採用された新人警察官が受ける教養です
    • 全寮制の警察学校に入校し、座学・訓練を通じて警察の業務を学んでいきます
  • 学校教養
    • 本人の希望や所属部署からの推薦により1週間~1ヶ月程度の研修を受けるもので、大きく「任用科」と「専科」に分かれます
  • 職場教養
    • 実際の職場において指導官がついた状態で教わるものです

初任教養

採用試験に合格して採用となった瞬間からその人は警察官となっています。しかし採用後すぐに配属され現場で働き始めるわけではなく、民間企業と同じように新人研修を受けて業務に必要な知識や技術を学んでから働き始めることになります。

この新人研修のことを警察では「初任科」や「初任教養」と呼んでいて、採用された人は「初任科生」として警察学校に入校して初任教養を受けます。

この初任科を終えると実際の警察署へ配属され、そこで職場実習を3ヶ月半程度行います。その後、再び警察学校へと戻って「補修科生」となり、今度は「初任補修科」または「初任補修教養」と呼ばれる仕上げの研修を受けます。

その研修を終えると警察署へと配属され、地域課の交番で働き始めることになります。

  • 採用された瞬間から警察官であるため、警察学校で学んでいる間も給料が支払われることになります
  • 初任科の期間は採用の種類(I類・II類・III類)によって異なります
    • 大学卒業程度のI類は6ヶ月
    • 専門学校卒業程度のII類、高校卒業程度のIII類は10ヶ月
  • 初任科生はそれぞれの教官(警察学校の警部補)の名前を冠した「○○教場(きょうじょう)」に所属します
    • 教場はクラスの位置づけ
    • 教場は教官と助教(警察学校の巡査部長)が受け持ちます
    • 初任科生にも以下のような役割が与えられます(それ以外にもある模様です)
      • 場長:クラスの委員長にあたる
      • 勤務割副場長:クラスの人事担当にあたる
      • 会計副場長
      • 剣道係
  • 教官・助教が初任科生を観察して「お引き取り願う」ケースも多々あるそうです
    • 普段の言動、入校期間中の面会者との会話、手紙や電話の内容について密かにチェックされ、それを元に思想・交友関係が調査されて、平常点として記録されるそうです
    • 学科や実技の成績とは別に、この平常点も警察官人生に一生ついて回ります
    • 「警察官に向かない人間をふるい落とすのが警察学校」とも言われているようです

入校

基本的には4月または10月の入校となります。全寮制のため自宅が警察学校から近かったとしても自宅から通うことはできません。また携帯電話やスマホのたぐいは全員取り上げられ、入校中は恋愛禁止となります。

施設

千葉県警察の警察学校の施設紹介を参考に施設に見取り図を起こしてみました。(実際の縮尺とは合っていません)

参考資料にあった別の警察学校の見取り図は以下です。

  • 校舎には授業を行う教場や講堂、図書室等があります
  • 体育館では柔道・剣道・逮捕術等の授業が行われます
  • グラウンドでは集団行動の訓練・警備訓練・バイク実習等が行われます
  • 寮には寮生の部屋、談話室・自習室・浴場・食堂・売店等があります
    • 千葉県の警察学校には女性専用の談話室・自習室・浴場がありました
    • 理髪店やクリーニング店もあるそうです
    • 食堂の食事は健康に配慮されたもので薄味らしく、売店のカップラーメンが大人気だとか
  • 模擬家屋は鑑識の授業に使われるもので、指紋採取や足跡採取の訓練に使用されます

一日の流れ

一日の過ごし方です。以下の表は岩手県警察の例や他の文献を参考に作成しました。

時刻プログラム内容
6:30起床
6:40日朝(にっちょう)点呼点呼の後にグラウンドで国旗掲揚し、体操をしてからランニング、清掃
7:30朝食
9:00ホームルーム校長による訓話や教官からの指示・連絡
9:30授業1~2時限目の授業
12:00昼食
13:00授業3~5時限目の授業
18:00夕食・入浴
18:30自主活動自由時間、体力向上のための運動や授業の予習・復習等
22:00清掃寮の清掃
22:30日夕(にっせき)点呼
23:00消灯

授業

教室で行われる座学の授業や実習などの教養、グラウンドや体育館で行われる術科(じゅつか)と呼ばれる訓練があります。

教養は、警察官の職務の根拠となる憲法や各種法律、実際の事件・事故現場における対応方法、書類の作成方法や捜査時の写真撮影、指紋・足痕の採取等の鑑識技術について座学と実習で学びます。

  • 職務倫理
  • 法学
    • 憲法
    • 警察行政法
    • 刑法
    • 刑事訴訟法
    • 民法
  • 実務
    • 生活安全
    • 地域
    • 捜査・鑑識
    • 交通
    • 警備
    • 情報通信
  • 一般教養
    • 国語
    • 英語
  • その他
    • 都道府県内や管轄内の繁華街の歴史や現場についても学ぶことがあるそうです

術科は体を使った訓練を指します。柔道または剣道のいずれかを選んで卒業までに段位を取得するとともに、被疑者の制圧に必要な逮捕術の訓練や、体力向上のためのトレーニング、配属された地域課で乗りこなすためのバイクの運転方法等を学びます。(拳銃については実際に射撃訓練も行い、現場での適切な使用要件等も学びます)

  • 柔道・剣道
  • 逮捕術
  • 拳銃
    • 拳銃使用の法的根拠、理論面の講義、実射訓練
  • 救急法
  • 体育
  • 教練・警備実施
    • 10kgの装備を着けて1時間走らされることもあるらしいです
  • 自動二輪技能訓練

卒業

警視庁警察学校の卒業式では、警察礼服に身を包んだ総代の学校生が警視総監の前で服務の宣誓を行っていました。「何物にも囚われず、何物をも憎まず、良心のみに従って、公正に警察職務の遂行に当たることを厳粛に誓います」(この文言は警視庁警察職員服務規程に基づいたもの)

卒業式の挨拶は本部長が訓示を行います。卒業式はその日の午前に行われ、午後には配属先の警察署に赴任します。(身上調査票と初任科の成績順位が入った茶封筒を手にして)

配属先の警察署では署長と面会して着任を申告し、どの交番に配属されるのか一人一人辞令を受けます。これを卒業配置(略して卒配)と呼ぶそうです。

退学

兵庫県警察では過去10年に採用された警察官のうち1割が警察学校在籍中に退職していたそうです。(2010年時点)

警察学校あるある

同じ教場の同期が何かヘマをやらかすと、腕立て100回やランニング、外出禁止等の罰を連帯責任で取らされるそうです。(お菓子を隠し持って食べていた等)

学校教養

現場を1ヶ月間ほど離れ実務を一切免除された状態で警察学校で受ける教養です。この学校教養が行われる場所は警視庁/道府県警察の警察学校ではなく管区警察学校となります。

  • 管区とは「管区警察局」のことで、全国を東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州の6つに分けて管轄する警察庁の地方機関です
    • 各管区警察局にそれぞれの府県警察が所属しています
    • 北海道警察と警視庁はいずれの管区警察局にも所属していません
  • 関東管区警察局には関東管区警察学校があって、その所在地は東京都小平市でした
  • 警部補以下は生徒、警部以上は学生と呼ばれます
  • 初任科と同じように全寮制となり、座学(講義・ゼミ)、実技・実習があります

学校教養で受ける内容としては、主に「任用科」と「専科」に分かれています。

  • 任用科
    • 巡査部長や警部補等への昇任後に現場を一定期間離れて警察学校に入校し、それぞれの階級における教養を受けるのが「巡査部長任用科」や「警部補任用科」という教養です
    • 昇任時には必ず受けて卒業しなければなりません
  • 専科
    • 階級に関係なく行われるもので(主に中堅幹部が対象)、一定の専門知識・専門技能について教わるスペシャルコースです
    • 「刑事組織犯罪対策任用科」「交通捜査任用科」「生活安全捜査任用科」「公安任用科」「職務質問専科」「警護専科」等の専門的な教養や、IT技術についてのコースもあるそうです(法改正に伴って色々な専科が開設されたりもしているそうです)

職場教養

民間企業で行われているOJT(On-the-Job Training、職場で実務をしながら行う教育)のイメージで、技能指導官・技能指導員(あるいは指導部長(指導する巡査部長)・指導係長(指導する警部補))が、警察署や交番で一緒に同行しながら指導したりロールプレイングを実施したりするそうです。

技能指導官

警察官として「優れた職人」を賞揚するために設けられた名誉の称号です。(いわゆる「○○の神様」「職質の○○」「落としの○○」等)

  • 技能指導官の条件は以下
    • 特定の専門分野における15年の修練
    • 年齢が45歳以上
    • 基本的に階級は関係ないそうですが、技能指導官と呼ばれる場合は警部、技能指導員と呼ばれる場合は警部補以下であるケースが多いそうです
  • 技能指導官の中でもさらに優秀な警察官は「広域技能指導官」になります
    • 全国各地の警察に出向いて教養を行う
  • 技能指導官の専門分野の代表例
    • 性犯罪捜査、窃盗犯捜査、火災事件捜査、金融事件捜査、指紋鑑識、足跡鑑識、取調べ、聞き込み、検視、薬物捜査、職務質問、通信指令など
    • 例として、警視庁刑事部鑑識課で指紋担当管理官を務めたある人物は、警察庁指定広域技能指導官として全国警察の指紋鑑定指導に当たったそうです

指導方法としては、所轄警察署の会議室を使った座学やゼミの講義スタイルであったり、警察学校や所轄警察署で現場設定をしたロールプレイング、または実際にペアで現場に出向いて指導する同行スタイルもあります。

術科

柔道、剣道、拳銃射撃や白バイ運転等の、警察官の任務遂行に必要な肉体を使う技術のことを術科と呼んでいます。

警察学校の初任科で訓練を受けるこの術科については、卒業して現場に出てからも定期的にチェックされ教養と同じように一生訓練を続けていくものとなります。

逮捕術

警察官が任務遂行時に相手を最小限の攻撃で制圧し、逮捕、連行するための格闘術を逮捕術と呼んでいます。相手の攻撃を躱しながら急所を攻め、武器を奪って倒し、体の自由を奪って手錠を掛けて連行するまでの一連の動作を修得します。

YouTube「関東警察逮捕術大会決勝戦~山梨県警察優勝(H27.10.6)」より引用、URL、2020年5月25日閲覧

動画にもあるように訓練では柔道着に剣道の面・胴・小手、股当てを着用して素手や短刀、警杖等を使って練習を行います。警察学校の初任科では2人1組になり、最初は相手との殴り合いをさせて恐怖心をなくす訓練から始まるそうです。

  • 相手の急所を攻撃
    • 前突き、胴突き、前蹴り
  • 相手の攻撃を躱して手の自由を奪う
    • 小手返し、受け止め
  • 制圧して手錠をかける
    • 前固め、後ろ固め

手首を上から押さえつけて両手を封じるのが効果的らしいです。(手首だけで下から持ち上げるのは至難の業であるため)

装備

制服を着用し様々な装備品を着けながら勤務に就きます。着衣は防刃ベスト等もあるため3kg以上、装備品は4kg以上もあって非常に重たいようです。

警察官の制服と装備

実業之日本社/オフィステイクオー「刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる 警察入門」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧

活動服

活動服(上着)

三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧

活動帽

三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • 活動服
    • ジャンパー生地+ジッパー式で動きやすい
    • しかし略装の扱い
    • そのため着用機会を厳しく制限する警察本部もあるそうです
  • 活動帽
    • 軽くかさばらないキャップ型
    • 警察本部によっては日常外勤での着用がNGのケースもあるようです

夏用

  • 上着がなくワイシャツのみ
  • しかし防刃ベストを着用するため涼しいわけではないようです
  • 長袖と半袖があってどちらを着用するかは選ぶことができます

冬用

  • 冬用の制服は警察官の正装の位置づけで、各種式典でも着用します
  • 生地は厚いが防寒性はいまいちだそうです

制帽

  • 着用義務があって基本的には脱がないようです

胸章

階級章

和歌山県警察ホームページ/警察手帳等の紹介「階級章と識別章」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • 左胸に着けているバッヂが胸章で、その中に識別章と階級章が含まれています
    • 識別章(バッヂの上半分)
      • 素材は樹脂
      • 識別番号の部分はスライド式で着脱できます
      • 識別番号はアルファベット2桁+番号3桁
        • アルファベット2桁:所属組織
        • 番号3桁:所属組織における番号
          • 警視庁・刑事部・捜査第一課・課長:GB010
          • 警視庁・荒川警察署・署長:SG001

  • 階級章(バッヂの下半分部分)は、同じ階級ならどれも一緒
    • 素材は金属
    • 上記の階級章は巡査のもの
    • 葉に囲まれた日章があしらわれている
      • 日章は旭日章、朝日影、桜の代紋とも呼ばれている
  • バッヂの上半分は識別章
    • 素材は樹脂
    • 番号票はスライド式で着脱できる
    • 識別番号はアルファベット2桁、番号3桁
    • 警視庁の例1)
      • 警視庁・刑事部・捜査第一課・課長:GB010
      • 警視庁・荒川警察署・署長:SG001

腕章

  • 警察官は事件現場での臨場時に腕章を着けることが多いです
    • 制服・活動服の場合は他の警察官に自分の役割を分かってもらうため
    • 私服の場合は一般人との区別をするため
  • 所轄署の場合は「○○署」「捜査」のような表記、鑑識は見れば分かるから腕章なし?
  • 本部の場合は「一機捜(第一機動捜査隊)」「公機捜(公安機動捜査隊)」「捜一(捜査一課)」「鑑識課」など
  • 幹部の場合は「○○署長」「捜一管理官」「捜一理事官」

警察手帳

警察手帳

千葉県警察ホームページ「キッズコーナー(警察手帳)」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • 2002年10月1日から折りたたみ式のバッヂタイプに変更されました
  • 左胸のポケットに仕舞っていて、これを出す練習もしています
  • 「手帳」とありますがメモを書く場所はありません

手錠

  • 現行型はつや消し黒の軽量ジュラルミン製です

無線

  • PSW型無線
    • 「Police Station Walkie talkie」の略
  • Pフォン/ポリスモード
    • 一見すると普通の二つ折りの携帯電話
    • 機能
      • 一般の携帯電話と同じように写真・動画の撮影が可能
        • 画像は通信指令本部やリモコン室に送信されます
        • 画像を受信したリモコン室が関係する警察官・捜査員のPフォン/ポリスモードに画像を一斉送信します
      • 5人同時に会話可能
      • 110番通報の内容・緊急速報掲示板がメールで参照可能
      • メニュー画面で地図情報を選択すると、事件現場の地図が表示されます
      • GPSにより所持する警察官・捜査員の位置情報も把握できます
    • 導入
      • 警視庁では2011年に本格配備された
      • 2008年の秋葉原無差別殺傷事件の現場で混線した無線の代わりに携帯電話が活用されたことによって導入されたそうです
    • 他の道府県警察でも同様の携帯端末が地域警察官・捜査員に配備されています
      • PSD形データ端末
        • Police Station Dataの略称

拳銃

警察官は自分専用の拳銃を1丁貸与されます。警察署に配属された時に貸与され、異動するまでは同じ拳銃を使うことになります。

  • 拳銃の保管・持出しについて
    • 警察署の中には署員の拳銃を保管している「拳銃保管庫」があります
      • 昼間は副署長が、夜間は当直主任が鍵を所持しています
      • ズボンに結びつけて肌身離さず持ち歩いています
    • 拳銃の携帯命令が出たら保管庫に行き「〇〇番、××です」(××は氏名)と告げて拳銃を受け取ります

警察官の中で拳銃を常時携行しているのは、交番・パトカーの警察官、機動捜査隊です。他の警察官(例えば刑事)は被疑者の逮捕や家宅捜索のさいに携行することがあるそうです。

  • 拳銃の携行について
    • 警棒も持っていくそうです
    • 暴力団事務所・薬物常習者・外国人犯罪者等に対して逮捕や家宅捜索をする場合は必ず拳銃を携帯するそうです(全員なのかそのうち1人なのかは上司の判断)

拳銃の手入れは自分で行います。手入れをする日にちは決まっていて、手入れのさいは引き金を引かないよう安全ゴムをつけて行うそうです。(この「安全ゴムは警察官同士の下ネタで使われるとか)乾拭きをして射撃訓練時には銃口に油を差して拭き取るそうです。

拳銃の種類

サクラ


三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧

三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • サクラ(M360J)
    • S&W M360モデルをベースにした日本警察独自のモデル
    • 2006年より調達されています

スミス&ウェッソン

三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • S&W M37
    • 現在は調達中止

ニューナンブ

三才ブックス「警察マニアックス」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • ニューナンブM60
    • 1960年から使用されていた国産拳銃、現在は調達中止

拳銃の貸与・使用に纏わる規程

拳銃の貸与・弾丸の交付
  • 拳銃の貸与
    • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第19条(拳銃の貸与)
      • 総務部長は、所属長に対しあらかじめ数を定めて拳銃を一括して貸与する
      • 所属長は貸与された拳銃の中から所属警察官に対し、拳銃を貸与する
        • 貸与する該当者がいない場合、その拳銃は所属における保管(所属保管)を取り扱い責任者に命じる
      • 所属長は拳銃を個人に貸与する必要が生じた場合、所属保管の拳銃がない場合は、別記様式第3号によって総務部長に貸与の上申をする
  • 弾丸の交付
    • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第20条(弾丸の交付)
      • 総務部長は、所属長に対しあらかじめ数を定めて拳銃の弾丸を一括して貸与する
拳銃の保管
  • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第21条(命令保管)
    • 管理責任者は、規範第18条第2項各号に定める場合及び負傷、疾病、講習その他の地涌により20日を超えて拳銃を携帯しない者がいる場合は、取り扱い責任者に保管を命ずる
  • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第22条(依頼保管)
    • 警察官は、拳銃等を携帯しない場合、取り扱い責任者に保管を依頼する
    • ただしこれによりがたい場合で、所属長が別に定める場所で保管する時は、所属長はあらかじめ主管部長、総務部長(装備課装備第三係)及び警務部長(人事第一課監察係)と協議して定めた場所とする
    • 拳銃の保管を依頼する場合は、別記様式第4号の拳銃配置一覧表と確認の上、別記様式第5号の拳銃整理票と引き換えに行うものとする
  • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第23条(拳銃の保管方法)
    • 取り扱い責任者は、拳銃を保管する場合、弾丸を抜いて銃架に掛けて格納庫に保管する
    • ただし、格納庫の構造等によりできない場合は、銃架を用いないで保管することができる
    • 本署当番員(宿直員及び当直員を含む)の拳銃を保管する場合は、銃弾を装填等したまま、あらかじめ所属長が指定した格納庫に保管するものとする
  • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第28条(拳銃被貸与者の異動及び現在数報告)
    • 所属長は、毎月の拳銃被貸与者の異動状況並びに毎月末時点による拳銃および銃弾の数を、翌月5日までに総務部長に報告する
  • 警視庁警察官けん銃使用及び取扱規程 第29条(拳銃貸与カード)
    • 所属長は、拳銃貸与カードを保管し、所要事項をその都度記録する
拳銃の使用
  • 警察官職務執行法 第7条
    • 警察官は、犯人の逮捕もしくは逃亡の防止、自己もしくは他人に対する防護または公務執行に対する抵抗の抑止のため、必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ、合理的に必要とされる限度において武器を使用することができる
発砲後の報告
  • 警察官職務執行法 第10条
    • 警察官は訓練以外で拳銃を撃った時(盲発を含む)は、直ちに以下を所属長に報告する
      • 使用の日時および場所
      • 使用者の所属、官職及び指名
      • 人に与えた危害
      • 使用の理由及び状況
      • 事案に対する処置
      • その他参考事項(拳銃の名称、型式、口径、銃身長及び番号)
    • 命令を下した部隊指揮官が所属長に報告する
    • 所属長は所轄庁の長(警視庁なら警視総監)に報告
    • 所轄庁の長は、拳銃発砲で人に危害を加えた事案については、警察庁長官に報告する

その他

  • 印鑑
    • 交通取り締りでは手続きのため書類や交通切符を書く場合に押印が必要になるため
  • 切符かばん・警笛
    • 交通取締り・整備で必要になります
  • 白手袋
    • 鑑識のさいに必要となります
  • 懐中電灯
  • POT
    • 警察官携帯式車両検索器
    • 対象車両のナンバーや特徴について、ホストコンピューターに登録されたビッグデータと瞬時に照会できます

勤務

基本的には公務員なので週休2日制となっていますが、6~8日に1度は当直勤務があり、その翌日も早くて昼過ぎ、遅いときは17時過ぎまで勤務しているのが実情です。交番勤務になると3交代制(警視庁は4交代制)での勤務になります。

  • 勤務あるある
    • 担当している事件があると休日出勤しての捜査は当たり前になります(だいたい月4日の休み)
  • 当直日以外は日勤なので事件がなければ18~19時頃には退庁します
    • 捜査本部が設置されると事件によっては22~23時まで聞き込みをし、その後に捜査本部へ戻って報告書を作成し報告します
    • その頃は終電が過ぎていてタクシーは自腹なので、警察署に必ずある柔道場に布団を敷いて寝ることになります
      • 数十人分の布団が用意されています
      • 風呂も隣接されているため1ヶ月連続で柔道場に泊まっている猛者もいるそうです
  • 呼び出しがあります
    • 休日・夜間関係なく重大事件が発生すると呼び出しがかかります
    • 家族旅行中でも自腹でキャンセル代を払って出勤します
  • 士気を上げるための飲み会が多いそうです
    • 捜査本部ができてチームで捜査をしている時
    • タイミングは以下
      • 帳場(捜査本部)の立ち上げ
      • 中間慰労
      • 起訴祝い
      • 余罪件数
      • 解散式
    • ○○強化月間が始まる場合は「団結式」
      • ホテルを借りたりもするそうです
      • 目標達成の暁には打ち上げも
  • 「食べられる時に食べておけ」
    • 警察学校でも教わることのようですが、事件・事故は立て続けに起きたり発生することも少なくないため、余裕だろうと高をくくっていると食事ができずに空腹で何も考えられなくなったり動けなくなったりしてしまうことがあるそうです
    • ベテランの警察官と配属されたばかりの新人警察官の間ではよくある会話だそうです
      • 「よし今のうちに食べておけ」「いえ、自分はまだできます。パトロールしてきます」「警察学校で何を教わったんだ?食べられる時に食べておけ。動けなくなってからじゃ遅いんじゃぞ」

捜査協力者

ドラマ等に出てくるような情報提供を生業としている情報屋はほとんどおらず、警察官が裏社会と繋がりのある人物と日頃から付き合いをしていって情報屋に仕立て上げているのが実情だそうです

  • 「S」について
    • そういう存在を「S」と呼んでいます
      • スパイのSだったり捜査協力者のSだったりと由来はまちまちだとか
  • Sに対する信頼度に応じて依頼する内容も異なってきます
    • 単に情報を得るだけの相手がほとんどです
    • 信頼度が高い場合は事件に関わりのある盗品を購入してきてもらうこともあるそうです
  • 謝礼は5,000円程度
    • 「捜査協力費」という名目で経費にできるケースもありますが、それには領収書が必要であり、Sが領収書を出すわけもないため基本的にポケットマネーとなるそうです

Sの素性によってはただ情報提供してわずかばかりの謝礼を受け取るだけではなく、自分たちの仲間や犯罪に影響がないように警察からの情報を得ている面もあります。もちろん警察官側もそれは承知の上で薄い情報や誤った情報を渡す等、水面下での駆け引きをしているのが実情です。

檀家

地域に密着した人物・労働者と仲良くなって近隣住民の情報を得ることが多いです。ガソリンスタンドの店員やタバコ屋のおばちゃん等。

  • 「檀家」について
    • そういう存在を檀家と呼んでいる
    • 旅行に行った時は手土産などを持参して親睦を深めていく(これを「檀家まわり」と呼んでいます)
    • ○○のことなら××さんに聞けばいい等の繋がりを増やすそのきっかけになる存在

  1. Yahooニュース/「キャリア警察官」を中途採用へ 多様な人材確保のため警察庁が新たな試み 採用試験は「警察庁独自」、URL、2023年10月5日閲覧 ↩︎