[警察小説メモ] 業務

警察には様々な業務があるものの、ここでは四現業と呼ばれる生活安全・刑事・交通・警備に加えて、いわゆる街のお巡りさんである地域、そして警察の警察と呼ばれている監察について調べた業務や豆知識的な内容を纏めています。

生活安全

四現業のうち「刑事が扱わない」ような街で起きる犯罪・事案の対応や防犯活動、その他にも風俗営業許認可等を行っています。主な業務は以下です。

  • 防犯
    • 特殊詐欺、侵入窃盗、性犯罪等の各種犯罪に対して自治体・学校・団体/企業と連携しての防犯活動
  • 生活安全相談
    • ストーカー、DV、児童虐待に関する相談
    • 近隣住民とのトラブル、不審な電話/メールの相談
  • 保安
    • 違法な風俗店の取締り、指導
    • ネット犯罪の捜査
  • 少年
    • 少年(男女の未成年者)に関する犯罪の取締りと防犯活動

性風俗営業の取締り

ソープランド

表向きは、湯船がついた個室の浴室において客の体を異性のスタッフが洗ったり一緒に入浴する等の入浴介助をするサービスです。

性的行為や性交(本番行為とも)を行うのは、あくまで「サービス提供中に客と恋愛関係になったためにした個人的な行為」という建前のため、売春防止法に抵触しないと言われています。

捜査機関側もソープランドやその他の性風俗業で性交がサービスとして提供されている実体は分かっているものの、黙認しているのが実情とも言われています。

それでもソープランドが摘発されるのは性交という売春防止法違反での検挙が目的ではなく、そこに殺人や違法薬物等の犯罪が絡んでいるためと言われています。

警察官立寄所

街中で見かける「警察官立寄所」と書かれたプレートやステッカーは犯罪の抑止効果を狙ったもので、その地域を担当している警察署長が特に警戒が必要だと思われる公共の場所に設置したり、店舗側が設置したりするものです。

店舗側が申請する場合は管轄の警察署にある生活安全課になるそうです。

実際に立ち寄るケースもあるそうですが、人出が足りない関係上、定期的な立ち寄りは期待できず抑止以上の効果は望めないということです。

刑事

殺人や強盗、窃盗、放火、傷害、脅迫、誘拐、性犯罪等に関する事件の取締りと捜査を行います。主に以下のような業務があります。

  • 刑事総務
    • 各種資料の保管・庶務、防犯カメラの回収や解析等の支援活動
  • 強行犯捜査
    • 殺人、強盗、放火、傷害、脅迫、誘拐、性犯罪等の捜査
  • 知能犯捜査
    • 贈収賄、選挙違反、特殊詐欺、横領、背任等の捜査
  • 盗犯捜査
    • 侵入窃盗、ひったくり、スリ等の捜査
  • 機動捜査
    • 殺人・強盗等の事件発生時における被疑者の早期検挙と初動捜査

刑事になるには

その警察官本人が希望して初めて刑事への第一歩となります。希望者の中から上司(刑事課長から報告を受けた署長による)によって承諾・推薦された者が「刑事任用科」受講の書類審査と面接審査を受けることができます。(今は「捜査専科講習」と呼ばれている?)

  • 推薦を受けられる人
    • 手柄を立てた人が推薦を受けられます
      • 交番勤務で実績を積んだり、職務質問で重大事件の被疑者を見つけたり、交通取締りで表彰を受けたりといった積み重ねが大事だそうです
    • 推薦を受けるまで少なくとも3~4年程度かかるとも言われています

推薦を受けて試験資格が得られると、年2回程度開催されている刑事任用試験を受験します。試験内容は筆記試験(5択・論文)と口述試験です。

  • 試験内容
    • 口述試験の相手は主任面接官(本部刑事部管理官警視)と補助面接官2名(本部係長級警部)

この試験に合格して初めて刑事になることができ、その後は警察学校に入校して3ヶ月の「刑事任用科」を受講します。

  • 推薦を受けられるのは1つの警察署で年に2~3名程度
    • 講習まで進めるのは1名程度

刑事任用科では、刑法・刑事訴訟法、捜査書類の作成要領、現場鑑識、尾行や取調べ等の、刑事にとって必要な知識と技術を座学・実技で学びます。

  • 最初に必ず経験するのは盗犯刑事
    • 窃盗犯を相手にした捜査では、犯行手口の分析や聞き込み、尾行、張込み等の捜査に必要な技術が含まれているため、刑事志望者は必ず警察本部の捜査三課や所轄警察署の盗犯係に配属されるそうです

これで資格を得られたものの、所轄署の刑事課には定員があるためそこに欠員が出ないかぎり刑事にはなれないのが現状です。それまでの勤務を続けたりしながら空席が出るのを待つそうですが、資格の有効期限は3年しかないため、お呼びがかからないと資格が失効してしまうそうです。

盗犯刑事

窃盗犯専門の刑事であり、警察本部の捜査三課や所轄警察署の刑事課盗犯係に所属する刑事をそう呼んでいます。通称「ドロ刑」とも。

盗犯刑事は日勤の警察官であるため業務は8:30から始まるものの、大抵は7:30に自分のデスクにいて事件速報簿と呼ばれる昨日管内で発生した事件の一覧表に目を通し、自分が内偵している窃盗事件と似た手口の事件がないか、関係性の高い事件はないかチェックします。

  • 再臨検について
    • もし前日に似た手口の事件が発生していればすぐに現場の再臨検(現場を再度訪れて捜査すること)の準備をし、窃盗の被害に会った時間帯に再臨検をします
      • その時間帯を狙って現場周辺に赴き、その時間帯にいる人々を相手に聞き込みをして目撃証言を集めます
      • 空き巣であれば狙った家のインターフォンを鳴らすため、同時刻でインターフォンが鳴ったのに誰もいなかったことがなかったか訪ねて回ります

盗犯刑事の基本は「現場はナマモノ」であり「現場百遍」をして目撃証言を集め、被疑者に迫っていくこととなります。

  • 目撃証言集めについて
    • 現場付近の住人や目撃者、被害者の記憶ですら時間の経過とともに薄れていくため、風化しないうちに情報を集めることが肝要です
    • 事件発生時を中心に現場へ何度も足を運び、目撃証言を集めます

事件が発生していない時は継続している被疑者の密偵や、質屋・リサイクルショップを回って盗品が出ていないかを確認する「ナシ割り」をして回ったりしている。

  • 盗品専門の捜査員について
    • 警察本部捜査三課や所轄警察署刑事課盗犯係には盗品専門の捜査員がいます
    • 管轄のリサイクルショップや質屋を回って盗品に関する情報収集をしています

事件が起きていない場合は18時ぐらいに勤務が終わります。

古物商との関係

窃盗事件が起きた場合は品触書(しなぶれしょ)という被害品のリストを作成して質屋やリサイクルショップ等、近隣の古物商に持ち込み、被害品が持ち込まれたら連絡するよう要請します。

  • 品触書について
    • 品触書の保管は6ヶ月
    • 品触書を捨てたり盗品と知ってわざと連絡しなかった場合は、営業停止や古物商の免許停止、罪に問われることがあるそうです

また盗品の疑いのある古物が他に出回らないよう警察が差止め命令を出すことがあります

  • 差止め命令のあった古物について
    • 差止めのあった古物は売ったり廃棄したりできません
    • 売った人が買い戻そうとしても応じられません

質屋との関係

窃盗犯が盗品を持ち込む質屋は盗犯刑事にとって重要な情報源であり、その繋がりが検挙に大きく影響します。質屋は盗品が持ち込まれがちなことを知っているため、品物と同時に持ち込んだ人についても目を利かせています。

  • 盗品の返還について
    • 持ち込まれた品物を買い取った後に盗品と判明した場合、被害届受理後1年以内なら被害者に返還する義務があります
    • 窃盗犯が捕まっても被害額が保証されることはほぼなく店側が一方的に損をするため、店側も構えています
  • 店側の情報収集
    • 店側は買い取る時にはさりげない話を振って様々な情報を得ています
      • いつ買ったのか
        • 答えられなければ怪しいです
        • 答えられたとしても質屋が知っている品物の販売時期と異なれば怪しい
      • その品物が好きなのか
        • 答えた話の内容や知識の深さで所持品かどうかが分かります
      • そうして怪しいと思うと、信頼関係を結んでいる盗犯刑事に連絡が行き、捜査、検挙となることがあります

また質屋では顧客が初めての取引(略称「初取」)だった場合、氏名・年齢・生年月日・住所を自筆で書き込んでもらい、免許証や保険証等の身分証明書を提示してもらい、捺印をしてもらっている。ほとんどの場合は印鑑を持っていないため拇印が多いようです。

  • その個人情報や拇印から事件解決に繋がるケースもあります

刑事の勤務時間

基本的には日勤なので8:30~17:15の8時間勤務(1時間の休憩を抜いて8時間労働)で週休2日制になります。しかしこれはあくまで勤務規程等に記載されている原則であって、この通りに働ける刑事はほとんどいないのが現状のようです。

サラリーマンに対する聞き込みの仕事を担当した場合は相手の帰宅に合わせて出向く必要があり、相手が日勤ならそれは夕方~夜になります。そして聞き込みを終えて警察署や警察本部に帰ってきてから報告書を作成、提出すれば夜になっています。(21時や22時に帰宅するのは当たり前の世界)

  • メモ
    • 聞き込み等に出かける場合は係長に予定を提出し、帰ってきたらその結果を報告(文書にも残す)そうです

経費

聞き込みや張り込み、捜査協力者・情報提供者への謝礼等で自腹を切ることが多く、現在は捜査諸雑費として月に1万円が支給されているものの流用してプールすることもできず、余れば返金しなければならないようです。

  • 捜査諸雑費について
    • その90%は電車賃で消えてしまうようです
    • 捜査費用として必要な目安は月に3~5万円程度という話もあります

出張で地方へ行く時は事前に申請すれば経費が出るものの、上司から「2人で行く必要ある? 1人で充分じゃない?」等々のツッコミが入るとか。

外見・装備

服装

出勤・出署時、聞き込み・事情聴取・取調べ等はスーツを着用します。

  • スーツについて
    • 刑事になるとすぐ制服の代わりに公費でオーダーメイドのスーツが支給されます
      • その後2~3年に一度支給されます(夏2着、冬2着+コート)
    • 衣替えの時期になるとデパートの外商部が警察署や警察本部の柔道場に生地を持ってやってくるそうです
      • 数年前の柄が多いがモノはいい
      • 現品限り
      • その中から好きな生地を選んでオーダーします
    • もちろん自前のスーツを着用しても問題ありません

捜査の場面ではスーツと限らないケースもあって、スーツでいるのが不自然な場所ではそこでのふさわしい格好をします。盗犯刑事の場合は他の刑事のようにスーツを着用しての仕事は少なく、TPOに応じて服装を変えて時にはホームレスような格好をして張込みをすることもあるそうです。

  • サングラスの着用について
    • 「異装届」を提出して上司の許可を取る必要があるそうです

装備

常に携帯しているのは警察手帳と手袋、ビニール袋、筆記用具です。

  • 装備品について
    • 手袋
      • 証拠品等を扱う時に使用します
    • ビニール袋
      • 証拠品等を保管する時に使用します
    • 筆記用具
      • 警察手帳にはメモが書けないため携帯します
      • 記録をするのは「捜査録」というA6サイズの白紙で、自分で線を引いて日付を書き、目撃情報等のちょっとした内容をメモします

組織犯罪対策

暴力団や外国人・半グレ集団が起こす組織犯罪の対策と捜査を行っています。主に以下のような業務があります。

  • 組織犯罪対策
    • 外国人犯罪組織に関する情報収集・分析、実態解明と取締り、捜査
  • 暴力団対策
    • 暴力団追放等の暴力団排除対策、暴力団の壊滅を目的とした情報収集、取締りと捜査
  • 薬物銃器対策
    • 覚醒剤・大麻・危険ドラッグ等の違法薬物の情報収集、取締りと捜査
    • 拳銃等の銃器の取締り

暴力団とは

ヤクザ・極道とも呼ばれる人たちの集まる組織です。みかじめ料・用心棒代の徴収、売春の斡旋、麻薬・覚醒剤の取引、賭博の開帳、特殊詐欺等の違法な手段によって金銭を得ています。

一見まともそうに見えるフロント企業を隠れ蓑にして交通事故の示談や企業倒産の整理等に暴力的手段で介入したり、政財界やマスコミ、生活保護等の公的機関等、ありとあらゆるところに入り込んでいます。

暴力的対策法

正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」となります。

暴力団が組織の威力を傘に金品を要求したり、指定暴力団以外の人が指定暴力団の威力を示して不当な要求を突きつけるのも犯罪となりました。

蛇頭(じゃとう)

主に中国人が中国本土から日本への不法入国を斡旋する組織の通称です。「蛇頭」という組織があるわけではなく、不法入国を斡旋する組織をそう呼んでいるようで、蛇頭とは頭を潰さない限り死なない蛇を意味しているそうです。

彼らは日本において不法な手段で成功した人々であり、日本人や日本企業から奪った金で中国にいる家族に莫大な仕送りをして豪華な家を建てたり寄付をしたりして「日本で成功した名士」として扱われます。蛇頭は故郷の役人たちはコネを作り彼らに出国書類等の偽造をさせ日本への不法入国を手伝わせています。

蛇頭は当局側からの呼び方であり、蛇頭のボスに対する仲間内からの呼び名は「老板(ラオバン)」(中国語で「親方」「ボス」を指す)と呼ばれることもあるようです。

密入国

蛇頭は日本の暴力団を使って(報酬を支払って)中国人の密航者を密入国させることがあります。密航者は人蛇(にんじゃ)と呼ばれ、1人あたり日本円にして数百万円を蛇頭に支払って日本での密入国を試みます。

  • 密入国資金の支払いについて
    • 分割払いにも応じているそうです
    • 支払いが滞ると誘拐され拷問を受け、人蛇の家族に連絡をして支払わせられます
    • それでも支払えなければ殺害されます

44名が密入国したケースでは、まず蛇頭が中国国内で集めた人蛇を船に乗せて不法出国させます。次に九州の五島列島近くで暴力団が手配した日本の漁船に密航者を乗せ換えて長崎の港へ運び、そこで暴力団が用意していた箱型トラックに密航者を積んで東京都内にあるマンションに匿います。

暴力団側の報酬としては人蛇1人あたり70万円、船頭は前金で300万円だそうです。関係した暴力団側の人数は40名程度。以下は参考資料から一部抜粋し改変した密入国の様子です。

午前2時頃、人の来ない長崎の港に喫水線の高い(重たい)漁船がやってくる。船の前後左右に人がみっちり乗船している。港側にいる数人たちが船を港に着けて乗船している40名ほどの不法入国者たちを下す。ひどい汚臭をまとっている彼・彼女らを停めている箱型トラックの荷台に詰めていく。トラックとセダン数台が港を離れて高速道路に入り、今度はIC近くに停めておいた数台のマイクロバスに不法入国者を乗せ換えて出発する。

高速道路をひた走り丸一日かけて東京に入ると、荒川区日暮里にあるマンションの一室(2LDK)に不法入国者を押し込んだ。リビングに15人、和室に13人、キッチンに10人、バス・トイレにも6人程度。

相馬勝著「警視庁組織犯罪対策部」より抜粋して引用、URL、2023年10月8日閲覧

暴力団を関わらせず自前で密入国させる蛇頭もいれば、暴力団を使ったにもかかわらず金を支払わずトラブルになる蛇頭もいるそうです。

日本に密入国した人蛇たちは日本語も話せず土地勘もなければ住むところもないため、結局はそれらを蛇頭に頼り、彼らは人蛇に当座の住居と働き口を紹介するそうです。中には蛇頭が中国本土の役人と共謀して作った偽造パスポートや身分証明書・居留証を人蛇にあてがって日本人との偽装結婚を勧めることもあり、それが成功すると偽装結婚した夫婦の親戚と名乗る人々が何十人も中国本土から合法的に入国することもあるそうです。

違法インフラ

違法な手段で密入国した中国人や道を踏み外した中国人留学生が日本で生きていくため、蛇頭等が用意しているのが違法な生活インフラです。そこには医者や銀行もあって、そのコミュニティにいてなおかつ金があれば生活にそれほど不自由せず日本で暮らせるということです。

地下銀行による違法送金

日本で稼いだ金を中国本土へ送金する場合、正規の銀行ではパスポート等の身分証明書の提示が求められ、数々の手数料も取られます。さらに密入国した人蛇や留学生が強盗等で得た金は送金時にチェックされ当局に察知され逮捕される可能性もあります。

そういう事情から蛇頭等が作った地下銀行が日本の至る箇所に存在し、様々な方法で中国等の海外へ格安の手数料で送金している実体があります。マネーロンダリングにも使われています。

何らかの方法で客から金を預かると、現地にいる仲間に連絡をしてプール金から指定金額を相手に送金するという仕組みになっているようです。

ある中国物産展の場合

ある中国物産店では入口に吊るされている龍眼(ライチのような果物)と金柑を合図に用い、龍眼なら午前、金柑なら午後、両方なら一日中として顧客の送金を受付し、その場で現金を受け取ると中国の仲間に電話連絡してプールしてある金を持ち出すと、彼らのネットワークを使って送金先へ届けるという仕組みでした。わずか20分ほどで送金できるケースもあるそうです。

ある鉄くず回収業者の場合1

日本の鉄くず回収業者は取引先となる中国の業者が代金の支払いを滞納しがちで困っていたところ、その業者から「ある老板と連絡を取ってくれたら彼から代金を支払う」と言われ半信半疑で訪問したところ、本当に代金を回収できたそうです。

そのさいの条件として「貿易諸経費として、毎回の取引に100~1000万円ほど上乗せして中国の業者に支払ってほしい、その金はこちらが用意する」と言われてその通りにしていたところ、実はその上乗せ額が不正な海外送金に使われていたため、意図せず犯罪に協力してしまった日本の鉄くず回収業者は銀行法違反容疑で捜査の手が入ったそうです。

このケースでは100近い国内企業が関与しており、総額16億円を送金していたとされています。

窃盗教室

日本で強盗や窃盗で生計を立てるための窃盗教室が東京・上野にあったそうです。

100万円の授業料を払って月曜日~金曜日まで毎日9~17時までの間、上野駅に近い路地裏のマンションの一室で個別授業を受けます。3LDKの部屋には書架を細分化して様々な種類の鍵(マンションのドアノブ、引き違い窓のクレセント錠、南京錠、自転車のチェーン等)が設置されていて、ドア本体もいくつか置かれていてそこにはドアノブがいくつもはめ込まれているものもあり、それらを使ってピッキングのやり方を学んでいました。

生徒には卒業後の1年間、先生に毎月10万ずつ支払うと鍵開けのアドバイスを受けられるアフターサービスもついていました。(実質的には上納金)さらには東京都内で仕事をしないことも約束させられていて、逮捕された生徒は先生のやりかたに憤って窃盗教室の存在を警察に明かしたそうです。

偽造パスポート

運送会社を装って偽造パスポート製造をしていたある会社では、倉庫を装った工場に数十台ものパソコンやプリンターを用意して、不法滞在している中国人を使って偽造パスポートの製造をしていたそうです。

ここでは偽造パスポート以外にも外国人登録証明書や就労資格証明書も偽造しており、これら1セットを4万円程度で不法滞在者に売っていました。売った相手は約7500人で販売総額は3億円にも上ったそうです。

胎児偽装認知

蛇頭から「手付金で30万、出生後に親権が認められた70万」と持ち掛けられた男性が、無関係の中国人女性(妊婦)を役所で「胎児は私の子供だ」と認知するとその胎児は日本国籍となり、出生後に入国管理局へ出頭して「日本人の子供の親権者」として在留特別許可を申請しそれが認められると長期滞在許可が下り、何回か更新すると永久ビザが取得できるというものです。

これにより子供は日本人、女性は永住者として正式に日本で暮らせることになり、そこを伝手として無関係の「親族」が日本へ来て不法滞在をしながら窃盗等で稼げるという仕組みです。

  • 違法活動に協力する行政書士
    • 役所への胎児認知届けや入管への提出書類は行政書士が準備するそうです
    • この日本人行政書士を蛇頭が抱え込み、違法な活動を手伝わせているそうです

地下病院

中国人経営者によるエステ店の中で、無資格の中国人医者が不法滞在者に対して外科手術を行っていた例があります。法外な診療費と引換えに脂肪吸引等の美容外科や中絶手術、助産が行われていて、そのうちの一部では深刻な後遺症を抱えてしまった人もいたそうです。

自動車教習所・運転免許証・地下タクシー

簡単な学科と実技試験だけで外国免許から日本の免許証に切り替えられることに目を付けた蛇頭が、用意した闇の自動車教習所で運転技術を獲得させて、偽造した中国の免許証を出させて日本の運転免許試験場で日本の免許証に切り替えさせるというものです。

これにより得た免許証で地下タクシーを開業していた不法滞在者もいたそうです。

怒羅権(ドラゴン)

当初は首都圏の中国残留孤児二世を中心に結成された暴走族グループで、人数が集まるうちに武装勢力と化していき、1990年代には新宿歌舞伎町に進出してそこを根城にしていた暴力団と激しい抗争を繰り返していた組織です。「怒羅権」の由来は、「怒」が日本語に不自由な自分たちを虐める日本人たちへの怒りから、「羅」は悪を倒す羅漢から、「権」は自らの人権を守るという様々な意味が込められていた名前だそうです。

犯罪・事件の予防措置

事件の捜査を進めるうちにそれが組織同士の抗争に由来していた場合(例えば外国人の殺人事件があり、被害者がある犯罪組織の一員で、被疑者が対立組織の下っ端だったようなケース)、その原因となった事件の実行犯や関係者の引き渡しを求めるとともに「これでお互い手打ちにしようや」と和解を促し、それに反発するようなら「全力を挙げてお前らを潰す」と脅しをかけて抗争の中止と活動の縮小を促すことがあるようです。

組織の壊滅という根本的な解決には至っていないものの、組織の上層部を逮捕できる証拠もないため難しい場合等には有効的で、上司にも評価されて表彰されるケースもあるようです。

外見

暴力団相手の警察官の場合、とにかく「舐められないこと」が大事となります。そのため強面の警察官が採用されたりするそうです。服装も暴力団のような格好になっていき、被疑者の逮捕時には「どっちが犯人なんだ」という感じに見えてしまうそうです。

  • 相手が好き好んでする格好を真似するためそういう店に出入りして情報収集することも大事だそうです

交通

交通の取締りや事故の防止、事故発生時の対応や捜査を専門として取り扱っています。以下のような業務があります。

  • 交通総務
    • 交通安全教育、安全運転管理者講習
  • 交通規制
    • マラソン大会・道路工事等における道路使用許可
  • 交通捜査
    • 交通事故・事件の捜査
  • 交通執行
    • スピード違反・無免許・飲酒運転等の危険運転の取締り
    • 主要な交差点等での交通整理
  • 交通機動隊・高速道路交通警察隊
    • 白バイやパトカーによる交通取締り・安全指導

ひき逃げ犯捜査

日本のひき逃げ事件の検挙率は高く死亡事故では95%、重傷事故では60%となっています。

  • ひき逃げ事件の捜査内容
    • 目撃者がいるか、ナンバーが目撃されているか、車種・色が分かるかを調べます
    • 現場の遺留物を捜索します
    • 事故現場の近くやその道の防犯カメラに映っていないか、近くの駐車場やコンビニ等の施設に事故発生当時に訪れた不審な車がいなかったかを調べます
    • ひき逃げを起こした車を乗り捨てている可能性を考えて林道や山道も捜索します
    • 高速道路の監視カメラやフェリーの乗降記録も捜査します

交通取締り

赤キップ・青キップ

赤キップの正式名称は「交通反則告知票」で道路交通法違反で刑事罰を受ける「30km/h以上の速度超過や酒気帯び運転・無縁挙運転等、違反点数6点以上」の違反者に対して渡されるものです。裁判所送りになり刑事裁判を受けて有罪になると禁固・懲役を受ける「前科」がつくものです。

青キップは「交通反則告知書」で「一時停止違反・駐車違反・30km/h未満の速度超過等」の軽微な違反の場合に渡されるものです。一緒に渡される納付書で反則金を納めればそれで終わりとなります。

赤キップの罰金は国庫に納められますが、青キップの反則金は警視庁/道府県警察から上納されて警察庁と総務省の取り分となり、交通安全対策特別交付金として交通安全関連の企業や天下り法人等に分配される仕組みになっているそうです。

その金額は1年間で750~800億円程になり事実上の予算として扱われてしまっているため、警視庁/都道府県警察の交通課には青キップ取締りのノルマが課せられているといいます。

  • 青キップのノルマについて
    • ノルマが課せられているため赤キップとなるスピード違反も青キップとして扱う現場もあるらしいです
    • そうでなくても赤キップになると裁判所案件になるため裁判用の資料や書類を作るのが面倒で青キップにしている実情+「今回は特別に青キップにしてあげる」と話すと納得してもらえるという面もあるそうです

白バイ

  • 白バイの歴史について
    • 1918年に警視庁が交通取締りにオートバイを初投入しました
    • 当時は車体が赤く塗られた「赤バイ」だったそうです
    • 1936年にヨーロッパ各国やアメリカの白バイにならって白く塗り直されました(白の意味は「平和と清潔」を表わす色だからだそうです)

警備

公共の安全と秩序の維持を目的としており、主に以下のような業務があります。

  • 治安警備
    • デモの規制や違反行為の取締り・現場対応
  • 雑踏警備
    • 花火大会や初詣、祭礼、イベント等の混雑による事故の防止
  • 災害警備
    • 地震・台風等の被災者の避難誘導・救出救助、緊急交通路の確保、復興支援
  • 警衛警護
    • 天皇陛下・皇族、国内要人・国賓等の身辺警護

過激派

暴力等の違法行為を行動形式として取り入れている、極端な左翼思想を持っていて爆弾テロ等の暴力行為で社会を破壊・転覆させようとしている人・集団を指します。

代表的な派閥は以下の通りです。

  • 革マル派
    • 正式名称は「日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派」(略称「革共同」)
    • 反戦・反安保・改憲阻止を思想として持っています
    • 2017年の警察庁推定によると構成員は約5,500名ほど
  • 中核派
    • 正式名称は「革命的共産主義者同盟全国委員会」
    • 反戦思想、日の丸・君が代問題を扱っています
  • 革労協
    • 正式名称は「革命的労働者協会」
    • 狭間派・現代社派を思想として持っています

カルト教団

カリスマ的な教祖を持ち、その人物を信者たちが熱狂的に崇拝している宗教団体を指しています。勧誘が強引であったり、信者を洗脳し、霊感商法等の詐欺まがいの活動で信者や一般人から多額の金銭を巻き上げています。さらには敵対者・組織に対して暴力的な行為を行い、その目的達成のために破壊・殺人等も厭いません。

これまでに事件を起こした代表的なカルト教団と事件は以下です。

地域

地域で発生する事件・事故・事案の最前線として3交代(警視庁は4交代)で治安維持のために自転車やパトカー等で警らを行っています。警察学校を卒業した警察官は警察署の交番勤務に配属されます。主な業務は以下となります。

  • 交番勤務
    • 事件・事故発生時の初動活動
    • 地域のパトロール、巡回連絡
    • 地理案内、遺失届/拾得物の受理
    • 地域住民の相談

交番

交番の担当エリアで起きたあらゆる警察事象の初期ステージ、いわゆる初動活動の全てを担当するセクションです。担当した後は、四現業と呼ばれる生活安全・刑事・交通・警備に所属する警察官にその事件・事案を引き継ぎ、再び交番の業務に戻ります。

専門知識がなくてもいいようなレベルの仕事をするものの、浅く広い知識が必要になってきます。そのため警察学校を卒業した新任の警察官が必ず配属される先であり、交番勤務で警察の全般的な知識を覚えながら四現業の警察官に名前と実績をアピールして、最初に抱いていた夢(刑事になる、機動隊に行く)等へつなげていく場所でもあります。

  • 主な業務
    • 現場保存(刑事課等の捜査員が来るまで)
    • 交通規制
    • 緊急の救命救護
    • 緊急の鎮圧
    • 現行犯逮捕
    • 緊急逮捕
    • 被害届の作成
    • 簡単な事件の着手(捜査書類の作成、全てを担当することもあるそうです)
    • 簡単な実況見分
    • 簡単な参考人調書

警視庁/道府県警察がその都道府県の警察事象を受け持ち、警察署は都道府県の中を分割した地域の警察事象を受け持ちます。警察署に所属する交番はさらにその細かい地域の警察事象を受け持っています。

  • ブロック制について
    • ある範囲に存在するいくつかの交番をブロックとして扱い、例えば夜の繁華街を担当する交番の事案が重なって人手が足らなくなった時に、同じブロックの住宅街の交番から人員を融通させたりできるようにしています
    • ブロック長はブロック内で一番大きな交番の交番所長(警部補)になります
  • 受持区について
    • 交番勤務の警察官は所属する交番が担当する地域の中をさらに分割した「受持区」という地域を1人1人持っています
    • 警察官は受持区内の家を訪問をして巡回連絡をしたり振り込め詐欺の警戒を呼びかけたりしています
    • 交番へ配属となった時に署長から受持区のファイルを渡されてそれに署名し担当となるようです(担当は自分で変えることができません)

勤務

法令上は1つの交番に対して3人以上の警察官が勤務することになっていますが、実体としては2人が多く、その2人が3交代制(警視庁は4交代制)で勤務しています。つまり1つの交番には2人×3チームで合計6人、各チームに交番所長を加えた9人で運用されています。(ある交番において、月曜日はAチーム、火曜日はBチーム、水曜日はCチーム、木曜日はAチーム……という勤務になります)

勤務のパターンは3つあり、当番→非番→日勤のサイクルを繰り返します。

  • 当番
    • 8:30~翌日8:30までの24時間勤務(休憩・仮眠等を引くと16時間)
    • 遅番当番は14:30~翌日9:30までの19時間勤務
  • 非番
    • 休み
  • 日勤
    • 8:30~17:15までの7:45勤務

このシフトはおおよそ1ヶ月ごとに総入れ替えをするそうです。その理由としては、空き巣犯や反社会組織等が交番の動静をチェックして「休憩時間中に一仕事しよう」と思わせないようにするためだそうです。

以下は当番勤務になった警察官A・Bの2名について時間別にどのような業務をしているのかを表にしたものです。

時間在所警ら巡回連絡立番休憩
8:30配置・教養(本署)
9:00A、B
10:00A、B
11:00
12:00
13:00
14:00
15:00
16:00
17:00
18:00
19:00
20:00A、B
21:00A、B
22:00A、B
23:00
24:00
1:00
2:00A、B
3:00
4:00
5:00
6:00
7:00
8:00A、B
8:30A、B
9:00交代。本署で13時頃まで書類作成などの残務整理。

交番の中で書き物をしていたり交番の前で立っているだけと思われがちですが、実際はかなりの激務になっています。活動の2本柱である巡回連絡と職務質問に加えて常時警戒態勢を取っていて、勤務中に発生する突発事案・急訴事案と呼ばれる様々な事件・事故・事案・相談に対処しなければなりません。

  • 交番勤務あるある
    • 110番通報があると現場に駆け付けるため休憩が取れなくなる場合が多い(伸びてしまうため食事に麺類は禁物)
    • 勤務が終わるとひたすら寝れそうに思いますが、勤務中は報告書等の書類を作成する時間がないため非番の日にそれらの作業をするそうです
      • 遺失物届は比較的簡単なものの、事件の実況見分や報告書は見取り図を描いたり文章を書くことになるので時間がかかってしまうため
      • 空き巣だとタンスの引き出しが何センチ開いていたかなども測って報告書を書く必要があります
      • なので勤務時間中にはできず(おかしな話ですが)、休日にやることになります
    • 日中の不在時は警察OBの「交番相談員」が在所している場合があります
    • 自宅を出ていきなり交番に行く訳ではなく、いったん所属する警察署に出勤してそこで点呼を受けた後に制服に着替え、拳銃や装備品を装着して、自転車やバイクで交番に向かいます
    • 交番勤務で多いのは「若者と年配者」というペアです
      • 交番勤務は警察学校で初任科を終えて卒業配置された、いわゆる少年警察官が多く配属されています
      • それに付け加えて勤務成績の良くないいわゆるゴンゾウと呼ばれる年配の警察官も配属されています
      • 少年とゴンゾウに地域の治安を任せるしかないといういびつな構造が課題となっている

業務

在所

交番の中で被害届や実況見分調書等の事務処理をします。交番の外から見て「警察官が中にいる」とい安心感を与えるのも1つの仕事となっています。

警ら

交番の管轄地域において事件発生状況に応じたパトロールをします。空き巣が多ければ人気のない住宅街だったり、車上狙いが多いなら駐車場を重点的に見て回りながら防犯活動を行います。

また、警ら中に遭遇した不審人物への職務質問や違法駐車の交通取締り、素行の悪い少年たちへの補導等も行います。

基本は徒歩ですが、管轄する地域が広い郊外や山間部では自転車・オートバイ・ミニパトで行われています。夜間は2人1組での行動が原則です。

巡回連絡

通称「巡連」とも呼ばれ、自分が受持区となった地域の1軒1軒を訪ねて家族構成(氏名 ・生年月日・連絡先・職業)や勤務先、自家用車の有無等について「連絡カード」を書いてもらい、それを「巡回連絡用簿冊」に記録する業務です。

  • 受持区について
    • 受持区は警察署長からそれぞれの警察官に任免されます
    • 任免時の様子
      • 警察官は署長室で机越しに署長と正対し、署長から「地域課第一係○○巡査、○○交番第11受け持ち区を命じる」と告げられ、警察官が「はい! ○○巡査は○○交番第11受け持ち区を命ぜられました!」と大声で復唱し、退室した警察官が警務係長から差し出された黒くて分厚いバインダーの「命免簿冊」に自ら押印して一連の儀式が終わります
    • 署長からの変更命令がない限り受持区の変更は勝手にできません
    • 全国の地域警察官は例外なく1人に1つの受持区を必ず持っています
立番(りつばん/たちばん)

交番の外に立ちながら事件発生等不測の事態に備えて付近の警戒・監視をする業務です。警察官が街頭にいるだけで生まれる犯罪抑止効果も大きな仕事の1つです。

  • 立番について
    • 警杖を持つことが多いものの警棒を伸ばして立っていることもあります
    • 犯罪者が警察官を見ると目を逸らしたり挙動不審になります(これを確実にキャッチアップして職務質問し検挙していきます)
    • 人員に余裕のない交番ではなかなか見られません
    • 立番中に考えていること
      • 何も考えていない
      • 食事のこと
      • 今週の予定
休憩

交番の中にある休憩室(畳敷きで4~6畳程度の場所)で食事を取ったり仮眠をしたりします。

地理指導

時間があれば受持区の地図を見て地理を覚えています。それぞれマイマップを作成して目印になる建物やバス停等に色づけして案内しやすいように作成しています。

  • マイマップについて
    • 色分けされてかなりカラフルなものになっています
    • 地理指導のためだけではなく管轄内での防犯活動にも役立てています
      • 自転車盗難やひったくり事件の発生場所をメモしておいて注意の呼びかけに利用したりしています
遺失届・拾得物取扱
職務質問

通称「職質」とも呼ばれ、警察官が怪しい挙動の人を見つけて呼び止め犯罪行為に関わっていないかを確認する業務です。ルールや定義があるわけではなく、その警察官の経験等から来る主観(いわゆる勘)に基づいたものになります。

捜査は共同作業ですが交番勤務等の地域警察官は単独行動が多く、自分なりにやり方を工夫して職務質問をして結果を出すことができるため、そこに魅力を感じる警察官もいるようです。また、刑事は意外とデスクワークが多い静的な仕事なのに対して、地域警察官は体を動かす動的な仕事が多く、そこにも魅力があるという人もいます。

  • 怪しさについて
    • 警察官がいると一般人は「何かあったのかな?」の目をして見てきますが、やましいことがある人物は「やばい」と思って見てきたり、あからさまに目を逸らしたりします
      • 街頭でまっとうなサラリーマンなどに職務質問しているのは練習の場合があります
    • 場所/時期にそぐわない服装や格好をしている人
      • 真夏なのに長袖を着ている、住宅街なのに不釣り合いなぐらい大きなリュックを背負っている、スーツなのにスニーカーのような靴を履いている等
    • 靴が汚い、季節に関係なく汗だく、ろれつが回っていない人等も怪しいと判断され職質を受けるようです
  • 職質について
    • 任意であるものの「こいつは怪しい」と思ったらほとんどのケースでは帰しません
      • それでも帰ろうとすれば応援を呼ばれて取り囲まれます
      • 手は出さず体で止めます
    • 職質は警察官職務執行法2条1項に基づいた行為です
      • 「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる」
所持品検査

ドライバーを持っている場合は侵入盗の疑いがあります。(ガラス窓のクレセント錠近くを破って入り空き巣をするための道具として見られます)

職質に慣れていない人がやましいもの(犯罪に使うもの)を所持している場合、職質で所持品検査を受けた時はそのやましいものを隠している場所をしきりに見てしまうそうです。例えば鞄の中に拳銃を隠している場合、職質を受けた時に鞄をちらり、会話中も時折見てしまうというものです。その場合、職質をしている警察官からは「あの鞄に何かある」と容易に気付かれてしまい、それに気づいた相手も「まずい」と思って、結局その鞄を投げ捨てて逃走して捕まるというような結末になりがちです。

  • 圧力と圧力の戦い
    • それなりの根拠を持って職質をし所持品検査をする警察官 VS 違法な物品を持っている相手 の戦いは圧力と圧力がぶつかり合う心理戦になります
      • 警察官側
        • 大抵警察官は「申し訳ありません。協力してくれませんか」と低姿勢にお願いをします
        • 抵抗されたら質問を繰り返して、どこへ行こうとしていたのか、何をしようとしていたのか、持っているものの中味を教えてくださいと圧力をかけていきます
        • 嘘をついている相手なら質問に矛盾した返答をしてしまいます、そこを突いて更なる圧力をかけます
        • それでも所持品検査に応じない場合は応援を呼んで取り囲み、圧力をかけます
        • 相手に仲間がいる場合は仲間から少し離れた場所でそれぞれに対して職務質問を続けます
          • 仲間が何か言うかもしれないという気持ちを突くためです
      • 被疑者側
        • 「急いでいるので」「肉親が危篤なので」などと時間がない旨を訴えます
        • それでも許されない場合は「そこをどけ!根拠はねえだろ!」「令状を持ってこい!」「弁護士に電話する!」と怒鳴って圧力をかけます
          • 相手が若い警察官の場合はそれで怯んでしまい、見逃されるケースもあるそうです
        • 仲間がいる場合は応援を呼んで警察官を取り囲みます
          • 警察官も一人の人間なので、この場で何かされると怯えてしまえば見逃されるかもしれません
    • 一瞬の怯み・怯えを見せたほうが負けるというものです
保護

泥酔者や迷子の保護は警察官職務執行法にも規程されている業務です。異常な挙動や周囲の事情から判断して必要と感じたら警察署や病院等で保護しなければなりません。

  • 保護の理由
    • 精神錯乱や泥酔して自分や他人・物品に危害を及ぼす恐れがあるため
    • 迷子や病人、負傷者のため

保護した後はその人物の家族や知人に連絡して必要な措置を取ってもらうように手配します。家族や知人が分からない場合は該当する自治体等の組織に相手を引き渡します。(成人であれば自治体の福祉課、未成年者なら児童相談所等)

泥酔者の一時保護は警察署にある保護室(通称「トラ箱」)で、留置室とは別の部屋行われます。空いていなかったり他の事情がある場合は宿直室や休憩室等で代用しています。

歓楽街があるような都市部では専用の「保護センター」が設置されているケースもあります。(令和元年時点ではないかもしれません)

  • 泥酔者の保護
    • 原則1室1人、横臥時に嘔吐等が懸念される場合は顔を横に向かせる
    • 暴れたり自傷行為が想定される場合は戒具を着けることもあります

暴れたりふらついて座り込んだりしているような一見酔っ払いと見える場合でも以下に当てはまる場合は救急車を要請します。

  • 痛覚
    • 上腕部や大腿部をつねって表情を見ます
      • 反応がなかったり痙攣している場合は病気や脳障害、服毒等が疑われます
  • 瞳孔
    • 瞼を開いて懐中電灯の光を当てて瞳孔の形状を見ます
      • 瞳孔が収縮しないのは病気や障害が疑われます
      • 瞳孔が変形・拡大している、左右で大きさが違う場合は脳障害や急性アルコール中毒が疑われます
  • 外傷
    • 体の各部位を確認します
      • 骨折や切創がないか
      • 頭部は陥没がないか、こぶや擦過傷でも脳内損傷の可能性があります
  • 呼吸
    • 胸部・口元・鼻に手を当てて呼吸を見ます
      • 呼吸が著しく弱い、重苦しいいびきをかく、口から泡を吹いている等は薬物中毒や脳障害が疑われます
  • 口臭
    • 口に鼻をつけて臭いを嗅ぎます
      • 酒臭がなくて薬の臭いがする場合は薬物中毒を疑います
      • リンゴの腐敗臭がするのは尿毒症・糖尿病を疑います
      • チョコレート色の吐瀉物がある場合は肝臓病を疑います
  • 脈拍
    • 手首の脈拍部に指を当てて脈拍を測ります
      • 常人は1分間に65~80回ぐらいですが、これを離れて著しく低い・高い場合は病気か障害を疑います
  • 顔色
    • 顔面の色と他の肌の色を比較します
      • 顔が著しく赤すぎるのは脳内出血の疑いがある
  • 体温
    • 測定します
      • 著しく体温が低い場合は心臓が衰弱している疑いがあります

監察

規程違反や犯罪を犯した「素行不良な」警察官についてその行為を調査し懲戒する、身内からは「警察の中の警察」と呼ばれるセクションの警察官です。

警視庁であれば本庁警務部人事一課監察係に所属する警察官が有名ですが、他にも監察業務を行っている部署があります。

  • 監察業務を行う部署
    • 警務部人事第一課監察係の監察官
      • 警視庁警察官が関わる重大な非違事案・犯罪の摘発、免職を含む懲戒処分全般を担当します
    • 方面本部の方面監察官
      • 警視庁警察官の勤務状況・規則遵守や警察装備品の管理を担当する
    • 警察署内の警務課と警備課(所属内監察)
      • 署員の身の回りの規律違反を調査します
      • 行状、借財、宗教活動、交友関係、飲酒癖、外泊・旅行の届け出、居住地・部外の受験届け出等
    • 警察庁長官官房人事課監察担当
      • 警察庁キャリアの監察を担当します

監察の種類

  • 総合監察
    • 年に1回、警察署に対して服務や業務運営に問題がないかをチェックし、必要な指導を行って問題点を解決しながら規律の保持と業務遂行能力の維持を図ります
      • 事務監察:書類の審査、応問、管理状況の点検
      • 術科監察:通常点検、逮捕術訓練、拳銃訓練
  • 月例監察
    • 月に1回の警察署に対する監察です
    • 警視庁「警視庁警察監察規程」によると「警務部長の定める監察重点に従って」行われるそうです
  • 随時監察
    • 警視庁の監察係や方面本部の監察官が抜き打ちでやってきて文書や資機材の保管状態をチェックします
    • 特に交番を狙い撃ちして私服でやってくるようです
  • 特別監察
    • 特定の部署に対して業務または服務に関する特定の事項について行う監察

出頭要請

監察対象となる警察官に対して事情聴取を行うために呼び出すことが出頭要請であり、警視庁の例として、その警察官の所属部署に「警務部人事一課監察係です。本部11階の人事一課までご足労願いたい」という電話がかかってきます。

警察署の警務課長が出頭対象となった警察官の所属する部署の長に連絡を取り、例え外勤をしていたとしても本署へ強制的に呼び戻させて本部へ直ちに向かわせます。その場合は署長も同行します。

監察官と監察係員から本部2階にある取調室に連行されて聴取を受けます。「今日呼ばれたのは何故か分かっているね? 自分の口から話したほうがいい」同じ警察官同士ですが、片や取調官、片や被疑者のような状態で事情聴取が進んでいきます。事件の捜査と同じように、この段階において監察官はこの警察官が非違事案を起こしたという事実を掴んでいるためもはや言い逃れはできません。

そうしてその警察官が非違事案を認めるといったんは帰されるものの勤務から外されてしまい、懲戒対象となればそれ相応の処分が、ない場合でも罰俸転勤等の処遇を受けます。

身上調査書

小学館/今井良「警視庁監察係」より引用、URL、2023年9月20日閲覧
  • 監察について
    • 監察官は対象者の身上調査書等の人事記録・関係資料を用意しています
    • 警察署所属の警察官に出頭要請があった場合、署長・副署長はもちろん、ナンバー3の警務課長も「署の人事を預かる自分の監督責任が問われる」ため、何らかの処分を受けることになります
      • 監察係からの出頭要請は警察官人生の死を意味します
    • 一般女性との不倫のケースであればその2人が一緒に映った写真等を監察係員が警察官に突きつけたりします(警察官の捜査と同じような感じで取調べられるそうです)

監察官になるためには

警視庁警務部人事一課の監察係はノンキャリアでもエリートコースを辿った者しか就けないポストです。

その多くは「一発・一発組」と呼ばれる警察官が辿っていきます。巡査から巡査部長・警部補への昇任試験を一発合格したことからそう呼ばれる彼らは、毎年採用される警察官の中でも数%しかいない「ノンキャリア組のエリート候補生」として、警視庁の管理部門である警務部・総務部への配属を通じてエリートへと育てられていきます。

その途中経過として経験させられる部署の1つが警務部人事一課の監察係です。監察官になるルートとしては大きく以下の2種類があります。

  • 公安ルート
    • 警務・公安出身の成績優秀者が抜擢されます
      • 警察学校在学時の学科・術科の個人成績が優秀で、所轄警察署への配属後も地域課の警察官として勤務態度・成績が優秀な者が署長の推薦を受けて公安講習を受講します
      • この公安講習を受講すると公安捜査員名簿に登録され、警視庁本部の公安部門・警察署の公安係から引き抜きがあって初めてその所属となります(警察内部で「一本釣り」と呼ばれているそうです)
    • 公安部門と監察部門はその業務の共通性から親和性が高く人事交流が活発で、その流れで公安に抜擢された人材が警務部人事一課監察係に抜擢されます
  • 警務課ルート
    • 所轄署の警務課に所属する成績優秀な警察官も、署長から推薦を受けて人事一課監察係に配属されることがあります

ある監察官の経歴は以下となります。

  • 経歴
    • 大学卒業後、警視庁警察学校に入校
    • 22歳で警視庁巡査を拝命、大規模警察署の地域課、駅前交番に卒業配置
    • 25歳、職務質問等で検挙実績を挙げて署内の公安部門に推薦され公安講習を受講、警備課公安係の刑事になる
    • 26歳で巡査部長試験にトップクラスで合格、昇任に伴って警視庁公安部公安総務課に抜擢
      • 協力者獲得工作で多くの協力者を獲得・運用して警視総監賞を受ける
      • 4年間の勤務の間に内閣情報調査室への出向も経験、帰任して所属長から警部補試験受験を進められ受験し合格、警部補となる
    • 30歳で昇任配置として大規模警察署の警務課係長に着任
      • 署内では監察担当として4年間辣腕を振るう
      • この活躍が警視庁警務部人事一課監察係の目に留まり、警部試験受験を勧められ受験、合格し警部となる
    • 34歳で昇任配置として警視庁警務部人事一課監察係員として抜擢される
    • この後、大規模警察署の署長を経験してノンキャリアでは最高位まで昇り詰めた
    • このスピード出世は警視庁の中でもわずか1%(この時点での給与は約900万円)

懲罰

  • 懲戒処分の種類は以下の4種類
    • 免職
    • 停職
    • 減給
    • 戒告
  • 処分は警察庁懲戒処分の指針に基づいて決定されます

  1. 金融庁総務企画局「参考資料」/商取引を利用した地下銀行の例、URL、2023年10月8日閲覧 ↩︎