事件が発生して警察が捜査をし、検事による起訴までの流れは以下の図が分かりやすいです。
刑事手続きの流れ
警視庁ホームページ「刑事手続の流れ」より引用、URL、2015年8月8日閲覧
目次
端緒
警察事象(事件・事案)が発生し警察官が関わることになったそのきっかけを端緒(たんちょ)と呼んでいます。この端緒を得て警察の仕事が始まります。
110番通報
何か事件・事案があった時の通報先となる110番通報は最もメジャーな端緒です。110番通報は通報場所を管轄する警視庁/道府県警察の本部にある通信指令本部に入電します。
通信指令本部の指令台係官が受理し、それを側で聞いている無線担当官が内容を確認しながら関係する警察署や本部担当課の無線と110番を繋ぐボタンを押すと、警察署と本部担当課の無線室にある無線が「プップー」(または「プププ」)と赤く点滅して入電を知らせます。
- 警察署/本部担当課の無線室
- 24時間365日、常に署員・警察官が詰めています
捜査一課等の出動が考えられる事案の場合、通信指令本部は該当する課への同報電話転送ボタンを押して通報者と指令台係官のやりとりを直接聞かせることができます。
- 同報電話について
- 捜査一課・機動捜査隊・鑑識課などには同報電話が備わっていて事件のニュアンスなどを直接聞いて動けるようになっています
指令台係官は状況を聞き取りながらPCで記録し、事件性があると判断した場合は、通信指令部の指令台から管轄する警察署や警ら中のパトカーに急行指令を発します。
- 緊急指令
- 「本部から○○へ。××駅付近で単独自動車事故発生、現急願います」
- ○○:パトカー、例えば長野中央警察署の場合、自動車警ら班のパトカーは「中央1」「中央2」「中央3」……となります
- 通信指令部ではパトロール中の警察官やパトカーがどこにいるのか常に把握できます
- 「本部から○○へ。××駅付近で単独自動車事故発生、現急願います」
- メモ
- サイレンの音で突き止める
- 通報中に倒れて意識がなくなった場合にその相手を探すため、それまで得ていた情報から付近をパトカーで流し、サイレンの音で居場所を突き止めるというものです
- 通常であればサイレンを鳴らして現場に到着したら消えるはずが、ぐるぐると何回も回るようにしてサイレンを鳴らしているパトカーがいた場合は、サイレンで居場所を突き止めている可能性が高いようです
- 同じテクニックは救急車でも使われているようです
- サイレンの音で突き止める
職務質問
警察署の交番勤務をしている地域課の警察官や、警視庁/道府県警察本部の自動車警ら隊による警ら中に不審者を発見した場合、その人物を呼び止めて職務質問します。所持品から違法な物品(薬物等)が出てきた場合はその場で事案となります。
事件相談(被害届)
事件・事案の関係者や被害者が交番や所轄の警察署を訪れて端緒となることがあります。それはDVやストーキング、性犯罪等の親告罪にあたるものや窃盗等の場合です。
- 被害届の受理について
- 相談者が被害届を出そうとするものの検挙数を上げたいためににぎられる(受理されない)ことがあるそうです
- 被害届を受理してしまうと事件としての認知件数が増えてしまい検挙率が減ってしまうため
- しかしながら受理した被害届を破ったり捨てたり、自分のデスクにしまい込むというわけではないようです(それは公文書毀棄という犯罪で不祥事になるため)
- 「それは気のせいでしょう」「捜査になるとあなたも大変ですし、もう少し考えたほうが」のように、あしらって被害届を出させないようにする手法が採られるそうです
- 相談者が被害届を出そうとするものの検挙数を上げたいためににぎられる(受理されない)ことがあるそうです
被害相談を受けたものの、その当時の警察官の意欲や気分で受理されなかったり適当にあしらわれてしまったりして事件発覚が遅れて重大な結果を招くケースもありました。
- 重大な結果を招いてしまった例
- 桶川ストーカー殺人事件
- 女子大学生だった被害者が交際相手の加害者からDV・ストーカー行為を受けていた事件
- 家族が所轄警察署に被害を訴え捜査を求めたが応対した署員からやんわりと拒否・先延ばしを促す・取り下げを求める等をされ続け、最終的には警察署が組織ぐるみで告訴状を被害届に改竄し、結果的に被害者は加害者に殺害されてしまいました
- この事件をきっかけに「ストーカー規制法」が施行されました
- 元私立長野経済短期大学学長・中野正殺害事件
- 家政婦から事件相談を受けてあしらってしまった赤坂警察署の刑事課長は捜査一課の特殊班班長などを歴任して「将来の一課長候補」と呼ばれていましたが、この一件以来、所轄を転々としたまま本庁の刑事部に呼び戻されることはなかったそうです
- 桶川ストーカー殺人事件
被害届を受理させるコツは「その被害が自分にとっていかに深刻な問題であるか」「その被害について詳細に伝えられるよう整理しておく」ことが重要だそうです。
- 被害の詳細
- 被害に遭った日時・場所
- 被害の状態(怪我であればその写真や医師の診断書、物品の盗難であればその品目と購入金額等)
- 被害金額
- 購入金額ではなく経年劣化も考慮した金額と言われます
- 被疑者の情報(あれば)
- その他参考となるべき情報
刑事告訴/刑事告発
刑事告訴は被害者やその法定代理人が行うもので、被害者自身が加害者の処罰を求める意思表示をすることです。刑事告発は第三者が行うもので、被害者以外の者が犯罪を認知し、加害者の処罰を求める意思表示です(親告罪に該当する犯罪には適用されない)。
告訴状/告発状を記載し、犯罪が発生した地域を管轄する警察署や被害者/加害者の居住地を管轄する警察署に提出します。これを受理した警察が捜査を開始します。
異状死体
異状死体とは医師によって病死であると確認されていない、外傷等のない死体を指します。これも110番通報や交番・警察署への届け出等で発覚する端緒ですが、事件性の有無については検視官によるスクリーニング(判断)が入ります。
- 検視官によるスクリーニングの結果
- 非犯罪死体と判断
- 見分(医師立ち会い)
- 病理解剖または行政解剖
- 見分(医師立ち会い)
- 変死体と判断
- 検視(医師立ち会い)
- 非犯罪死体と判断
- 犯罪死体と判断
- 検視(医師立ち会い)
- 犯罪死体と判断
- 検証・実況見分
- 司法解剖
- 検証・実況見分
- 非犯罪死体と判断
その他
タクシーの天井についている「行灯」(あんどん、別名「防犯灯」)は、タクシー内で強盗などが発生した場合に赤く点滅させて周囲に状況を知らせる役割があります。
現場到着
「現着」とも呼ばれ、事件の発生現場に到着したことを指します。現場を管轄する警察署の地域課の警察官(交番勤務の警察官)が最初に現着することが多く、次いで警らをしているパトカーの警察官、機動捜査隊の覆面パトカーが現着します。
現着した警察官が行うことは以下の3つとなります。(いきなり捜査はしません)
- 事件の確認
- 現場の保存
- 関係者の確保
事件の疑いが濃厚になると本部の捜査一課と鑑識、殺人事件であれば検視官の臨場が要請されます。捜査一課の殺人犯捜査係や強盗犯捜査係等の係長(警部)の指揮の下、初動捜査が進められます。
事件の確認
110番通報を受けて現着した先着警察官は、まず通報の内容と現場が合っているのか、異なるのであれば実際はどうなのかを確認して通信指令本部に報告します。(報告=打ち返す、とも言うようです)
- 報告内容について
- 現場の状況をどんどん報告します
- (殺人事件等であれば)首に紐状のものが巻かれている、腹に包丁が刺さっている、着衣の乱れの有無等
- 屋内なら部屋の状況、鍵や窓、出入口の状態等
- 110番通報の内容をおさらいする理由
- 通報者のほとんどは一般人なので、事件発生を目の当たりにして気が動転してしまい通報している内容と実際の事件が一致しないことが多々あるからだそうです
- 「人が殺されている」という通報でも実際は被害者が重傷だが生存していたり、「今殺された」という通報でも実際は死体が腐乱を始めていたりするそうです
被害者の生存確認をし、死後硬直等がない場合は呼吸していなかったとしても救急車を呼び搬送の手配をします。
たった今殺害されたばかりであれば通信指令本部に報告を打ち返して緊急配備の要請をしてもらう必要もあります。
現場の保存
規制
先着警察官が現場の状況を報告している中、次に到着した警察官たちが行うのは鑑識や捜査員がやってくるまで現場を保存し関係者をその場に留めておくことが何より重要となります。
- 現場保存の具体的な内容
- 規制線(非常線、立ち入り禁止のテープとも呼ぶ)を張り、誰も入らないよう制限します
- 殺人事件等であれば目隠しのブルーシートを張ります
- 現場に残されている犯人の指紋・足跡、遺留品が散逸しないようにします
- タンスの引き出しが開けられていたなどの物色痕がそのまま残るようにしておきます
現場への立ち入り
鑑識作業中は捜査員だとしてもうかつに入ることは許されません。鑑識以外で中に入ることができる警察官は以下の警察官たちになります。
- 現着した警察官
- (強行犯であれば)所轄警察署の強行犯係長、都道府県警察本部の捜査一課員・機動捜査隊員
中に入る場合、捜査一課員なら「捜一」・機動捜査隊なら「機捜」等の腕章をして、遺留品等がない場所を選んで鑑識が敷いた歩行帯(30~40cm幅のビニール製のシート)の上のみ歩いて現場を見ることができます。その前に以下のような準備をします。
- 準備
- 髪の毛が落ちないようヘアキャップを被ります
- 白手袋(遺体に触れる場合はゴム手も使う)を嵌めます
- 靴に靴カバーを着けます
- 腕章は以下のような種類があります
- 本部捜査一課は「捜一」
- 所轄警察署の刑事は「捜査」
- 鑑識は「鑑識」
- 検視官は「検視官」
- 機動捜査隊は「機捜」
現場保存のため規制線の前で立っている制服警察官が、やってきた捜査員の腕章を見て「どうも」と敬礼して中に入れます。非番で外出している時等、腕章がない場合は警察手帳を見せて中に入ります。
- 現場での振る舞い
- 捜査員が現場に入った時はポケットに手を入れていることが多いそうです
- 手袋をしていたとしても予期せず遺留物をこすったりしてしまい、指紋が消えてしまうようなことを防ぐため
- 指紋がついていそうなところに近づいて見る時、すっとポケットに手を入れて顔を近づけて見ます
- 捜査員が現場に入った時はポケットに手を入れていることが多いそうです
関係者の確保
110番通報をした通報者や被害者、被害者の関係者や目撃者等を把握し、必要であれば近くの交番に連れていったりパトカーに乗せて待機させておきます。
その後、所轄署の刑事課や機動捜査隊の到着を受け、捜査に手慣れた彼らに事情聴取を引き継ぎます。
鑑識
鑑識を参照してください。
被害者供述調書
交通事故や傷害、窃盗、強制猥褻等の犯罪で被害者がその場にいる場合、被害者から被害者供述調書を取ることがあります。
- 性犯罪の被害者が女性である場合、女性警察官が被害者供述調書を担当します
初動捜査
現場に被疑者がいないような事件の場合、事件関係者/目撃者からの事情聴取や、現場の写真撮影、遺留品等の現場資料の採集、防犯カメラの調査を行います。現場に被疑者がいる場合は事情聴取や身柄の確保等を行います。
殺人事件等の重大な事件の場合、所轄の警察署からやってくる警察官の捜査員と警視庁/道府県警察の機動捜査隊が初動捜査に当たります。
- 機動捜査隊について
- 被疑者の検挙と目撃者の確保を役割としています
- 所轄警察署の顔を立てるため、彼らとダブらない捜査を考えて実施しています
- 死体の身元が分かっていない場合は「身元を調べる」と所轄警察署側の責任者に告げて、所持品などから関係先に向かって事情聴取したりする
- 初動捜査で被疑者が逮捕できなかった場合、発生場所を管轄する警察署に捜査本部が設置されます
- 事件が殺人等で解決が困難だと想定される場合は特別捜査本部が設置されます(年間20~30件程度)
- なお「特別捜査本部」は警視庁だけの措置で、他の道府県警察ではただの「捜査本部」となります
- 本部捜査一課等はこの時に初めて出動が要請されます
捜査本部
初動捜査によって被疑者が検挙されなかった場合、捜査は所轄警察署に引き継がれるものの、それが殺人や悪質な性犯罪等の重大な事件だった場合は捜査本部が設置されます。
捜査本部とは所轄警察署と警視庁/道府県警察が共同で設置するプロジェクトチームの名前で、別名「帳場(ちょうば)」とも呼ばれています。
- 捜査本部について
- 「捜査本部」という新しい組織(課や係等)を設置したわけではなく、あくまで一時的なチームとなります
- 警視庁/道府県警察本部の刑事部捜査一課が主導の捜査本部が設置された場合、それを「一課の帳場が立つ」と呼ばれるそうです
捜査本部が設置されるのは事件発生地の管轄となる警察署です。そこに警視庁/道府県警察本部の担当捜査課(殺人等の場合は捜査一課)がやってきて、他から集めた捜査員も含めて以下の3種類の捜査に充てるために編成し、それぞれ指示を与えて捜査をさせます。
- 捜査の種類
- 地取り捜査(地取り)
- 識鑑捜査(識鑑、鑑)
- 証拠品捜査
警視庁では年間20~30件程の捜査本部が設置されています。ほとんどが殺人事件で、大規模汚職や総会屋による利益供与(商法違反)事件等が1~2件程度です。
捜査本部の種類
捜査本部は大きく以下の5つに分かれるようです。
- 特別捜査本部
- 警視庁独自の形態で、他の道府県警察、例えば大阪府警察であれば全て「捜査本部」として運用されているものです
- 警視庁では内規により特に重大で社会的影響が大きな事件については「特別捜査本部事件」と指定し、大量の捜査員を投入させるよう本庁・所轄警察署の双方に求めるとしています
- 部長指揮の捜査本部
- 警視庁/道府県警察本部と所轄警察署が共同で設置する捜査本部を指します
- 「捜査本部」としてドラマや小説で出てくる捜査本部はだいたいこの形だと思われます
- 署長指揮の捜査本部
- 署長が警察署を挙げて取り組む形の捜査本部で、捜査員は全てその警察署の警察官のみとなります
- 合同捜査本部
- 事件が複数の都道府県にまたがる場合、関係する警視庁/道府県警察が指揮系統を一元化するための捜査本部です
- 共同捜査本部
- 事件が複数の都道府県にまたがるものの、指揮系統を一元化せずに捜査を行うものです
設置
臨時のプロジェクトチームである捜査本部にも本部長・副本部長等が着任して事件解決への指揮を採ります。
- 本部長
- 警視庁/道府県警察本部の刑事部長が着任します
- ただし社会的な影響が非常に大きな事件の場合は警視庁/道府県警察のトップ(警視総監/本部長)が就くこともあるそうです
- 副本部長(2名)
- (1)警視庁/道府県警察本部の担当課長が着任します
- 殺人事件であれば刑事部捜査一課の一課長
- 捜査のイチシアチブを採ります
- (2)捜査本部が設置された警察署の署長が着任します
- (1)警視庁/道府県警察本部の担当課長が着任します
- 捜査主任官
- 副本部長となった警視庁/道府県警察本部の担当課長の配下にいる理事官や管理官が着任します
- 本部長・副本部長の意向を受けつつ、捜査本部の実務的な指揮を採る役割です
- 担当課長は警視庁/道府県警察本部所属の全警察署の捜査本部や事件を受け持っているため専任が難しく、また事件発生署の署長も他の警察業務で多忙なため
- 副捜査主任官
- 捜査本部が設置された警察署の刑事課長が着任します
- デスク
- 警視庁/道府県警察本部の担当課所属の係長(警部)や主任(警部補)と、所轄警察署の刑事課長が着任します
- 捜査本部に上がってくる情報の集約と捜査員の編成を行います
- 情報の集約
- 捜査主任官の指揮に活かせるよう、捜査本部に集まる全ての情報を集約し整理します
- 捜査員たちが持ち帰る報告書や会議の内容を受けて次の方針を決める、言わば船における舵取りのような重要な役割です
- デスクの格言「常に冷静に考え、時には一歩下がって事件の全体を見つめる。それが捜査方針を誤らせない方法だ」
- 捜査員の編成
- 捜査員の組み合わせや相性、特徴等を勘案して以下の4種類の捜査班を編成します
- 地取り
- 識鑑
- 証拠品
- 特命
- 割振りする人を配置班長と呼び、「所轄で〇〇に詳しいヤツはいないか?」「△△がいます」「んじゃそいつと××を組ませよう」みたいに適材適所で編成していきます
- 捜査員の組み合わせや相性、特徴等を勘案して以下の4種類の捜査班を編成します
- 情報の集約
捜査員の投入
捜査本部が設置されると、各部署から差し出された相当数の人員が捜査本部員として投入されます。殺人事件の捜査本部だと50~100名もの規模となることがあります。
- 捜査員の派遣元について
- 事件発生地の警察署はその管轄責任から最大限の動員が強いられます
- 刑事課員はもちろん、生活安全課、交通課、地域課、警務課など各課・係から捜査本部の要員が選抜されて持って行かれます
- 警察官なら誰でもいいわけではなく、制服警察官を送り込もうものなら「何だこの布陣は!特捜本部だぞ!」と所轄署の刑事課長がどやしつけられたりします
- 刑事課員はもちろん、生活安全課、交通課、地域課、警務課など各課・係から捜査本部の要員が選抜されて持って行かれます
- 事件の規模によっては近隣の警察署、同じ方面本部の警察署からも捜査員が派遣されます
- 警視庁/道府県警察本部からは捜査一課・二課・三課の係が投入されます
- 彼らが捜査本部の中核となります
- 機動捜査隊からも投入されます
- 事件発生地の警察署はその管轄責任から最大限の動員が強いられます
捜査本部が設置された警察署の副署長は胃を痛めることになります。と言うのも、捜査本部に人員が持って行かれて警察署の他の業務のやりくりに頭を悩ませることになり、さらに捜査員に係る費用についても予算をやりくりさせる必要があるためです。
捜査本部の部屋
所轄警察署の講堂や大会議室に設置されます。入口には模造紙を組み合わせて立て看板の形にした紙、通称「戒名」が張り出され、そこに毛筆で「○○○○殺人事件特別捜査本部」等と書かれています。
- 戒名について
- 書くのは所轄署の警察官で会計課や警務課等にいる書道段持ちの警察官です
- 事件名の素案を考えるのは所轄警察署の刑事課長と捜査一課強行犯の係長、それを受けて捜査一課の現場資料班の係長が戒名を決め、捜査一課長から了承を得て決定されます
- 「あの事件だな」と直感的に分かるような事件名になります
- 地名+被疑者の年齢・職業+犯罪名
- ジンクスについて
- 「この所轄ならあいつに書かせれば必ず事件解決する」というジンクスもあるらしく、捜査本部設置時に「あいつはいないのか」「今日は非番です」「今すぐ呼んでこい!」ということもあるそうです
出入口から奥に配置されるのがデスク席で、机をいくつも組み合わせて、無線機やファックス、ノートパソコンが置かれて臨時の指令室のようになります。部屋の前面にひな壇が置かれ、捜査一課長、警察署長、捜査一課理事官(管理官)、デスク担当の本部係長等の幹部が並んで座ります。
- 配置について
- デスクは中央の場合もあるようです
- ひな壇は奥が上座なので、本部長、副本部長(担当課長、署長)、捜査主任菅の順番で奥から座っているはずです
捜査本部の隅に置かれた机の上に捜査資料が置かれています。大抵はA4コピー用紙に印刷されたもので、殺人事件であればその近くに被害者の顔写真が黒く縁取られて立てかけられているケースもあります。もう一方の隅には急須やポット、茶碗等が置かれています。
- 捜査資料について
- 捜査資料には被害者の氏名・年齢・職業・発生日時・状況等が書かれています
必要であればA0サイズの模造紙に何かの情報を書いてホワイトボードに張り出すこともあります。
- ドラマのようにホワイトボードへ直接書き込んだり写真を張ったりすることはほとんどありません
- 警察にはマスコミや一般人等、関係者以外の人間が入り込むことがあり、捜査に関する情報を見られないようにするため
- 模造紙であれば取り外しができます
捜査会議(初回)
捜査に携わる捜査員が集まったのを受けて、初めに捜査会議が開かれます。進行役はひな壇の下座に座る本部の係長で、所轄警察署の刑事課長から事件の概要説明がなされます。次に初動捜査に当たった機動捜査隊の管理官による報告等がなされ、捜査本部長となる捜査一課長からの挨拶となります。
- 会議の様子について
- 集まった捜査員たちの手元には捜査計画書という冊子が配布され、それを見ながら捜査会議が行われます
そうして最初の捜査会議が終了すると、本部係長から紹介されたデスク主任が中心となって捜査員たちの編成が決められていきます。編成は「地取り」「識鑑」「証拠品」「特命」の4種類で、2人1組となります。デスクの主任が捜査員の名前を呼び上げて起立させ、お互いを認識させます。
- 「地取り1組、○○と××、2組、△△と□□」という感じです
- 地取りなら対象エリアを分割してそれぞれ組を割り当てていきます
捜査会議(2回目以降)
それぞれ担当となった捜査(地取り・識鑑・証拠品・特命)をこなした捜査員たちが捜査本部に戻り、デスクに報告書を提出します。デスクは受け取った報告書と捜査会議の内容を突合させて捜査主任官の指揮を仰ぎつつ、捜査員の翌日の下命内容を検討します。
- 報告について
- ドラマのように全員がテーブルについて報告することはないそうです
- 洗いざらい報告するのは駆け出しの新人か自信のない捜査員で、次に何をすべきか分かっていない「指示待ち刑事」だと揶揄されるようです
朝に行われる捜査会議で捜査員たちは点呼と捜査の指示を受けてそれぞれ出かけていきます。そのため捜査員が捜査本部の全体の状況について知ることはほとんどないようです。
- 捜査会議のタイミング
- 以前は夜に行っていたようですが、最近では朝に行われることも多いそうです
- 帰宅する捜査員がマスコミの「夜討ち」に遭って、捜査会議で共有された捜査情報を漏らしてしまうケースもあります
- また、捜査員たちから上がってくる報告書をデスクがゆっくりチェックできずに捜査会議を迎えてしまうのを防ぐためという意味もあるそうです
- 捜査本部全体の情報を知らせない理由
- 捜査員が捜査本部全体の情報を知らないということは「クロに近い被疑者が上がった」等の情報を得て、捜査が仕事の手を抜くようなことを防ぐ意味合いもあるそうです
任務編成・捜査
捜査は「地取り」「識鑑」「証拠品」「特命」の4種類に対して、それぞれ捜査員を2人1組で割り当てて進めていきます。
振り分けはデスクが行い、その事件が鑑(被害者と面識のある者)による犯行なら識鑑を、そうでない流しの(被害者と面識がない)犯行なら地取りや証拠品を厚くする等のコントロールをします。
組分けの原則として、所轄警察署の捜査員には警視庁/道府県警察本部の捜査員または機動捜査隊の捜査員と組ませるというものがあります。
これは経験の浅い所轄警察署の捜査員に対して本部の捜査員が指導を与えながら捜査を進めるOJT的な効果を期待していることと、所轄警察署の捜査員が持つ土地勘や檀家・S(情報屋)からの情報を元に水先案内人にさせて本部の捜査員がその情報を捜査に活かす狙いもあるためです。
- 地取りで一番重要だと思われる地域は、本部の古い主任と所轄署の優秀な若い捜査員を組ませます
- リーダーシップは捜査本部の捜査員が採ります
- 仮に本部の捜査員の階級が低かったとしても
地取り
識鑑
証拠品
特命
上記に含まれない特命事項について捜査を行います。市民から寄せられた情報や、出所の怪しいタレコミ等。
その他
所轄警察署の気苦労
事件発生地となった警察署の警察官たちは捜査をしつつも、本部からやってきた捜査員たちが泊まり込む道場の布団を用意したり捜査会議後の「第二会議」で飲み食いする酒やつまみ、夜食の準備に追われてボロボロになります。
- 酒やつまみ、夜食は元々その警察署のために割り振られていた予算からやりくりするため、会計課の年度計画が狂ってしまうそうです
- 使えるコピー機を減らす、エアコン使用禁止にまで追いつめられる警察署も出てくるそうです
泊まり込み
捜査本部が設置されると大抵の捜査員はその警察署の道場で寝泊まりをします。道場の押し入れには数十人分の布団が用意されています。
コンビニで買ってきたものを会議室で食べたり近くの定食屋に行ったりして食事を取り、警察署にあるシャワールームで体を洗って寝しなに一杯やりながら寝たりするそうです。
- 泊まり込みについて
- 泊まり込みは規則ではないものの、割り当てられた捜査によっては終電に間に合わなかったり翌朝8:30に始まる捜査会議に間に合わすために泊まり込んでいます
- いびきが凄い人は周りに気を使って会議室の床や車の中で寝たりする人も出てくるそうです
- 女性警察官は当直室を使わせてもらえます
- 泊まり込みが長く続く場合は家族が1週間分の着替えを持ってくることもあるそうです
本部への推薦
捜査本部では捜査一課の捜査員と所轄警察署の警察官たちが交わる貴重な場でもあります。捜査一課の捜査員は所轄警察署の警察官たちの働きをしっかりと見ていて、見所のある警察官については別の管内で捜査本部が設置された場合も呼ばれたり、捜査一課へ推薦しようかという話にも繋がるそうです。
- 見所のある警察官とは
- フットワークが軽い
- 聞き込みの時にいいポイントを突く
- 報告書が分かりやすく簡潔
- 警視庁/道府県警察本部へ行けるのは巡査部長以上の階級を持つ警察官だそうです
検挙
検挙とは被疑者を特定することです。検挙となれば慰労会が開かれ、講堂等につまみと酒が置かれて祝杯があげられます。起訴が決まるとオードブルや寿司を並べての祝杯があげられます。
未検挙
捜査員の努力も空しく未検挙となっている場合、多くの人員を確保したままだとそれぞれ元の部署の業務も破綻してしまいます。そのため30日を1期とした区切りをつけ、よほどの重大事件以外は3期ぐらいになると規模が縮小されます。(2期ぐらいで半数程度に縮小されることもあるそうです)
規模がどんどん縮小していき1年後ともなれば数名の捜査員が情報整理をしているような程度になるようです。
- それでも捜査本部の看板を下ろして解散はできません
ガサ
「家捜し」が転じて「ガサ」と呼ばれています。事件において被疑者が特定され、その犯罪の証拠を得るために被疑者の家や勤め先等を調べて必要があれば物品を押収することを指します。
そのためには裁判所に請求して発付された「捜索差押許可状」という令状が必要で、これを「ガサ状」と呼び、そしてガサを実行することを「ガサ入れ」と呼んでいます。
- メモ
- ガサについて
- 現行犯逮捕など、逮捕の現場における捜索差押えには令状を必要としない
- 着衣のポケットなどを改める「身体のガサ」で被疑者が女性の場合は、女性警察官にさせるか立ち会いをさせる
- 後述の観察も含め「ガサ眼」が試される仕事
- 執行できる時間帯
- 特別の記載がない限り、日の出~日没までしか執行できない
- 警察24時的なTV番組で朝6時とかにガサをしているのはそういう理由だからでしょうか
- ガサについて
まずは臨検・捜索・差押許可状交付請求書を管轄する地方裁判所に請求します。
臨検・捜索・差押許可状交付請求書
引用元不明
そして地方裁判所から発付された捜索差押許可状を持って家宅捜索を行います。
捜索差押許可状
引用元不明
- 家宅捜索について
- 対象が賃貸物件の場合は貸主への連絡も必須です
- 令状にある「差し押さえるべき物」については持ち帰ることができます
- 記載方法として「A(対象物)その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」や、「本件犯罪に関係のあるA(対象物)、B、C、D等」という表記が許されているので、かなり広い範囲で持ち帰ることができるようです
- しかしその後の刑事裁判で「本当にその差し押さえは必要だったのか」で争われることもある諸刃の剣
- 身体検査について「身体検査令状」が必要になります
- 相手が女性の場合、身体検査を行う警察官は女性であるか、女性警察官の立ち会いが不可欠となります
- 薬物事犯だと女性の採尿が必要になり、女性トイレに入る必要も出てくるため
- 相手が女性の場合、身体検査を行う警察官は女性であるか、女性警察官の立ち会いが不可欠となります
ガサの種類
捜査上必要な証拠物品を捜索する以外にも様々な目的を持ったガサがあります。
- ガチンコのガサ
- 捜査上知り得た情報で行う真剣勝負のガサ
- ブツが出れば勝ち、出なければ負け
- 捜査員のガサ眼が試される
- 確証のあるガサ
- 確度の高い隠匿場所の情報があった上で行われるガサ
- 情報収集用のガサ
- 被疑者や犯罪組織にとって不利となる危険な物品は移動されたり隠されたことを知っている上で行うガサ
- その場所に残された名刺や携帯電話などから新しい情報を得るために行われます
- 公安事件の場合に行われます
- 体裁上のガサ
- 覚醒剤や大麻等の被疑者が逮捕されたという情報は関係者にいち早く伝わり、薬物を隠している倉庫や工場はすぐに引き払われてしまいます
- そこに何もないこと(文字通り何も残されていない空き部屋だと)が分かっていたとしても、捜査の一環としては必要があるために行われるガサです
- 情報が漏洩しているガサ
- 組織犯罪等で相手に恩を売るために事前に警察サイドからガサ入れの情報を教えた上で行われるガサ
- 知っているのは事件担当の幹部だけで、捜査員は知りません
- 嫌がらせのガサ
- 暴力団関係に多いガサ
- 抗争があった組の事務所や関係組織、関係者宅などを対象に、100人規模で十数カ所に同時にガサ入れをするものです
着手
被疑者が自宅に戻ったのを確認した上で明け方ぐらいに訪れ、捜索差押許可状を提示して中に踏み込みガサ入れに着手する。捜索場所は被疑者の所持品やポケットから始まり、洋服ダンス、トイレの貯水タンクや絨毯の裏側等、全ての場所を対象とする。
- ワンルーム程度なら4名前後でガサ入れをする
- 被疑者逃走防止や近隣住人・その他訪問者への対応のため、1名は玄関先で応対する
- 残りは班長の指示を受けて被疑者立ち会いの元、室内を捜索する
- 中には捜索に立ち会っている被疑者を監視している捜査員もいる
- 捜索が始まると被疑者は落ち着きをなくし隠匿場所をつい見たり、捜査員が隠匿場所に近づくと顔色が変わったりするため
- 世間話などをしながら被疑者の注意をおろそかにさせる
捜索して発見した物品について、捜索差押許可状に記されている「差し押さえるべき物」に該当するものは一つ残らず全て押収する。
そうして押収した押収品を徹底的に調べる。例えば愛読していた雑誌等を押収したのであれば、出版社に連絡を取り、雑誌と被疑者の関係(寄稿や投稿等)を尋ねたりする。
- 違法な物品のありかを被疑者本人が教えてしまう
- 場慣れしていない被疑者にありがちなケースだそうですが、例えば麻薬を部屋のクローゼットに隠している場合、動揺した被疑者がガサの最中にクローゼットのほうを何度も見てしまい、ガサをしている警察官には「あの場所に何かある」と分かってしまうことがあるそうです
押収・没収
ガサ等で押収された物品は基本的に持ち主に返還されます。ただし裁判で没収の言い渡しがあった物品については返還されません。以下に該当するものが没収とされます。
- 没収される物品
- 犯罪行為を成した物
- 麻薬所持罪であれば麻薬
- 犯罪行為に供したり供しようとした物
- 殺人事件における凶器等
- 犯罪行為によって得た物
- 殺人で得た報酬等
- 詐欺で得た金は没収し被害者へ返還すべきだが、それを使い込んでいた場合はその金額が「追徴」されます
- 犯罪行為を成した物
没収された物品は基本的に廃棄処分となります。覚醒剤は判決が出た後に一定期間保管された後に焼却・廃棄されます。銃器は資料用として保管されるケースもあるものの、基本的には高温で溶融されます。猥褻雑誌やDVDも焼却されます。
ガサの例
あるマンションで営業されていた違法風俗店のガサです。
イヤホンを耳にした警視庁生活安全部保安課・風紀第二係の捜査員20名がマンション周囲のそれぞれ指定された配置先に赴き「配置完了」の合図を無線に送ります。合図を受けた係長の警部がマンションのエントランスにあるインターホンで該当の部屋番号を押して伝えます。「警視庁です。売春防止法違反容疑でフダ(捜索令状)が出ているので話を聞かせてほしい。同時に事務所の中も改めせてもらう」
エントランスの自動ドアが開くと警部と10名ほどの捜査員が中に入り、警部と2名はエレベーター、他はダンボールを持って非常階段を上っていきます。警部が部屋のドアをノックして「開けてください」、少し間が空いてドアが開くと「動かないで!そのまま!」警部の怒号とともになだれ込む捜査員。
2LDKの室内にいたオーナー・店長・2人の男性従業員と待機中の女性従業員2人にはその場で逮捕状が読み上げられ手錠がかけられた。同時に事務所の家宅捜索も開始され、室内のハンガースタンドにあったコスチューム(セーラー服等)を写真に撮りダンボール箱に証拠品として押収していく。
警部がオーナー・店長に「1日の売上げはどのくらいなんだ?」と話を聞いていく。この店ではデリバリーヘルス店を装って在籍している18~37歳の女性およそ100人に売春を斡旋しており、逮捕容疑としては22歳女性を事務所付近のホテルに派遣して60代男性に引合せて売春を斡旋したものだった。(3年ぐらいの売上額は約8億4千万円)
オーナー・店長が捜査車両に乗せられ、警視庁と印字された小型トラックに押収物のダンボールを積み込んでいく。
今井良「風俗警察」より改編・補足して引用、URL、2023年10月17日閲覧
任意同行
犯人とおぼしき被疑者に対して外で話を聞くことはありません。必ず任意同行を求めて取調室で事情聴取をします。
それ以外にも任意同行して取調室で話を聞くのは以下のような相手になり、アリバイを聞く等を行います。
- 任意同行を求める相手
- 殺人事件の場合、被害者と死亡時刻近くに会話・電話・メール・メッセージのやりとり等をしていた人
- 被害者と一時期だけやりとりが増えた人
- 動機がある人
真犯人は任意同行を渋りません。任意同行を渋るのは警察嫌いや叩けば埃が出る人ですが、「今日は帰るけど、来週は来てもらうから」「とにかく一度話を聞かなきゃいけないから」等のプレッシャーをかけると大抵は任意同行に応じてくれるそうです。
逮捕
逮捕とは、被疑者が逃亡したり証拠隠滅を防止するためにその身柄を拘束することです。被疑者がその場にいない殺人や窃盗等の犯罪であれば、裁判所に請求して発付された逮捕令状を元に被疑者を逮捕します。
- 逮捕時に最初にするのは時刻の確認
- 逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を書類・証拠物件とともに検察に送致しなければならないため、逮捕時の時刻が重要となります
- 逮捕時に「○○時○○分、逮捕」とやるのはこのタイムリミットの起算点となるため
- 刑事部屋のホワイトボードにも逮捕時間を書き出したりしてあります
- 逮捕直後であれば、凶器等を持っていないか身体捜検を行うことができます
暴れたり逃走の恐れがある被疑者に対してはその場で手錠をかけます。そうでない相手や自宅で逮捕となって家族(特に子供)がいる場合はその場で手錠をかけずに、警察署へと連行し到着する前に手錠をかけます。
逮捕された被疑者は必ず司法警察員(巡査部長以上の警察官)に身柄を引き渡され、犯罪事実の要旨と弁護人選任ができる旨を告げ、弁解の機会を与えてそれを弁解録取書に記載します。
- 弁解録取書について
- タイトルは「弁解録取書」とあり、その下に以下の記載項目があります
- 住居
- 職業
- 氏名
- 生年月日、年齢
- 「本職は、○○年○○月○○日午○ ○○時○○分頃、○○警察署において、上記の者に対し、○○記載の犯罪事実の要旨及び別紙記載の事項につき告知及び教示した上、弁解の機会を与えたところ、任意次のとおり供述した。」
- その下に供述内容の記載欄
- 「以上のとおり録取して読み聞かせたところ、誤りのないことを申し立て署名○○印した」
- ○○警察署
- 司法警察員○○(氏名)(押印欄)
逮捕には以下の4種類があります。
通常逮捕
通称「通逮(つうたい)」と呼ばれ、事件発生時にその場に被疑者がいなかったり、いたとしても容疑が不充分で逮捕できなかった場合、捜査で容疑を固めて逮捕する場合のやり方です。
簡易裁判所または地方裁判所に通常逮捕令状の請求を行い、発付された令状を被疑者本人に提示して逮捕し身柄拘束します。逮捕令状請求には身柄拘束しなければならない証拠等を示す資料が必要になります。
- 逮捕令状について
- 「相応な理由」がいくつかあれば請求できます
- 現場周辺で目撃された、事件現場に足跡があった
- 「あいつが犯人だ」と睨んだら都合よく書くこともできる内容です
- 裁判所に書類を提出して1時間程度で発付されます
- 逮捕令状の基本有効期限は1週間だが、延長可能
- 「相応な理由」がいくつかあれば請求できます
通常逮捕の場合は念入りに準備をして逮捕に向かいます。必要な人員を連れていき、逃走経路になりそうな場所があれば人を配置したり車等で塞ぎます。被疑者が武器を所持している可能性があれば防刃ベスト・防弾チョッキを着用し、あらかじめ拳銃や警棒等を出して準備しておきます。
- 逮捕について
- 相手の生活サイクルにもよるものの、通常は朝6時~8時での逮捕がベストです
- 被疑者の身柄を48時間以内に検察庁に送致するまでまるまる48時間、取調べの時間を作ることができます(取調べは日中だけなので)
- 相手の生活サイクルにもよるものの、通常は朝6時~8時での逮捕がベストです
- 逮捕時に告げる言葉
- 逮捕状により被疑者を逮捕した時は、犯罪事実の要旨および弁護士を選任する旨を告げる必要があります
- 「あなたに対し、裁判所から○○の罪で逮捕状が出ている。これが逮捕状だ」通常逮捕令状を見せる。「○○は、令和○年○月○日○時頃、(中略)で○○を殺害したものである」そして認否を確認する。「どう?心当たりあるよね?認めますか?」「はい」「分かった。○○時○○分逮捕」
逮捕された被疑者は原則としてその事件を扱う所轄警察署に移送されます。
詐欺事件の場合
詐欺事件で共犯者が多数いる場合は共犯者全員の逮捕状を請求し、容疑の重い者から順番に身柄を拘束していきます。そして逮捕状の執行期限が切れそうになると、裁判所に対してその執行期限の延長手続きを取っておきます。
現行犯逮捕
通称「現逮(げんたい)」と呼ばれ、まさに犯行が行われているのを現認(目視)して、その場で即座に逮捕することで令状は不要です。
- 私人逮捕について
- 一般人でも現行犯逮捕は法的に認められていて、逮捕した後に警察に引き渡す義務があります
- これを私人逮捕と呼んでいます
- 例えば電車内での痴漢をその目で見て、相手を捕まえたりすることです
準現行犯逮捕
通称「準現(じゅんげん)」と呼ばれ、犯行は現認していないもののそれに準ずるような状況にある人を逮捕できるものです。例えば「泥棒!」と呼ばれて追いかけられている人だったり、包丁で刺された遺体があってその近くに立っている人が返り血を浴びている状態だった等です。
- 犯罪を犯して間もない状態であることが明確なケース
緊急逮捕
一定の量刑を持つ犯罪において、通常逮捕できる程度の濃厚な容疑があって今すぐにでも身柄拘束しないといけない場合において令状なしで逮捕できるというものです。なお逮捕と同時に逮捕令状の請求を行う必要があり、裁判官によって逮捕令状の発付が認められなかった場合は直ちにその人を釈放しなければなりません。
- 一定の量刑とは
- 死刑、無期懲役、3年以上の懲役・禁固にあたる犯罪
別件逮捕
本来の事件の罪状(殺人事件等)で任意同行したものの口を割らない被疑者に対して、もっと話を聞くために別の犯罪(窃盗や傷害等)で逮捕し取り調べることです。
どんな容疑でもいいわけではなく、その別件で必ず起訴できることが条件となります。
自首/出頭
自首と出頭はどちらも一般的に似たイメージとなり「罪が軽くなる」と思われているものの、実際は異なるものです。
自首
刑法で規定されている「自首」とは、犯罪の事実や被疑者が分かっていない状態で犯人自らが捜査機関に犯罪の事実を告白して処分を求めるものとなるものです。
刑法上は自首であれば罪を軽減できるとありますが、必ず情状酌量されて減刑されるとは限りません。
出頭
既に犯罪が明るみになって被疑者が特定されている状態で、その被疑者が警察署や交番に出向くことを「出頭」と呼んでいます。
出頭については法律上の規定がないため罪の軽減がなされません。しかし情状酌量が考慮されないとも限らないものとなります。
勾留
逮捕した被疑者の身柄を警察本部や警察署、拘置所等で拘束し勾留しながら、取調べを続けて容疑を固めていきます。起訴前に勾留できる期間は最大20日間となっており、この勾留満期日までに検察官は被疑者を起訴するか不起訴処分とするかを決定します。
- 勾留について
- 「勾留」は上記の通り刑事裁判までの拘束期間を意味しており、「拘留」は「1日以上30日未満の収監」という刑事罰の一種類となります
- 検察に送検されるまで48時間となり、検察が起訴・不起訴を判断する持ち時間が24時間、それでも判断がつかずに捜査等が必要な場合は10日の延長ができ、その後さらに10日延長できます
- つまり最長で2+1+10+10=23日間の勾留が行われることになります
留置
取調べは刑事部や刑事課で取調官となった警察官が行うものの、留置場での勾留に関わる諸業務は総務部留置管理課や警務課留置管理係の警察官が実施します。
- 刑事部/刑事課が留置業務を行わない理由
- 以前は刑事部や刑事課の警察官が留置を担当していたものの、昭和55年の被疑者留置規則の改正を受けて「捜留分離」の原則が設けられたため留置専門の警察官が必要となりました
- 事件の捜査をしている警察官が「留置場でも被疑者に圧力をかけて自白を強要している恐れがある」と批判されたため
留置管理係は取調官から被疑者の身柄を預かり、被留置者の安全確保と留置場の治安維持のために被疑者の身体検査と所持品検査を行います。なお捜留分離の観点からこれに捜査員が立ち会うことはありません。
- 身体検査・所持品検査について
- 体重や身長の計測等の身体検査
- 全裸にさせて台の上に上がらせ、目や鼻、耳、口の中、性器、肛門に至るまで徹底的にチェックされる
- 所有物は全て取り上げられ保管されます
- 指紋の採取、写真撮影
- 所有物の保管手続き
- 体重や身長の計測等の身体検査
これを済ませてから取調べに移ります。
- どんなに取調べが重要な局面に差し掛かっていても、時間になれば留置管理係の警察官が「食事の時間です」と被疑者を迎えに来ます
取調べ
送致
送致とは警察での取調べを含む捜査が終わり、刑事告訴のために事件を検察庁に引き渡すことです。逮捕から48時間以内に引き渡す必要があります。
- 「送致」と「送検」の違い
- 「送検」はマスコミ用語で警察官は使いません(分かりやすいですが)
- その被疑者を始めて検察官に送ることを「新件送致」とも呼んでいるそうです
検察庁に引き渡すのは事件そのものであり、逮捕しているのなら被疑者の身柄と、捜査して集めた証拠物件等を含む全てとなります。
- 書類送検について
- 「書類送検」もマスコミ用語で、これは証拠物件だけで身柄を含んでいない送致に当たります
- 事件が発生し被疑者が分かったとしても逃亡の恐れがなかったり等、必ずしも逮捕して身柄拘束されるわけではないためです(そういう事件の場合は「書類送検」され「在宅起訴」となります)
事件を引き渡された検察側の持ち時間は24時間で、その間に被疑者の取調べや書類のチェック、証拠物件の確認をしなければなりません。時間が足らず必要と判断した場合、持ち時間を10日延長できる「勾留請求」が可能で、それでも足らなければさらに10日延長ができます。それでも足らずタイムリミットを迎えた場合は「証拠不十分で釈放」となります。
- 検察官が被疑者の取調べをするものの、せいぜい「罪状認否するかどうか」を聞く程度だそうです
- 勾留請求を受けた地方裁判所は被疑者に対して勾留質問を行い、勾留を認めるかどうかの判断を下します
- この時も裁判官が被疑者に罪状認否するかどうか聞きます
- 大抵の場合は勾留請求が認められるそうです
- さらに追加する10日もほとんどの場合は認められるそうです
ほとんどの場合において勾留場所は警察署の留置場で検察側の持ち時間の間に取調べをするのも警察のままなので、警察側の感覚としては「検事にお願いして20日の時間をもらった」となるそうです。検事側も「自分の持ち時間を警察に使わせてやっている」感覚らしいです。
- 勾留延長する20日は全て警察の捜査に充てられ、検事自身による取調べは実務上限定的なものになります(上記の罪状認否ぐらいか)
- 要は警察が捜査をして逮捕したものの身柄を引き渡された検察側が「これじゃ起訴しても勝てない、さらに容疑を固めろ」となった場合の捜査というイメージのようです
起訴・不起訴
検察が被疑者に対して有罪を求めるために刑事裁判を起こし、裁判所で公判を開きます。起訴手続きによって起訴された後の被疑者は「被告人」と呼ばれます。
警察から事件を送致されたものの検事が「これはやっていない」と判断されれば不起訴処分となります。
保釈
起訴された被告人の多くは裁判が終わるまで身柄を拘束されていますが、原則として被告人が保釈を請求した場合、裁判所はこれを認めなければなりません。
- ただし刑期の下限が1年以上の犯罪や常習犯、証拠隠滅や被害者・証人に対して危害を加える恐れがある場合は認められません
- 保釈を請求して認められるのは全勾留者の12~13%程度
保釈が認められた場合、被告には保釈保証金(保釈金)を収める必要があります。保釈が取り消されずに判決が確定(有罪または無罪)すれば全額が返還されるものの、逃亡を企てたり証拠隠滅しようとしたことが分かれば没収されます。
- 保釈金の金額
- 刑事訴訟法では「犯罪の性質・情状・証拠の証明力・被告人の性格及び資産を考慮した金額」となっています
- つまるところ「被告人にとってその金額が返ってこなかったら困る」額になります
- 「なくても困らない額」では保証金にならないため、裕福な人は高額、貧しい人はそれなりの額になります
- 概ね150~500万円程度
- 著名人の保釈金
- 村上世彰(投資家)
- 村上ファンド事件、インサイダー取引の容疑で逮捕
- 5億
- 堀江貴文(実業家)
- ライブドア事件、証券取引法違反の容疑で逮捕
- 3億
- 浅田満(実業家)
- ハンナン事件、贈賄容疑で逮捕
- 20億円
- カルロス・ゴーン
- 金融商品取引法違反容疑で逮捕
- 15億円
- 村上世彰(投資家)
時効
正確には「公訴時効」と呼び、犯罪が完了してから一定期間が経つと公訴が提起(起訴)できなくなるものです。刑事訴訟法に記載があります。
- 公訴時効なし
- 殺人・強盗殺人等
- 人を死亡させて死刑になる犯罪は公訴時効なし
- 30年
- 強姦致死・強制わいせつ致死等
- 人を死亡させて無期懲役になる犯罪
- 25年
- 現住建造物等放火・現住建造物等侵害・外患誘致・外患救助等
- 人を死亡させていない、死刑に当たる罪
- 20年
- 傷害致死・危険運転致死等
- 人を死亡させて20年の懲役に当たる
- 15年
- 強盗強姦・身代金目的略取・通貨偽造等
- 人を死亡させていない、無期懲役に当たる罪
- 10年
- 業務上過失致死・過失運転致死・強盗・傷害等
- 人を死亡させて20年未満の懲役に当たる罪、または人を死亡させておらず15年以上の懲役に当たる罪
- 7年
- 窃盗・詐欺・恐喝・業務上横領等
- 人を死亡させておらず15年未満の懲役に当たる罪
- 5年
- 未成年者略取・受託収賄等
- 人を死亡させておらず10年未満の懲役に当たる罪
- 3年
- 暴行・名誉毀損・過失傷害・威力業務妨害・器物損壊等等
- 人を死亡させておらず5年未満の懲役に当たる罪
- 1年
- 侮辱・軽犯罪法違反等
- 拘留・科料に当たる罪
被疑者が国外にいたり逃亡していて起訴できない状態にある場合は時効の進行が中断されます。また、時効成立後に被疑者が自首してきた場合、本人が犯罪を認めていて証拠があったとしても起訴できません。
- 時効成立後に被疑者が犯罪を告白した例
- 刑事による起訴はできなくなりますが、民法による民事訴訟は起こすことができます
- しかし民事にも時効があります
- 傷害を受けて被疑者が時効を迎えたとしても、民事で損害賠償請求をする等の措置を取ることが可能です
時効がなぜあるのかは定かではありませんが、長い時間が経過すると証拠の散逸等で捜査が困難になる、一定期間が経過した事実や状態に関してはそれを尊重して法律上の保護・安定を与えるべきである、等があるようです。