[警察小説メモ] 参考資料・リンク

書籍

誘拐(本田靖春/ちくま文庫/2005年)

昭和中期の重大事件と言われる吉展ちゃん誘拐殺人事件を描いたノンフィクションです。東京オリンピックを翌年に控えて日本全体が高度成長期に入ったその中で、福島の田舎から出てきた足にハンディキャップを持つ青年がいかにして誘拐をし殺人をするに至ったか、そこに焦点を当てた作品です。

さらには被害者の家族が日本全国の好奇の目にさらされ、慰められるはずの彼らですら悪意を持った人々からの攻撃に合う様子や、まだ捜査手法が確立されていない状態での誘拐事件に遭遇した警察官たちの失態と後悔という、現代にも通じる当時の人々の苦悩も解像度高く伝わってきます。

一言でまとめるとすれば「好景気で沸き立ち光が差す日本の影の部分」を描いた作品だと言えるでしょう。

犯人も分からず特別捜査本部も解散され数人の専従捜査員だけが細々と調べていく中、当時の警察が持つ弱点を知り抜き、上司や同僚たちから否定されながらも再捜査を突き進め、結果的に犯人を自白に追い込む平塚八兵衛という稀代の名刑事の凄さも知ることができる良書です。

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警視庁組織犯罪対策部(相馬勝/文庫ぎんが堂/2011年)

著者は産経新聞外信記者として活躍されていたジャーナリストの方です。本書は2010年ぐらいの警視庁組織犯罪対策部について、特に中国人犯罪組織の蛇頭(じゃとう)と彼らが起こした様々な犯罪とその手口について詳しく解説している良書です。

「頭を潰さない限り死なない」蛇頭がどうやって誕生し、どんな方法で中国人を集めて不法入国させているのか。そして密入国者たちが様々な方法で日本人の金を奪い、そうした彼らが言葉も文化も知らない日本で生きていくために蛇頭の違法インフラに縋りながら、それでも人の子らしく故郷の父母を想う――そんな矛盾に満ちた犯罪者たちの素顔と実態が見られます。

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警察の裏側(小川泰平/文庫ぎんが堂/2013年)

元神奈川県警察の警察官の小川泰平さんが執筆されており、所轄署と神奈川県警察本部の盗犯刑事として活躍した経験や自身の給与明細等、文字通り警察の裏側を紹介している良書です。

小川泰平さんの経歴としては、高校卒業後に18歳で警察官になり、警察学校卒業後は交番勤務から、管区機動隊、留置場担当官、所轄警察署の刑事一課盗犯係、警察本部機動捜査隊、巡査部長に昇任後は所轄警察署の盗犯係から、警察本部刑事部捜査三課、刑事総務課、国際捜査課、警察庁刑事局刑事企画課を経て、最後は麻生警察署勤務で退官されています。

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刑事ドラマのリアル(小川泰平/文庫ぎんが堂/2013年)

元神奈川県警察の警察官の小川泰平さんが執筆されており、刑事ドラマのリアリティについて説明している書籍です。小説や脚本を書くときにちょっと入れる「リアリティさ」の元ネタとしてはうってつけの1冊だと思います。

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警視庁捜査一課殺人班(毛利文彦/角川文庫/2013年)

著者は警察問題等を取材されている方で、本書は実在する事件についてのノンフィクションとなっています。事件の発生から捜査、逮捕、取調べと起訴に至るまでが分かりやすく、リアリティがあって臨場感たっぷりに書かれている良書です。

特に取調室での取調官と被疑者・関係者との攻防や、取調べに対する姿勢、研鑽の内容についてはかなり深く書かれています。

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警視庁科学捜査最前線(今井良/新潮社/2014年)

著者はNHKの報道局でニュース制作に携わったジャーナリストで、本書は警視庁の捜査支援分析センターの活動を中心に、監視カメラ映像の分析や警察が持つシステムがどう事件解決に役立ったかの事例を挙げています。

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刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる 警察入門(オフィステイクオー/実業之日本社/2014年)

警察に関して表面的・横断的に説明されている入門書で、警察以外にも捜査権・逮捕権を持つ仕事(国税調査官)の種類についても触れられていました。刑事ドラマをよく見ている人なら誰でも知っているような作品の登場人物の階級についての話が面白いと思います。

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警察マニアックス(三才ブックス/2016年)

警察官の装備品やパトカーの詳しい名称や役割など、タイトル通りマニアックな情報が多いです。活動の様子や細かい持ち物についての描写では必ず必要になる一冊だと思います。

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警視庁監察係(今井良/小学館/2017年)

著者はNHKの報道局でニュース制作に携わったジャーナリストで、本書は警察の中の警察、警視庁の監察係がどういった活動をしているのかについて、実際の事例を交えて詳細に書かれています。NHK/民放で警視庁担当のキャップを担当していた著者だけに、記者会見の様子等がよく伝わってきます。

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ホントの警察(警察ネタ研究会/ダイアプレス/2017年)

警察に関して表面的・横断的に説明されている入門書で、交番のお巡りさんの業務や刑事の仕事等について触れられています。

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ハコヅメ~交番女子の逆襲~(泰三子/講談社/2018~2023年)

新任の女性警察官を主人公に据えた警察あるあるネタとその裏に流れる大きなストーリーが「ハコヅメ」につながる漫画作品です。(全23巻)

著者が元警察官の女性なだけあって特に女性から見た警察とそこに関係してくる一般社会の見え方が新鮮で、改めて警察官という仕事の大変さ、素晴らしさを実感できる作品です。実際に警察官として活躍されていただけあって、事件の起こり方や捜査などの描写が細かく正確なのでかなり参考になります。

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スピンオフ作品「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」では、読者の間でも人気の高い生活安全課の黒田カナの活躍とその後が分かります。こちらは全編シリアスですが、非常に参考になる作品です。

風俗警察(今井良/角川新書/2019年)

著者はNHKの報道局でニュース制作に携わったジャーナリストで、本書は風俗関係の取締りを担当している警視庁生活安全部保安課の活動を中心に、違法風俗店/乱交パーティーでの売買春の実体や違法賭博の仕組み、猥褻物とは何かについて実際の事件を参考に詳しく解説している良書です。

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警察庁長官(野地秩嘉/朝日新書/2021年)

ノンフィクション作家の著者が歴代の警察庁長官とのインタビューを通じて、彼らが日本の将来をどう見ながら警察庁長官として警察を導いてきたのか、その功績と合わせて紹介している良書です。警察と言えば現場が重要でキャリアはお役所仕事しかしないイメージがありますが、そうではなく、キャリアとして警察の上に立った彼らが日本の治安と真剣に向き合っていかに犯罪を減らすために日夜考えて行動しているのかが分かる本です。

インタビューされている元警察庁長官は以下の方たちです。

  • 米田壮(よねだ・つよし)、第24代警察庁長官
  • 吉村博人(よしむら・ひろと)、第21代警察庁長官
  • 田中節夫(たなか・せつお)、第18代警察庁長官
  • 國松孝次(くにまつ・たかじ)、第16代警察庁長官

警察の歴史にも触れられていて、その成り立ちが詳しく解説されています。また、既に故人のためインタビューはされていませんが、日本の警察庁長官として活躍しその後政治家として内閣官房副長官も務めていた後藤田正晴(ごとうだ・まさはる)氏のくすっと笑えるエピソードも多数あって、大変興味深かったです。

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