刑事部は刑法犯罪の捜査のうち殺人や傷害・誘拐といった強行犯を担当するセクションです。犯罪の種類に応じて捜査方法も異なるため部署も多くなっています。
捜査第一課は殺人や強盗等の凶悪事件を担当、捜査第二課は詐欺・横領・紙幣偽造・選挙違反等の経済犯や知能犯、捜査第三課は窃盗犯を扱っています。警視庁は暴力団関係の担当を「組織犯罪対策部」として独立させた組織で対応しているものの、他の道府県では刑事部の中に置いているケースもあって、その場合は組織犯罪対策課となっていることもあります。
警視庁における刑事部の組織構成は以下の通りです。
- 捜査第一課
- 捜査第二課
- 捜査第三課
- 鑑識課
- 捜査共助課
- 機動捜査隊
- 科学捜査研究所
- 捜査支援分析センター
目次
捜査第一課
捜査第一課(通称・捜査一課)は殺人・強盗・誘拐・放火・性犯罪等の強行犯を扱い、社会的な不安を煽るような事件やメディアで扇情的に報道される類の犯罪を担当しているため、様々な部署がある警察の中でもっとも注目される「看板」として扱われるセクションです。
- 捜査第一課の捜査員のみ「s1s mpd」という赤地に金色のバッジを着けることができます
捜査第一課の構成は以下の通りです。
- 捜査一課長
- 理事官(2名、警視)
- 対策官(1名、警視)
- 管理官(13名、警視)
- 第一強行犯捜査
- 強行犯捜査第一係(庶務)
- 強行犯捜査第二係
- 現場資料班
- 強行犯捜査第三係
- 初動捜査班
- 科学捜査係
- 第二強行犯捜査
- 殺人犯捜査第一~三係
- 第三強行犯捜査
- 殺人犯捜査第四~五係
- 第四強行犯捜査
- 殺人犯捜査第六~七係
- 第五強行犯捜査
- 殺人犯捜査第八~九係
- 第六強行犯捜査
- 強盗犯捜査第一~四係
- 性犯捜査第一~二係
- 第七強行犯捜査
- 火災犯捜査第一~二係
- 第一特殊班捜査
- 特殊班捜査第一~二係
- ハイテク犯罪捜査係
- 第二特殊班捜査
- 特殊班捜査第三~五係
- 特命捜査対策室
- 特命捜査第一~六係
- 第一強行犯捜査
1つの係の人数は10名前後です。筆頭は警部の係長1名で、それを補佐する警部補が4~6名、係員となる巡査部長や巡査が3~4名で構成されています。係内の結束は強く、係長の名前を取って「○○班」「○○一家」「○○軍団」などと呼称されることもあるそうです。
係を掌握しているのが13名の管理官(警視)で、1名あたり1~6係を担当し、その係が関わっている捜査本部事件の指揮と把握を行っています。捜査本部においては捜査一課長の名代として実質的な最高指揮官となります。
- 人数
- 警視庁における2012年時点の課員数は364人(うち女性警察官は17人)
- (いつの時点かは分かりませんが)徳島県警の捜査一課は10人ほどだったそうです
捜査一課長
捜査一課長はノンキャリアで階級は警視正です。警視庁の看板たる組織の長であり、その就任はメディアで取り上げられるぐらいのニュースバリューがあります。
- 記者クラブ加盟報道機関の「仕切り」記者(加盟報道機関内でのリーダーとなる記者)が情報を求めて毎晩、捜査一課長の自宅を訪ねて取材しています
- 1社あたり10分程度の取材時間
一課長室は10畳ほどの広さで、入口そばにソファーとテーブルが置かれています。中央のデスクには「捜査一課長 警視正 ○○」と印字されたプレートが置かれています。デスクの正面上部には、歴代の捜査一課長の名前が記載された木製のボードが掛かっています。
報道各社に対する捜査一課長の定例会見は平日の11時にこの課長室で行われます。
- 余談
- テレビドラマ「警視庁・捜査一課長」では放送開始の2012年から主演の内藤剛志が長く捜査一課長を演じており、しばしば本当の警察官から黙礼を受けたり「一課長」等の役職で声をかけられたりすることがあったそうです
強行犯捜査第一係(庶務)
捜査一課内の庶務と強行犯捜査の連絡調整を行います。
強行犯捜査第二係(現場資料班)
特定の事件捜査に携わることはなく、捜査一課の頭脳・アンテナとしての役割を担っているセクションです。捜査一課が抱えるありとあらゆる事件の捜査状況を把握するという特別な係になります。
- 捜査一課長のスケジュール管理
- 捜査一課長の定例記者会見は平日の11時から課長室で行われていますが、この時間に捜査一課長が不在だと記者たちに重要事件発生というネタの端緒を与えてしまいます
- そうならないように、捜査一課長が定例会見の時間に不在とならないようなスケジュールの調整をしています
- 秘書のような役割
- 捜査一課が抱える全ての事件を把握
- 捜査本部が捜査一課宛てに捜査状況を報告する場合の窓口となっています
- 現場資料班は全ての強行犯捜査係が関わっている事件の捜査状況をまとめて捜査一課長に提出しています
- この資料は捜査一課長から刑事部長、警視総監に報告が上げられるさいにも活用されます
- 身代金誘拐事件が発生して報道協定を報道機関に要請する実務も現場資料班が担います
- 通信指令本部が受けた通報で捜査一課への同報電話をかけた場合、それを受けるのが現場資料班になります
- その他
- 穴掘り事件(失踪者が殺害されている可能性が高く、その場所を特定して物理的に掘り起こす必要が出てきた事件)では、穴を掘るための機材・陣容も全て現場資料班が手配します
- 現場によってはユンボ等の手配も
- 信頼できる業者に詳しい説明をせず「明朝○○時に××までユンボと運転手を派遣してほしい」と手配します
- 穴掘り事件(失踪者が殺害されている可能性が高く、その場所を特定して物理的に掘り起こす必要が出てきた事件)では、穴を掘るための機材・陣容も全て現場資料班が手配します
構成
庶務担当管理官が直轄しており、13人いる捜査一課の管理官の中でも最古参の筆頭管理官となります。庶務担当管理官の多くがその後に捜査一課長に就任しています。筆頭警部以下9名で構成されています。
- 捜査一課の全ての事件を知っているだけあって記者たちが追い回す対象となるため、捜査一課の中でも特に口の固い警察官が配属されます
施設
警視庁本部6階、捜査一課大部屋内の通路脇に部屋があります。通信指令本部の指令台と直接繋がっている同報電話、警視庁の方面メガ(方面系の周波数にセットされた無線機)、機動捜査隊の専用メガなどの無線機がずらりと並んでいます。その中で現場資料班の警察官たちは交代で上記の無線を傍受しています。
強行犯捜査第三係(初動捜査班)
初動捜査を行います。
科学捜査係
科学捜査に関わる遺留品捜査を行います。事件現場に残された遺留品の中から証拠品として鑑定すべき物を選別するため、別名「遺留品係」と呼ばれています。
- TVドラマ遺留捜査の主人公・糸村がこの係の所属です
「C.S.I」と印字された帽子を被り、鑑識課員と同じ紺色の活動服姿をしています。
第二~五強行犯捜査
殺人犯捜査第一係~九係
通称「ナンバー班」と呼ばれています。殺人・傷害その他生命身体に関わる犯罪や、部内他課の分掌に属さない犯罪の捜査を担当するセクションです。
特殊な場合を除いて、殺人犯捜査係は事件発生直後に初動捜査で動くことはありません。初動捜査の担当捜査員達が事件性を見極めた上で、捜査一課幹部が「特別捜査本部開設の必要がある」と判断して初めて出動が下されます。
- 出動が下命される殺人犯捜査係は在庁番と呼ばれる係(抱えている捜査本部がなく、本庁の捜査一課大部屋で待機している)
- 回転方式は、在庁番が3係あるとしたら以下のようになります
- A係: 表在庁、8時~17時まで捜査一課の大部屋で待機
- B係: 裏在庁、自宅待機(A係が出動になると出勤して表在庁になります)
- C係: 裏の裏在庁、実質的な休暇
- 上記のサイクルを1週間か5日程度で回転させています
第六強行犯捜査
強盗犯捜査第一係
強盗犯の手口資料を管理します。
強盗犯捜査第二~四係
強盗犯罪の捜査を担当します。
性犯捜査第一~二係
強姦や強制猥褻犯罪の捜査を担当します。
火災犯捜査第一~二係
放火の捜査を担当します。火災現場で集めた灰を地道に鑑定するという、気の遠くなるような採集作業を日々続けるそうです。
第一特殊班捜査
第二特殊班捜査も含めた特殊班としての設立は1964年です。前年に発生した吉展ちゃん誘拐事件で被疑者を取り逃がし被害者の命も救えなかったことから、誘拐捜査専門チームとして設立されたという経緯があります。
特殊班捜査第一係
誘拐・人質立てこもり・ハイジャックに係る捜査を担当するセクションです。英略名は「SIT」(Special Investigation Team の略称)。
- 実際は捜査一課特殊班のローマ字読み「Sousa Ikka Tokusyuhan」の頭文字から取ってつけたそうです
- 特殊班捜査の存在を外部に知られないため適当に付けたものでしたsが、在外公館勤務経験のある管理官が「Special Investigation Team」の略称だと受け止めてそれが公式となったとか
- SITは警視庁特有の略称です
- 大阪府警はMAAT「Martial Arts Attack Team」の略
特殊班捜査第二係
電話・文書による脅迫事件の捜査を担当します。
ハイテク犯罪捜査係
インターネット脅迫事件等の捜査を担当します。
第二特殊班捜査
特殊班捜査第三係
大規模事故の原因調査、医療過誤捜査を担当します。
特殊班捜査第四係
業務上過失致死事件の捜査を担当します。
特殊班捜査第五係
特殊班に係る重要特異事件の捜査を担当します。
特命捜査対策室
2009年に設立された重要未解決事件の検証及び継続捜査、強行犯に関わる特命捜査、匿名事件の捜査を行うセクションです。2010年に時効廃止法案が可決されたのを受けて設立されたと思われます。
室長は捜査一課のベテラン警視が担当しています。
- 東京では1999~2009年の10年間で特別捜査本部が設置された凶悪犯罪174件のうち、約50件が未解決のままになっています
- 全国でも発生から1年以上経過した長期未解決事件が毎年20~30件程度あります
- 2010年時点で累計358件あります
- 東京都江東区白河にある警視庁深川分庁舎に拠点があります
- 総勢80名体勢
特命捜査第一~六係
特命捜査第一係は「オウム特別対策班」と位置づけられていたものの、2012年の一連の特別手配犯の逮捕でその役目を終えました。それ以降は他の係と同じく未解決事件の捜査を行っています。
勤務
捜査一課の警察官たちは日勤のため、通常の勤務時間は8:30~17:15になります。捜査員として事件を担当していない場合はそれまで担当した事件の捜査ファイルの精査等を行って過ごしています。
捜査本部が設置され捜査員として投入された場合は割り振られた担当の捜査をするため、時には徹夜や早朝に出かける等、他の捜査員と同じように働きます。
捜査第二課
贈収賄・詐欺・背任などの知能犯・経済事犯を扱うセクションです。捜査第二課の課長は慣例として警察庁の若手キャリアが配属されます。そのため課を実質的に取り仕切るのはベテランの課長代理になります。
- メモ
- (いつの時点かは分かりませんが)徳島県警の捜査二課は20人ほどだったそうです
- 終日書類を相手にして法律的な処理を行う仕事だそうで、そのため二課の刑事は物静かなインテリタイプが多いそうです
捜査第三課
泥棒・スリ等の窃盗犯を扱うセクションです。
- 窃盗犯は同じような手口で何度も犯行を行う可能性が高いため、家宅侵入や窃盗の手口を捜査する「手口係」も存在します
- スリ・金庫破り・空き巣などは職人技を持つ犯人が多いです
- その手口を見極めるため実績や経験の豊富な警察官が重宝されます
鑑識課
事件現場の記録と観察、遺留品の採集と鑑定が主な仕事になります。24時間体制で待機し、事件発生とともに現場へと駆けつけて鑑識活動を行います。対象となるのは殺人事件だけではなく、強盗・放火・盗犯等のあらゆる事件に臨場するため、極めて多忙なセクションです。
古い刑事ドラマ等で捜査一課の捜査員からあれこれ指示を受けたり邪魔者扱いされたりするシーンがたまに見受けられますが、刑事部の中では捜査第一課と同列になる組織のため演出が多分に交じったシーンだと言えます。
捜査においては現場に遺留された証拠物件の確保が最優先であり、逆に鑑識課員が捜査員の立ち入りを制限したり禁止したりしています。
鑑識課長は刑事警察経験者の警視が就任し、鑑識課長経験者は例外なく捜査一課長に就任するそうです。
- 事件発生時に臨場するのは鑑識課の現場鑑識・現場指紋・現場足跡係
鑑識課の組織構成は以下の通りです。
- 第一現場鑑識
- 鑑識管理係
- 鑑識対策係
- 現場鑑識第一~四係
- 身元不明相談室
- 第二現場鑑識
- 現場鑑識第五係
- 警察犬係
- 検視
- 検視第一~三係
- 指紋
- 現場指紋係
- 指紋照合係
- 指紋理化係
- 指紋資料係
- 現場足跡係
- 写真
- 現場写真係
- 特殊写真係
- 資料写真係
第一現場鑑識
現場鑑識第一~四係は当番制で事件に対応しています。統括しているのは鑑識経験が豊富な警視です。
鑑識管理係
鑑識課内の庶務と身元不明者の調査を担当しています。
鑑識対策係
現場でのDNA採集と特命事件の鑑識活動を行います。
現場鑑識第一~四係
機動部隊であり、DNA採集と現場図面の作成を担当します。
身元不明相談室
身元の分からない遺体についての情報を集約しています。
第二現場鑑識
現場鑑識第五係
現場鑑識第一~四係と同じ機動部隊ですが、多摩地域を担当しています。
警察犬係
警察犬の管理と運用を担当しています。訓練所は第一・第二訓練所の2カ所あります。
警察犬の仕事は主に以下の3種類があります。
- 足跡追及活動
- 現場の遺留品の臭いからその足取りを追跡します
- 行方不明になった人の臭いを嗅がせて足取りを追跡します
- 周期選別活動
- 遺留品と被疑者の臭いが一致するか確認します
- 捜索活動
- 一定の地域内から対象人物・物品を探します(スーツケースから麻薬を探す等)
犬種の登録数はシェパードが多いそうです。その他にもドーベルマン、エアデール・テリア、コリー、ボクサー、ラブラドール・レトリバー等がいます。
- 犬種
- 犬種は日本警察犬協会によって指定されています
- 警視庁の警察犬の一部が紹介されています(警察犬プロフィール)
- たまに柴犬やトイプードルもいるようです
- 2010・2011年に奈良県警察でチワワが採用されたケースもありました1
- 犬種は日本警察犬協会によって指定されています
検視
変死体を解剖せずに調査して、死亡の種類(病死・自殺・他殺)や事件性の有無、死因、死亡推定時刻や凶器等を調べます。検視を行うのは検視官であり、検視官が調査した死因を認定するのは監察医となります。
- 2012年に警察が取り扱った死体の数は約174,000体
- 検視官の臨場率は49.7%
- 医師が死亡診断書を作成できるのは、その死亡者が24時間以前に医師にかかっていた場合に限ります
- 前日に医師の診察を受けていない状態で自宅で死亡していた場合は「変死」扱いとなり、検視が必要になります
- 検視官による調査の結果、事件性がないと判断された場合は早くて半日程度で遺体が自宅に返されます
- そのまま葬儀場・斎場などへ搬送してもらうことも可能です
- しかし念のための解剖に回されることもあるため一概には言えないようです
検視官は刑事警察の経験が豊富な警視が担当します。(大抵の検視官は本部捜査一課と鑑識を経験しているようです)最低でも7~8年の検視キャリアを必要とし、法医学教室での講習も義務づけられています。
- 検視官の仕事について
- 見立てが違っていた場合は初動捜査が遅れるため、検視官のプレッシャーは相当なものになります(疲労と胃痛との闘いになっているそうです)
- 現場に入った瞬間から頭をフル回転させて無言になるため、周りも無言になるそうです(それを知らない警察官がいようものとなら無言で制止させられるとか)
検視第一係
警視庁本部にあり、7名の検視官が在籍しています。
検視第二係
石神井合同庁舎にあり、2名の検視官が在籍しています。
検視第三係
多摩総合庁舎にあり、4名の検視官が在籍しています。
指紋
現場指紋係
現場での指紋採集を行います。第一~十班が編成されており、それぞれ警視庁の第一~十方面の担当になっています。
統括しているのは鑑識・指紋一筋の警視クラスの警察官です。
指紋照合係
指紋の照合を担当しています。
指紋理化係
指紋採集の技術開発を担当しています。
指紋資料係
指紋データベース用の資料管理を担当しています。
現場足跡係
現場での足跡採集を担当しています。
写真
管理官(警視)が統括し、副主幹と呼ばれる2名の警部が在籍しています。
現場写真係
事件現場の写真撮影、逮捕された被疑者や指紋・足跡の写真撮影を担当しています。指名手配の写真は前歴者として写真データが存在する場合、焼き増しして関係各課に配布されています。
特殊写真係
赤外線や紫外線を用いた特殊な写真撮影や写真計測、画像処理などの特殊処理を担当しています。鑑識写真に関する技術研究・開発に関する業務を行っています。
資料写真係
被疑者の写真資料の閲覧・管理を担当し、モンタージュ写真・似顔絵の作成も行っています。
- モンタージュ写真
- かつては主流だったようですが、写真を合成して作られたリアルなもののため見た人がわずかな特徴の違いでも別人だと思ってしまうことがあるらしく、現在は廃れているようです
- 似顔絵
- モンタージュ写真より優れているとして捜査の現場で重宝されているようです
- 警視庁の事件捜査現場ではおよそ9割が似顔絵を活用しています
- 似顔絵を描くのは「似顔絵捜査官」が担当します
- 重要事件の場合は直ちに臨場して、目撃者の証言から被疑者の特徴を聞いて似顔絵を作成します(似顔絵捜査官が手がけると1時間以内で似顔絵を描くことができるそうです)
- 所轄の警察署にも似顔絵を描く警察官がいるものの、専任の職員ではなく、パトカーや交番勤務をする警察官の中から絵心のある者を選抜し教育を受けさせています
- 似顔絵を描いて目撃者に見せて似ている割合をパーセンテージで表わしてもらいながら、何度も書き直して精度を高めていきます
- 証言通りにきっちり描くと、絵に似た雰囲気の人がいても少し違うだけで通報してくれないため、印象を付けすぎないようにぼやかすように教育されています
- モンタージュ写真より優れているとして捜査の現場で重宝されているようです
外見・装備
- 帽子にマスク姿
- 靴には不織布の靴カバー
- 腕にはアームカバー
- 紺色の活動服、背中には「警視庁 INVESTIGATION」の黄色の文字
- ジュラルミンケースから道具を取り出して黙々と作業する姿
- 髪は短髪
- 長髪の人は異動後すぐに「坊主にしろ」と言われます(そういう規定はないようですが、現場に髪を落としたりしないよう心構えとして喝を入れられるとか)
捜査共助課
捜査共助課は他の道府県警察と協力して、犯罪捜査の連絡・共助、指名手配犯の通報、指名手配犯の追跡捜査等を行うセクションです。
その中でも有名なのは見当り捜査班(通称「ミアタリ」)と呼ばれるチームであり、指名手配犯捜査のスペシャリストでわずか10数名の捜査部門ながら1年間に逮捕する被疑者は100人にも及びます。
- ミアタリについて
- 厚さ8cmの小さなファイルに保存されている3,000枚以上の全国指名手配犯の顔を記憶し、雑踏から見つけ出して逮捕します
- ある捜査員は16年間で3,000人以上の指名手配犯の逮捕に携わってきたそうです
機動捜査隊
機動捜査隊は通称「機捜」と呼ばれ、捜査車両(覆面パトカー)で持ち場を24時間のあいだ流しながら事件発生とともに急行して臨場し、初動捜査を行うスペシャリストです。
110番通報を受けて一番最初に臨場するのは事件発生地を所管する警察署の地域課(交番のお巡りさん)ですが、捜査員として臨場するのはこの機動捜査隊が一番乗りとなります。
- 捜査車両で持ち場を流すことを「密行」と呼ぶそうです
- ただ走っているだけではなく密行しながら「見当たり捜査」をして指名手配犯を捜してもいます
- 手配の顔写真を覚えて立ち回り先になりそうな場所で捜しています
- 前身となる「初動捜査班」は1959年に設立されました
機動捜査隊が初動捜査を行うのは、殺人・強盗・強姦・放火・誘拐・暴力団の抗争等といった重大事件のみとなります。
機動捜査隊の組織構成は以下の通りです。
- 第一機動捜査隊
- 所管は第一方面・第二方面・第六方面
- 第二機動捜査隊
- 所管は第三方面・第四方面・第五方面
- 第三機動捜査隊
- 所管は23区以外の多摩地域
外見・装備
- 「MIU」(Mobile Investigation Unitの略)と印字された帽子
- 「一機捜」「二機捜」「三機捜」と書かれた腕章
科学捜査研究所
科学捜査研究所は通称「科捜研」と呼ばれており、鑑識課が採集した証拠資料の中で高度な鑑定を必要とする物品がこの科学捜査研究所に持ち込まれ鑑定されます。
- 鑑定の流れ
- 犯行現場で採集された証拠資料について、最初は鑑識課で分析が行われます
- 鑑識課の鑑定でも不明な物、専門的な鑑定が必要となった物について科学捜査研究所に依頼されます
- それでも扱えないような分析・鑑定技術が必要になった場合、今度は警察庁刑事局にある科学警察研究所に依頼することになります
警察総合庁舎7階にあって総勢80名を擁しています。所長は刑事部出身の警視で、補佐する副所長の理事官と7名の管理官によって運営されています。
- 研究員の多くは警察官ではなく技官であるため、ドラマ科捜研の女のように捜査に関与することはありません(技官には捜査権も逮捕権もありません)
科学捜査研究所の組織構成は以下の通りです。
- 所長(警視)
- 副所長(1名(理事官))
- 管理官(7名)
- 第一法医
- 庶務係
- 第二法医
- 法医第一
- 法医第二
- 物理
- 電気係
- 機械係
- 文書鑑定
- 文書鑑定係
- 心理係
- 第一化学
- 化学第一係
- 化学第二係
- 第二化学
- 化学第三係
- 化学第四係
- 多摩鑑識センター
- 第一法医
第一法医・庶務係
所内の庶務、鑑定に関する様々な手続き、捜査本部・警察署からの臨場要請の受付を行います。
第二法医・法医第一係
職掌は以下の通りです。
- 血液・唾液等の鑑定及び検査
- 精液・その他体液の鑑定及び検査
- 硬組織・軟組織の鑑定及び検査
- 酵素型の鑑定及び検査
- その他医学的の鑑定及び検査
- 上記の鑑定及び検査に関する技術研究、開発
第二法医・法医第二係
DNA型の鑑定及び検査、それらに関する技術研究・開発を行います。
- 科学捜査研究所の石神井合同庁舎に置かれていて、管内の警察署・捜査本部から次々と鑑定資料が持ち込まれてくるそうです
物理・電気係
職掌は以下の通りです。
- 電気事故・火災の原因等の鑑定及び検査
- 電気配線や電気器具による出火の鑑定
- 過電流による電線の発熱、接続不良箇所の発熱、損傷等によるショート、断線、銅酸化物が引き起こす異常熱、コンセントの埃が起こすトレッキング現象
- 声紋の分類、鑑定及び検査
- その他物理学的鑑定及び検査
- 上記に関する技術研究、開発
物理・機械係
職掌は以下の通りです。
- 機械事故・交通事故の原因等の鑑定及び検査
- 機械設備の不具合等による事故
- エレベーターの事故が有名です
- 状況の正確な把握や専門的知識が必要なため、専門家とともに必ず実験を行うことになっています
- 交通事故では警視庁交通部交通捜査課交通鑑識が採集・鑑定したタイヤ痕・擦過痕・オイル痕・血痕・事故車両の損傷について、高度な鑑定が必要なものを持ち込みます
- 微量な塗膜片から車両を特定する鑑定技術があるため
- 特殊な赤外線を当ててその吸収率の違いを見る分析法や、電子顕微鏡によって断面を監察したり、X線による元素分析を行います
- 車両の塗装には個性があって(塗装が何層か、その層の厚さは等)、それらのデータベースがあるそうです
- アスファルトについたスリップ痕の長さや車両の損傷状況から事故当時の速度を推定します
- 微量な塗膜片から車両を特定する鑑定技術があるため
- 機械設備の不具合等による事故
- 銃器・刀剣類の鑑定及び検査
- 銃器・刀剣類の真正・改造の鑑定
- 腔旋痕(ライフリングマーク)によって使用された拳銃のメーカーや銃種などを推定します(腔旋痕とは発砲時に銃身内に刻まれた溝によって弾丸につく痕跡を指します)
- 痕跡の鑑定及び検査
- 銃器から発射された弾丸や薬莢、弾痕
- 金属面の末梢刻印の鑑定及び検査
- 刀剣類の研磨時に機械によってできた傷(ツールマーク)
- 銃器や車の製造番号などの刻印が末梢されたものの鑑定
- 上記に関する技術研究・開発
文書鑑定
文書鑑定科長の管理官が統括しています。
文書鑑定・文書鑑定係
職掌は以下の通りです。
- 筆跡・印影・不明文字の鑑定及び検査
- 脅迫状や犯行声明等の筆跡と被疑者の筆跡が合っているかどうか
- 領収書などの書類の文字が改ざんされていないかどうか
- 不明な文字の判定
- 印章や印の鑑定
- インク・筆記具・紙質の鑑定及び検査
- 偽造パスポートの鑑定
- 偽造通貨・印刷物・活字その他文書のの鑑定及び検査
- パソコンなどで作られた文章や新聞・チラシなどの印刷物の鑑定
- 偽造通貨・偽札の鑑定
- どんな筆記具を使ったか、紙質はどんなものか
- 上記に関する技術研究・開発
文書鑑定・心理係
職掌は以下の通りです。
- ポリグラフによる心理鑑定及び検査
- 知能検査及び性格検査による心理鑑定及び検査
- 方言鑑定その他言語心理学的事項に関すること
- 上記に関する技術研究・開発
プロファイリングも行っています。
- 2007年に京都府警察が60件の連続強姦事件をプロファイリングして次の犯行発生の高い地点をほぼ特定し、張り込んだ捜査員が犯人検挙に成功していたケースがありました
第一化学
管理官(警視)が統括している。
第一化学・化学第一係
現場に残された爆発残滓から爆発物を特定し、爆発の状況を調査します。
職掌は以下の通りです。
- ガス関係事故の原因等の鑑識及び検査
- 火薬・爆発物の鑑識及び検査
- 上記に関する技術研究・開発
第一化学・化学第二係
微細証拠物件の鑑定を行っています。証拠なき犯罪の立証に貢献しています。
職掌は以下の通りです。
- 油類・有機溶剤(トルエン・シンナー等)の鑑定及び検査
- 土壌・金属・無機製品(ガラス・陶器等)の微少物の鑑定及び検査
- 塗料・繊維類・木質等の鑑定及び検査
- 他の科の分掌に属さない科学的鑑定及び検査
- 上記に関する技術研究・開発
第二化学
管理官(警視)が統括しています。
第二化学・化学第三係
職掌は以下の通りです。
- 麻薬・覚醒剤・大麻その他乱用薬物の鑑定及び検査
- 上記に関する技術研究・開発
第二化学・化学第四係
毒物や劇薬物の中毒事件、傷害・殺害事件における原因究明や犯罪行為の立証のために、化学物質の特定をしています。
- 人体に吸収された物質の検査
- アルコール・覚醒剤・薬物・毒物・農薬・有毒ガスなど
- 血液や尿から検出します
職掌は以下の通りです。
- 酩酊度等の鑑定及び検査
- 公害に係る汚水・廃液等の鑑定及び検査
- 医薬品・化学薬品・農薬その他薬毒物の鑑定及び検査
- 上記に関する技術研究・開発
捜査支援分析センター
捜査支援分析センター(通称SSBC、Sousa Sien Bunseki Centerの略)は、電子機器の解析や捜査支援システムより得られた捜査情報の分析を行い捜査員の支援を行うとともに、捜査支援に必要な調査・研究開発を行うセクションです。警視庁では2009年4月に刑事部の付属機関として設立されました。
2019年では約120人体制の組織となっており、捜査一課/機動捜査隊等に在籍していた刑事出身者や、民間の特殊技術を買われて中途入庁した特別捜査官から構成されています。
捜査支援分析センターの組織構成は以下の通りです。
- 所長、副所長、分析官
- 第一捜査支援
- 支援管理係(庶務、捜査支援要請受付)
- システム第一係(システム運用・管理)
- システム第二係(指導教養)
- 開発係(捜査支援システムの調査・研究開発)
- 第二捜査支援
- 技術支援係(情報機器解析・鑑定及び画像処理・照合)
- 情報分析係(犯罪情報分析)
- 情報支援係(土地鑑資料)
- 機動分析第一係(現場における捜査支援)
- 機動分析第二係(現場における捜査支援)
- 分析捜査第一係(犯罪情報分析)
- 分析捜査第二係(犯罪情報分析)
- 第一捜査支援
分析捜査班はモバイルチームとも呼ばれており、各種事件の現場や事件発生の警察署に出動して犯罪関連情報の集約と多角的な分析を行い、被疑者検挙に結び付く情報を提供するそうです。
- 捜査支援分析センターが持つ技術/システム
- 撮り像
- 独自機材で様々な規格の映像を取り込み、その映像を被疑者等の画像と顔照合できるそうです
- カメラ設置場所データベース
- 都内のどの場所に防犯カメラがあるのかのデータベース
- 撮り像