[警察小説メモ] 事件:1984年・指定盗犯67号事件

ホールソー事件

神奈川県で発生した金庫破りの窃盗事件で、金庫が保管されている部屋への侵入にホールソーと呼ばれる工具を使ってドアを開けるという、それまで前例のない手口が使われた事件だった。

  • ホールソーとは電動ドリルの先端に円柱状の刃がついていて、鉄板や木材に最大10cm程度の穴を開ける工具
  • 正式にはホールソーだが、当時の捜査機関は「ホルソー事件」と呼んでいた

犯人の現場での行動は特殊で、1件ならまだしも複数件の犯行現場で指紋をベタベタと残しており、事務所の現場では自分の男性器をコピー機で複写して残したりしていた。

  • 複写された男性器は常人よりはるかに大きなものだった

捜査は難航した。現場に残された指紋から前歴者は見つからず、その手口から全国の警察に照会したところ「侵入にドリルを使う千葉の男」が被疑者として浮上し捜査したが指紋は一致せず、男の周辺からも被疑者は出なかった。

  • 捜査が手詰まりになり、サウナや銭湯で「大きな男性器を持つ男」を捜したこともあるらしい

スワッピングビデオ脅迫事件

横浜在住の著名人宅に「大事な物を預かっている、マスコミにバラされたくなければ1000万円を渡せ」という脅迫状が届いた。なかなか言わない脅迫のネタについて追及すると、それはその著名人も参加しているスワッピングのビデオだった。

  • スワッピングとは複数の夫婦やカップルがパートナーを交換して行う性行為のこと

そのビデオは金庫に保管していたものの金庫破りに遭って盗まれた物であり、既に捜査三課が捜査していたものだった。そこに脅迫があったため捜査一課も捜査に加わり、現金授受の現場で被疑者逮捕を目論んだものの現場に相手は現れず、捜査は手詰まりになった。

金庫破りが脅迫をしたことから、ビデオが暴力団に渡ったと考えた上層部は捜査四課に捜査を担当させた。最近金づるを掴んだヤクザがいないか捜査したものの被疑者は浮かばず、またもや捜査が手詰まりになる。

ピッキング事件

そのため事件は再び捜査三課に戻されたものの、ホールソーを使った手口の窃盗事件は鳴りを潜めていた。既に他の事件で逮捕されたのかと各警察署に照会したものの該当はなかった。

しかし県下ではピッキングを使う金庫破り事件が多発していた。現在では主に中国人窃盗団が使う手口だが当時では珍しいものだった。捜査三課の捜査員は、そのピッキング事件の現場での行動が、ホルソーのものと似ていることに気が付いた。指紋も一致し、途中で手口を変えるという異例な犯人であることも分かった。

しかし被疑者に繋がる手がかりがなく捜査がまた手詰まりになろうとした時、捜査員がスワッピングビデオ脅迫事件の脅迫状が手がかりになると気が付いた。

盗犯が盗品を売る質屋等では、初見の客に対して氏名・生年月日・住所等を初取カード(初めて取引する場合の台帳)に記載してもらっている。そこに書かれた文字と脅迫状の筆跡が一致するかもしれないと探し始めた。

地道な作業を続けると、ある捜査員が一致する筆跡の初取カードを発見した。科学捜査研究所に持ち込むと「一致の可能性は相当高い」という鑑定も出てようやく被疑者が特定され、逮捕となり、4年かかった捜査が終わりを迎えた。

  • 逮捕時に留置の手続きとして被疑者の身体検査が行われた時、捜査員が留置担当官に被疑者の男性器のサイズを測るよう依頼していた
    • そのサイズはホルソー事件で犯人がコピー機に残したものと同じく大きいものだった
  • 著名人のスワッピングビデオも発見された